かいだんしんみみぶくろのぶひろさん
怪談新耳袋劇場版製作委員会(ビーエス・アイ=キングレコード)
配給:パンドラ
製作年:2006年
公開日:2006年7月22日
監督:豊島圭介
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ 山口幸彦
ラインプロデューサー:鈴木浩介
原作:木原浩勝 中山市朗
脚本:加藤淳也
撮影:金谷宏二
音楽:遠藤浩二
主題歌:「HORIZON」諫山実生
カラリスト:宇津野裕行
美術:橋本優
録音:滝澤修
照明:田村文彦
編集:木村悦子
造型:西村喜廣
助監督:荒川栄二
ポスプロマネージャー:宮田三清
製作担当:本間隆廣
製作協力:HONEY BUNNY Inc.
出演:内山理名 平田満 高橋和也 田島令子 岩本千波
アメリカンビスタ カラー 89分
デザイン総合・T&K工房に勤めるシングルマザーの里中悦子は、洋画家・島崎信弘の洒落た一軒家を訪問した。依頼した油絵を受け取り、それを先方へ送ることになっていたのだが、信弘はまだ出来ていないから今すぐ描くと言った。そして「先生って柄じゃないから、ノブヒロって呼んで」と付け加えた。悦子は戸惑いの表情を見せた。作品を仕上げ悦子に渡したノブヒロは、彼女に男と女の絶対的な愛はあるのかと聞いた。そして死へ向かう追い詰められた男女の心情を、持論を交えて展開した。悦子はその意見に対する自分なりの考えを言葉で表したが、ノブヒロはそんな彼女に絵のモデルにならないかと誘った。仕事の便宜上、渋々ながらもモデルを引き受けた悦子にノブヒロは様々な注文を付けた。慣れないモデルに苦闘する彼女の表情を見た悦子をノブヒロは、彼女を「エッちゃん」と呼んでリラックスさせることにした。仕事との両立で多忙な毎日を送る悦子だったが、次第にアトリエが安らぎの場所へと変わって行った。二人は価値観や悩みを本音で打ち明けるうちにお互いの考えを共有するようになっていったが、ノブヒロは未完成の絵を悦子に決して見せようとはしなかった。
アトリエに置かれた一枚の絵が悦子の目に留まった。ノブヒロはその絵のモデルである曽祖父の話を始めた。男には家庭があったが旧家の娘と恋に落ち、それを知った周囲人たちは反対して二人の仲を裂こうとした。反発した二人は手を取り合い崖から身を投げたが、娘は海へ転落し男は木の枝に引っかかってしまった。不自然に体が捻じ曲がった男はそこで息を引き取ったが、手は娘を求めるように海面へ伸びていた。ノブヒロはその男の想いを遂げさせたいと考えていた。
二人の仲が深まり、悦子はノブヒロを一人娘の彩香に会わせたが、何故か彼が近づくとひどく怯えた。その夜、寝室の彩香は悦子に言った。「彩香ね、あの人、怖い」。悦子の母・和歌子は悦子のことをとても心配していた。結婚のときも離婚のときも一人で勝手に決め、今度の交際相手についても何の相談も無かったからだ。それに彩香のことも気にしていた。翌日、悦子は母親のことをノブヒロに話したが、彼の様子がいつもと違っていた。ノブヒロは、悦子と会えて本当によかった、こんなに充実した日々は無かったと感謝の言葉を並べた。そして自分はもうすぐ死ぬかもしれないが、死ぬことはちっとも怖くないと言った。突然の意味深長な告白に悦子は驚きを隠せなかったが、帰り際に思い切ってその言葉の意味を聞いてみた。するとノブヒロは、予定の日でないにも関わらず翌日も来て欲しいと懇願した。悦子は、いつもよりも遅くなるかもしれないが必ず来ると約束した。
約束の日、彩香が高熱を出し悦子は会社を早退すると付きっ切りで看病した。その夜、玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けた悦子は廊下に血が点々と落ちていることに気付いた。彼女がその跡を追って行った先にノブヒロが立っていた。悦子は無言のノブヒロに謝り続けた。翌日、二人の刑事が悦子を訪ねて会社にやってきた。ノブヒロが自宅の階段から転落して死んだというのだ。死亡推定時刻は午後9時頃だったが、悦子はそれを聞いて驚いた。その時間はノブヒロと会っていたのだから。
屋台的映画館
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