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仮面ライダーV3

  • posted at:2006-09-09
  • written by:砂月(すなつき)
かめんらいだーぶいすりー
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1973年
公開日:1973年3月17日 併映:「飛び出す人造人間キカイダー」「パンダの大冒険」「マジンガーZ」「バビル2世」「ひみつのアッコちゃん」
監督:山田稔
企画:平山亨 阿部征司
原作:石森章太郎
脚本:伊上勝
音楽:菊池俊輔
主題歌:「斗え!仮面ライダーV3」宮内洋
・・・:「少年仮面ライダー隊の歌」水木一郎 コロムビアゆりかご会
撮影:川崎龍司
美術:八木功
照明:太田耕治
仕上製作:映広音響
録音:太田克己
編集:菅野順吉
選曲:武田正彦
助監督:長石多可男
進行主任:大里俊博
技斗:高橋一俊
製作担当:佐久間正光
衣裳:東京衣裳
トランポリン:三隅修
オートバイ協力:スズキ自動車
現像:東映化学
出演:宮内洋 藤岡弘 佐々木剛 小林昭二 小野ひずる
アメリカンビスタ カラー 24分

ある夜、人間が溶けるのを目撃した風見志郎は、それ以来命に関わる事件に巻き込まれるようになった。志郎に相談を持ちかけられた城南大学の先輩である本郷猛は、立花レーシングクラブの会長でオートバイレースのコーチでもある立花藤兵衛に会いに行った。そして志郎が密かに行われている何かを目撃したからではないかと話したが、藤兵衛はゲルショッカーは潰滅したのだからそんなはずはないと一笑に付した。その矢先にレースの練習をしていた志郎が謎の爆発に巻き込まれた。猛は藤兵衛からの連絡を受けた一文字隼人に志郎を任せると現場を調べに行った。墓地や教会のない殺風景な場所で黒装束の男たちが葬式を執り行っていた。男たちが去った後で猛が十字架に近づくと、そこには本郷猛の墓と書かれたプレートが掲げられていた。救急車が到着すると隼人は志郎を乗せたが、その後に別の救急車がやってきた。先に来た救急車が偽物だと気づいた猛と隼人はオートバイで後を追った。一方、車内では救急隊員が毒薬の入った注射器で志郎を殺そうとしたが、すでに意識を取り戻していた志郎が注射器を奪い取り命を狙う理由を白状しろ迫った。ところが救急隊員は何者かによって殺され蒸発した。

怪しげな団体が建物の中に入っていくのを目撃した珠純子は組織の戦闘員に追い掛けられた。助けを求めて走り続けた純子は、志郎にそのことを話すと安心したのか気を失った。困った志郎は彼女を自宅に連れて帰り、家族に看病を任せた。ところが一番安全だと思われていた実家にデストロンの怪人・ハサミジャガーが出現し、志郎が危険を感じて戻ったときにはすでに遅かった。戦闘員に抑えられて抵抗できない志郎は、父・達治や母・綾、妹の雪子を目の前で殺された。そして純子にも刃が迫ったとき、助けに入ったのは猛だった。彼は仮面ライダー1号に変身するとハサミジャガーに向かって行った。家族を一度に失った志郎は人間として生きることを捨て復讐の鬼になることを誓ったが、個人の復讐には力を貸せないと1号は言った。そして2号は、人間でありながら人間でない苦しみは私たち二人だけで十分だと言った。

純子から建物の場所を聞いた二人の仮面ライダーは中に入って行ったが、基地は罠だった。ライダーたちはデストロン科学陣が開発した改造人間分解光線を浴びて身動きが取れなくなっていたが、後をつけてきた志郎が身代わりになったことで体の自由を取り戻し装置を破壊した。死を覚悟して瀕死の重傷を負った志郎を助けるために1号たちは基地の機器を使って改造手術をする決断をした。手術が終わりに近づいたとき、基地は爆発を起こし木端微塵に吹き飛んだ。それはもう一人の怪人・カメバズーカによる攻撃だった。ライダーは死んだと喜ぶカメバズーカの前に現れたのは、1号と2号、そして赤いマスクの仮面ライダーだった。

藤兵衛は少年仮面ライダー隊の会長でもあった。少年仮面ライダー隊とは全国に散らばる子供の隊員で編制された組織で、ショッカーに関する情報をあらゆる手段で本部に通報することで間接的に仮面ライダーに伝えられるシステムになっていた。現在はゲルショッカーが潰滅したことで機能を停止していたが、復活することを恐れたデストロンは藤兵衛を抹殺することにしたのだ。藤兵衛の死は組織を機能不全に追い込むだけでなく、彼を親のように慕う仮面ライダーたちに精神的なダメージを与えることは間違いなかった。事務所に現れたハサミジャガーは、二人の仮面ライダーがカメバズーカの攻撃で死んだことを伝えたが、藤兵衛は必ず助けに来ると信じていた。観念しろとハサミジャガーが右手の刃を振り上げたとき、そこに現れたのはあの三人目の仮面ライダーだった。彼は仮面ライダーV3と名乗った。

屋台的映画館
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看護女子寮 いじわるな指

  • posted at:2006-09-03
  • written by:砂月(すなつき)
かんごじょしりょういじわるなゆび
にっかつ
配給:にっかつ
製作年:1985年
公開日:1985年2月2日 併映「団地妻 肉体地獄」「SEXドキュメント 泣かせ上手」
監督:川崎善弘
企画:小松裕二
脚本:吉本昌弘
撮影:鈴木耕一
照明:高柳清一
録音:細井正次
美術:斎藤岩男
編集:奥原茂
選曲:伊藤晴康
助監督:瀬川正仁
色彩計測:青柳勝義
現像:東洋現像所
制作担当:高橋伸行
制作協力:フイルムシティ
出演:泉じゅん 北原ちあき 竹下ゆかり 皆川衆 伊吹礼一
アメリカンビスタ カラー 62分

「伝説の由紀」こと井上由紀が帰ってくる。その噂は忽ち聖エリザベス病院の看護女子寮中に拡がった。このことに一番敏感に反応したのは現寮長の河本芳江だった。由紀は想像以上の酒乱で、警察沙汰は数知れず寮長の首はいくつも飛んだと言われていた。そんな彼女が離婚を機に女子寮へ戻ってくるという。由紀のために部屋を引っ越さなければならなくなった松尾真弓は、何故そんな人のために明け渡さなけれなならないのかとブツクサ言った。芳江は真弓と引っ越しを手伝う同僚の遠藤典子に、間違ってもアルコール類を置かないようにと念を押した。真弓たちはどんなすごい人が来るんだろうと不安半分、期待半分で待っていたが、あいさつに訪れたのが至って普通の女性だったことで拍子抜けした。だが芳江は警戒を強め、愛犬のブルドッグに夜回りをさせることにした。

その日の夜、寮長室に一本の電話が掛かった。電話の主は由紀と縒りを戻したい元亭主の三原忠夫からだったが、取り次ぎは11時までだと芳江は相手にしなかった。その頃、寮の外では真弓の恋人の鈴木誠が彼女を呼び出そうと小石を窓に投げつけていた。その音に気付いた隣室の由紀は、カーテンを開けてそのことを知ると縄梯子を持って真弓の部屋に上がり込み誠を招き入れた。そしてこれくらい用意しておくのが寮で生活する上での常識でしょと言うと、真弓とシーツで縄梯子を作っていた典子は彼女を尊敬に眼差しで見た。由紀は二人だけにしましょうと言って部屋を出ると典子の部屋に行った。そこには大きなクマのぬいぐるみがあり、やっくんと名付けるほどかわいがっていた。やっくんを受け取った由紀は背中に硬いものがあることに気付くとジッパーを中から取り出した。それは球磨焼酎のボトルだった。目の色が変わった彼女は早速グラスに注いでグイッとあおると典子にも勧めた。そこに隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきたものだから、二人は意気投合し体を重ねた。その頃、縄梯子を伝ってベランダの忍び込んだのは由紀の姿を求めていた忠夫だった。部屋の中を覗き込むと真弓と誠が真っ最中。その隣の部屋では由紀が典子と裸でいたものだから、驚いた忠夫は足を滑らせて地面に叩きつけられた。翌朝、真弓が目覚めると空が既に明るくなっており、驚いた彼女は誠を叩き起こすと早く帰るようにと促した。口うるさい寮長に見つかると大変なことになるからだ。だが縄梯子を降りようとする誠の足元では芳江がブルドッグとともに待ち構えていた。縄梯子が由紀のアイデアであることがわかると芳江は3人を呼び出し、地獄のランニングを命じた。

屋台的映画館

ガメラ対宇宙怪獣バイラス

  • posted at:2006-08-28
  • written by:砂月(すなつき)
がめらたいばいらす
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1968年
公開日:1968年3月20日 併映「妖怪百物語」
監督:湯浅憲明
製作:永田秀雅
脚本:高橋二三
企画:藤田昌一 仲野和正
撮影:喜多崎晃
特殊撮影:藤井和文
音楽:広瀬健次郎
主題歌:「ガメラ マーチ」大映児童合唱団
・・・:「ぼくらのガメラ」大映児童合唱団
美術:矢野友久
録音:飛田喜美雄
照明:上原正一
編集:関口章治
特撮合成:金子友三
照明:石坂守
操演:関谷治雄
音響効果:小倉信義
助監督:今子正義
製作主任:川村清
協力:ボーイスカウト日本連盟
現像:東京現像所
出演:本郷功次郎 高塚徹 カール・クレイグ・ジュニア 八重垣路子 渥美マリ
シネマスコープ カラー 72分

宇宙空間を飛行する物体が急速に地球に接近していた。その五つの球が円状に連なった形の宇宙船は、人工頭脳によって制御されていた。宇宙船の主=バイラス星人の目的は、地球を占領し植民地にすることだった。ところが、占領を容易く考えていた彼らの前に予想外の壁が立ち塞がった。ジェット噴射で飛行する生物が現れたのだ。危険を察知したガメラは、攻撃を受けながらも宇宙船へ向かって行った。ガメラに破壊された宇宙船は、仲間に支援を要請すると宇宙に散った。

その頃、茅ヶ崎海岸では日本とアメリカのボーイスカウトによるキャンプが行われていた。隊員たちはキャンプ地を所有している国際海洋研究所を訪問して小型潜水艇を見学することになっていた。この潜水艇は子供でも操縦できるように簡素に設計されていた。先ず隊員たちの手本として、研究所所長・ドビー博士とボーイスカウト隊長・島田伸彦が潜水艇に乗り組むことになった。ところが潜水艇は操縦士の操作どおりに動かなかった。前進の操作をすると後退、後退すると前進してしまい、操縦するドビー博士はパニックに陥ってしまった。これは隊員の中谷正夫とジム・モーガンによるいたずらだった。二人は研究所に先回りして潜水艇に細工をしていたのだ。フラフラで戻ってきた島田隊長は訓練の中止を言い渡した。そんな状況の中、黙っていられないのが正夫とジムだった。自分たちならうまくやれると言い出したのだ。正夫は機械いじりが得意で、製品化された腕時計型通信機のアイデアを提供したのも彼だった。島田隊長の推薦もあり、ドビー博士は二人に乗艇の許可を出した。潜水艇で遊覧を楽しんでいた正夫とジムは、ガメラに遭遇した。ガメラは子供たちが乗った潜水艇に気付くと競争しながら楽しげに泳いでいた。

救難信号を受信した宇宙船2号機は地球に急接近していた。ガメラが地球に生息する限り占領は不可能だと考えたバイラス星人は、地球攻撃の第一目標をガメラ討伐に切り替えた。海底を探査しガメラを発見した宇宙船は、直ちに攻撃を開始した。スーパーキャッチ光線に照射されたガメラは、潜水艇とともにオレンジ色のドームに閉じ込められてしまった。ドームは強力なエネルギーで形成されていたため、ガメラの力を以ってしても打ち破ることはできなかった。潜水艇に残された時間は45分。艇内の酸素量は徐々に少なくなっていった。

屋台的映画館

からっ風野郎

  • posted at:2006-08-13
  • written by:砂月(すなつき)
からっかぜやろう
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1960年
公開日:1960年3月23日 併映「東京の女性」
監督:増村保造
製作:永田雅一
企画:藤井浩明 榎本昌治
脚本:菊島隆三 安藤日出男
撮影:村井博
音楽:塚原晢夫
主題歌:「からっ風野郎」三島由紀夫
美術:渡辺竹三郎
録音:渡辺利一
照明:米山勇
色彩設計:西田充
編集:中静達治
助監督:石田潔
装置:岡田角太郎
現像:東京現像所
製作主任:大橋俊雄
出演:三島由紀夫 若尾文子 川崎敬三 船越英二 志村喬
シネマスコープ カラー 96分

東京刑務所では百十一番こと朝比奈一家二代目・朝比奈武夫の出所を祝うバレーボール大会が行われていたが、試合は白熱し彼は面会人どころではなかった。そこで百十二番が代理として会うことになった。半田三郎は面会室に入ってきた男を名札で百十一番の朝比奈だと確認すると拳銃をぶっ放した。彼は訳あって武夫を消しに来たのだが、人違いだと知ると顔が青ざめた。百十二番は脱いだ作業服を着るときに武夫のものと間違えたのだ。一方、娑婆に出れば相良組に命を狙われるに違いないと考えていた武夫は、所長に様子を見るために二、三日置いてくれとせがんだが、ここは囚人を服役させるところで保護するところではないときっぱり断わられた。そこで彼は相良組の目を眩ますために今夜だけ撃たれたことにして欲しいと頼んだ。自分のシマへ逃げ込むまでの時間稼ぎをするつもりだった。あまりの弱腰っぷりにあきれた所長は、これ以上仏が増えたら寝覚めが悪いと言って武夫に護衛をつけることにした。

午後七時前、叔父の平山吾平と弟分の愛川進が乗った車は刑務所の前で停まった。その様子を暗闇から窺っていたのは相良商事の社員たちだった。綿貫は所内から響いた二発の銃声を聞いていたが、社長の相良雄作は朝比奈を確実に仕留めたことがわかるまで信用しようとしなかった。第一、平山たちは刑務所に向かったのだ。しかし遺体を引き取るということも考えられた。そこで綿貫たちは武夫と二人を見張ることになったのだが、いくら待っても中からそれらしき人物は出て来なかった。所員が運転するジープは堂々と正門から出て行ったが、それに乗った武夫は相良組だけでなく平山たちまでも欺いた。武夫は父の復讐のために相良を襲い、刑務所にぶち込まれた。相良は右足を刺され重傷を負ったが、いつかまた何か仕出かすのではないかと恐れていたのだ。過去の経験から武夫が真っ先に女のところへ行くと考えた相良は、赤間に女を見張るように言った。赤間たちはナイトクラブで歌う香取昌子の楽屋に居座り武夫からの電話を待っていたが、彼はそれを承知で電話を掛け、居場所まで教えた。武夫は映画館コンパルの二階を根城にしていた。久しぶりにそこで会った二人だったが、武夫は突然別れを切り出した。相良組が武夫をおびき出すために彼女を出しに使うことは目に見えていた。彼女との別れは抗争に巻き込まないためのささやかな配慮だった。

昌子を出しに使うことは無駄だと考えていた相良に、赤間は次の手を打ってあることを明かした。網走刑務所で知り合った殺し屋を呼んだというのだ。この界隈では誰も顔を知らないというのが強みだった。ふてぶてしい政という男はハジキの腕は天下一品だったが、喘息持ちだった。

屋台的映画館

かあちゃん

  • posted at:2006-06-07
  • written by:砂月(すなつき)
かあちゃん
「かあちゃん」製作委員会(映像京都=日活=IMAGICA=シナノ企画)
配給:東宝
製作年:2001年
公開日:2001年11月10日
監督:市川崑
製作:西岡善信 中村雅哉 長瀬文男 松村和明
プロデューサー:西村維樹 猿川直人 鶴間和夫 野口正敏
原作:山本周五郎
脚本:和田夏十 竹山洋
撮影:五十畑幸勇
音楽:宇崎竜童
編曲:中村哲
美術:西岡善信
照明:下村一夫 古川昌輝
録音:斉藤禎一
調音:大橋鉄矢
編集:長田千鶴子
監督補:小笠原佳文
製作担当:丹羽邦夫
色彩設計:谷川創平
時代考証:大石学
タイトル画:和田誠
出演:岸惠子 原田龍二 うじきつよし 勝野雅奈恵 山崎裕太
アメリカンビスタ カラー 96分

天保末期。老中・水野忠邦による改革の効果はなく、江戸下層階級の窮乏はさらに激化していた。そんな世の犠牲者である勇吉は熊五郎の家に盗みに入ったが、その家には盗むものが何一つなかった。勇吉は何やらぶつぶつと呟いていたが、主人が帰ってきたため床下へ逃げ込んだ。熊五郎は床板についた大きな足跡を見て泥棒が入ったと見当がついたが、何も盗る物がないんで哀れんだ鼠小僧が小判の一枚でも置いて行ったんじゃないかと辺りを見回した。だが何もなかった。間抜けな泥棒めと毒突いたが、いいことを思いついたとポンと手を叩いた。たな賃を集めに来た大家を誇らしげに迎えた熊五郎は、泥棒が入ったから待って欲しいと言った。たな賃どころではなかろうと心配した大家が盗られた物を品書きにして番所へ届けなくちゃならないと言うと、熊五郎の顔が青ざめた。熊五郎は届けなくてもいいと断わり続けたが、盗品が一品でも自分のものになるかも知れないとわかると一転了承した。大家が何を盗られたのかと聞くと、熊五郎は何が良うございましょうと言った。

勇吉は、二年越しでたんまりと金を貯め込み、十四日と三十日になると決まって金勘定をする家があるという噂話を飲み屋で耳にした。今日はその三十日。その晩、勇吉はおかつの家に忍び込んだ。そっと戸を開けると、誰もいないはずの部屋に気配を察したおかつが立っていた。おかつは、金を出せと凄む勇吉に、まだ若いのにどうして泥棒なんかするんだいと聞いた。すると勇吉は、働くにも仕事がないし親兄弟もない。食うことが出来ないからだと言った。おかつは、なんて世の中なんだろうと嘆いた。そして押入れから銭の詰まった木箱を取り出し、「どうしても欲しいというんならあげてもいいよ。けれどその前にこれがどんな金かってことを話すから聞いておくれ。」と勇吉に経緯を話し始めた。

三年前、おかつの長男・市太の大工仲間である源さんは、生活に困ったあげく仕事場の金を盗んで牢に入れられた。罪びとになると元の大工には戻れないことから、おかつは源さんが牢から出てきた時のために荒物屋の仕事をこしらえてやろうと家族に提案をした。新しい仕事をするためには元手が必要となるが、それを皆で稼ごうというのだ。五人の子供たちは賛成した。それからは食べる物や着る物、小遣いそして長屋の付き合いまで切り詰めて、けちんぼ一家と罵られながらも我慢した。そうやって三年掛かって元手ができた。これは明日、牢から出てくる源さんのための金だった。

おかつは、今の話を聞いても持って行くと言うなら持っておいでと木箱を差し出したが、勇吉は何も盗らずに出て行こうとした。帰るところがあるのかいと呼び止めたおかつは、当てもないのに出て行ってどうするのさと座らせ残り物のうどんをよそって食べさせた。おかつは私の言うとおりにしてるんだよと勇吉に言った。その日から勇吉は家族の一人として一緒に暮らすことになった。

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