おはかがない
光和インターナショナル=フジテレビジョン
配給:松竹
製作年:1998年
公開日:1998年2月7日
監督:原隆仁
企画・製作:鈴木光
製作:久板順一朗 関一由
プロデューサー:山本勉 三沢和子 山形淳二
脚本:大森寿美男
音楽:大島ミチル
音楽プロデューサー:裕木陽 伊藤圭一
主題歌:「この素晴らしき世界 ”WHAT A WONDERFUL WORLD”」小比類巻かほる
撮影:前田米造
照明:加藤松作
美術:和田洋 沖山真保
録音:橋本文雄
編集:川島章正
スクリプター:森永恭子
キャスティング:名須川伸吾
助監督:杉山泰一
製作担当:原田文宏
スクリプトボード:川越淳
出演:岩下志麻 安達祐実 袴田吉彦 金田明夫 田口トモロヲ
アメリカンビスタ カラー 112分
映画「宣告」の製作発表記者会見が行われ、ガンの娘を持つ母親役に抜擢されたベテラン女優・桜咲節子は、役作りのために病院での取材を重ね、その一環として自ら健康診断を行ったことを公表した。彼女には気掛かりのことがあった。大学病院で検査を受けた際、担当の医師から貧血の疑いがあると言われたからだ。その医師はMRI検査を体験してみませんかと気軽に言ったが、検査入院が必要なことがわかると節子は思わず「私はガンね」と口走った。医師は笑いながら否定したが、大真面目な彼女は、私はあとどのくらい生きられますかと詰め寄った。困り果てた医師はただの貧血だと何度も説明したが、彼女はあと半年の命だと決め付けて診察室を後にした。
余命半年の娘役を演じる一風弓に自分の姿を重ねた節子の演技は、これまでの作品を凌駕していた。その日の撮影スケジュールが終了し、休息を取っていた節子は、マネージャーの松江敏子から翌日の撮影が休みであることを知らされた。自分に残された時間を有効に使いたいと思っていた節子は監督に文句を言いに行った。撮休にしたのは監督ではなく撮影所所長の命令だった。人の命をテーマにした映画を撮影しているのだから先祖の墓を粗末にするなという戒めを込めてスタッフ全員に盆休みを与えたのだ。彼女の耳にスタッフが話す言葉が飛び込んできた。「お墓のない人が死んだらどうするんでしょうねぇ」。
自宅に戻った節子は思い悩んでいた。これまでに築き上げたものは全て自分の力。もしそうであれば、最後まで自分でやるしかない、と。翌々日、節子は時間になっても撮影所に現れなかった。敏子がいくら電話を掛けても通じず、スタッフも誰一人、居場所を把握していなかったのだ。撮影所はパニックになっていた。そんなみんなの心配をよそに、彼女は老婆に変装して郊外にある霊園に出掛けていた。前日、彼女は由緒ある寺で住職に自分が入る墓の相談をしたが、檀家としての継承者がいなければ受け入れられないと言われたからだった。霊園についての説明は聖香メモリアル社員・川嶋一平が行い、補足を上司の辻沼信一が受け持つことになっていた。そこで節子は「骨壷に入ってコンクリートの墓に入って、どうやって土に還るの?」とか「生前に墓を建てた人が長生きをすると言うが、それはガンにも有効なの?」など率直な疑問をぶつけて辻沼を困らせた。そして定期使用申込書に記入させ、入金がなくなると同時に追い出すという手口に不快感を示した節子が「あなたはこんなお墓に入れますか?」と言うと辻沼は激怒した。そんなやりとりを見ていた川嶋は、誠意で墓を売ることは出来ないのだろうかと考えていた。
屋台的映画館
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