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犬神の悪霊

  • posted at:2014-05-05
  • written by:砂月(すなつき)
いぬがみのたたり
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年6月18日 併映「新女囚さそり 特殊房X」
監督:伊藤俊也
企画:天尾完次 安斉昭夫
脚本:伊藤俊也
撮影:仲沢半次郎
録音:小松忠之
照明:小林芳雄
美術:桑名忠之
音楽:菊池俊輔
編集:戸田健夫
助監督:馬場昭格
記録:山内康代
擬斗:日尾孝司
スチール:遠藤努
進行主任:松本可則
装置:井保国夫
装飾:米沢一弘
美粧:入江荘二
美容:石川靖江
衣裳:河合啓一
演技事務:石川通生
現像:東映化学
協力:室生赤目青山国定公園 青蓮寺レークホテル 三重県名張市 北品川総合病院
人形:吉徳大光
舞踏協力:田中泯 村上クラーク 八桑みどり 土屋大陸 前田正徳 徳田ガン 辻征宣 中岡一貴 鴨川てんし 赤穂善計
舞踏製作:早川洋子
出演:大和田伸也 山内恵美子 長谷川真砂美 泉じゅん 三谷昇
シネマスコープ カラー 103分

人里離れた久賀村。そこには大量のウラン鉱床が眠っていると噂されていた。その噂を立証するために、東日開発のウラン技師・加納竜次は仲間の安井と西岡とともに村へ入った。剣持剛造が所有する山の奥に進むにつれて計測器の針が跳ね上がったため、三人は宝物が埋まっている確証を得た。そのとき、西岡がジープの運転を誤って道路脇にある小さな祠を壊してしまった。何事もなかったかのように立ち去ろうとしたジープの前に犬が立ち塞がり咆え続けたが、西岡はどうせ逃げるだろうと考えてスピードを緩めなかった。犬の体は宙に舞った。

半年後の晩秋、加納は剛造の娘・麗子と村の神社で挙式した。三三九度の儀式で加納が杯を口に運ぼうとしたとき、少年が投げた石によって妨害された。少年は垂水勇という小学生で、西岡が撥ね殺した犬の飼い主だった。事件を知った姉のかおりは彼を激しく叱責したが、事情がわかると私もついていくから麗子に謝って欲しいと諭した。犬神憑きの家系として忌み嫌われている垂水家だったが、幼なじみの麗子だけはそんなことはお構いなしに仲良くした。だが同じ人を好きになってしまったため、麗子からの招待を受けたが断わったのだった。麗子と加納が東京へ出発する日、かおりは二人が乗る車を見送りに来たが、剛造はアクセルを踏む足を緩めようとはしなかった。

東京で行われた披露宴には、ウランが取り持つ縁で繋がった人々が出席した。西岡がスピーチをする番となり、あの日に起きたことを話し始めた。計測器の値が大きくなって大喜びしたこと。すぐに麓へ降りて本社に連絡をしたこと。そして、他に何かがあったことをぶつぶつ呟きだすと顔色が変わり、怯えて震えだした。その後、彼はビルの屋上から飛び降りて死んだ。西岡の通夜が行われた夜、今度は安井が野犬の群れに襲われて死んだ。麗子はきっと久賀村で何かあったに違いないと考え問い詰めると、加納をようやく重い口を開いた。話の一部始終を聞いた麗子は、原因が犬神のたたりだと感づいた。その夜、悪夢にうなされる夫の首に代々伝わるお守りを掛けると、かおりから届いた手紙に釘を打ち込んで私の大事な人には手を出させるものかと誓った。すると今度はかおりの様子がおかしくなり、心配になった加納は医学の力の信じて病院を転々とした。だが専門の医師でも彼女の病状を把握することが出来なかった。

翌年の春、加納は麗子を連れて久賀村の祈祷師を訪ねた。だが犬神の恨みは深く、彼女の体から離れようとはしなかった。東京へ帰りたいという願いも空しく、麗子は加納の腕の中で息を引き取った。疲れ果てた加納が山中をさまよっていると、小さな祠が目に止まった。それはあの祠と同じ場所に新たに設置されたものだった。加納は近くに落ちていた太い木の枝をを手に取ると思い切り振り下ろした。

屋台的映画館
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ひみつけっしゃたかのつめざむーびーつーわたしをあいしたくろうーろんちゃ
「秘密結社鷹の爪 THE MOVIEⅡ 製作委員会」(DLE=テレビ朝日=電通=東宝=MBS=ソニー・ミュージックエンタテイメント=メーテレ)
配給:DLE
配給協力:東宝
製作年:2008年
公開日:2008年5月24日 併映「古墳ギャルのコフィー 12人と怒れる古墳たち」
監督:FROGMAN
製作:椎木隆太 亀山慶二 島本雄二 藤原正道 當間佳成 北川直樹 吉田鏡
企画:梅澤道彦 服部洋 大田圭二 井口真一
ゼネラル・プロデューサー:戸田和宏
プロデューサー:岡村和佳菜 西口なおみ 亀田卓 古澤佳寛 芝野昌之 杉山剛 金森和生
脚本:FROGMAN
キャラクターデザイン:FROGMAN
録音:FROGMAN
FLASH:FROGMAN
編集:FROGMAN
鷹の爪団FLASH部隊 隊長:山脇光太郎
鷹の爪団FLASH部隊:ナカムラヒデタカ 堤心平 首藤順 友川絵美子
鷹の爪団音楽隊 主任:原田扶美子
鷹の爪団録音研究所 所長:はたしょうじ
鷹の爪団録音研究所 副所長:浦畑将
鷹の爪団録音研究所 磁気所員:藤林繁
鷹の爪団録音研究所 光学所員:利澤彰
鷹の爪団3D班:ヨモギダ
鷹の爪団ビジュアル・エフェクト班:saihate
クリエイティブ・アドバイザー:谷東
DTSデジタルマスタリング:宇田川浩一 相川敦
製作アシスタント:須藤雄毅 梅津康宏
製作プロデューサー:岡島隆敏
製作協力:リアランド サウンドチーム・ドンファン サウンドガーデン アオイスタジオ OPERA HOUSE アドビシステムズ株式会社
現像:東京現像所
製作スタジオ:蛙男商会/DLE
主題歌:「Goodbye Mr.A」the HOOSiERS
音楽:manzo
特別効果音:滝口順平 野沢雅子 銀河万丈
声の出演:オタマジャクシ 亜沙 FROGMAN
ワイド カラー 90分

秘密結社鷹の爪総統がレオナルド博士に頼んでおいた万能スーパー戦闘ロボがついに完成した。100円ショップの材料で宇宙船を作ることが出来る天才マッドサイエンティストの博士にとって、ロボの製作など朝飯前だった。彼の自信作である全長3メートル、体重1トンのロボは、新幹線よりも速く走り、ジェット機よりも速く飛び、葬儀屋よりも丁寧という優れもので、総統はついに世界を服従させるときがやってきたと物思いに耽っていた。その矢先に現れたのは、宿敵・デラックスファイターだった。あれやこれやと時間を稼いでいる間に起動したロボは、デラックスファイターの前に立ち塞がると第一声を発した。「いらっしゃいませ」。総統が万能スーパー戦闘ロボと言ったのを、戦闘主任の吉田くんが博士に万能スーパー銭湯ロボと間違えて伝えてしまったのだ。二人が言い争いをしているうちに、必殺技のデラックスボンバーが炸裂した。

デラックスファイターが社長を務めるデラックスカンパニーは、彼のグッズ販売で成り立っている。最近発売したDVDの売り上げが好調だったが、これも鷹の爪団があればこそであった。ある日、デラックスファイターが管理するブログが何者かに乗っ取られ、見に覚えのない日記が書き込まれた。その内容は、麹町の銀行に押し入って3億円を奪った強盗団を捕まえたが、2億円を出すから見逃してくれと言われてOKをした、というものだった。ブログには2千件を超える批判のコメントが殺到し、その話題が世界中に知れ渡ったことでDX社の株価は大暴落を起こした。総統たちはデラックスファイターが窮地に陥っていることをテレビのニュースで知った。どんな手段を使っても倒せなかったデラックスファイターがブログの書き込みひとつで取り返しのつかないことになったことから、吉田くんはインターネットの力を使えば世界征服を簡単に出来るのではないかと考えたのだった。それを聞いた総統は、博士にインターネットの中へ入ることが出来る機械を作ってもらうことにした。完成した博士の自信作は、見た目はパソコンそのものだが本体から伸びているジャックを鼻に差し込みスイッチを入れればいつでもネットの世界に入れるという代物だった。ネットを制する者が世界を制する。総統はそう呟くと早速テストを行った。

鷹の爪団が現れたのは、世界中に繋がるサイバースペースを視覚化したインターネットの空間だった。その世界では会社のデーターベースが建物として描かれ、インターネット利用者の分身として表示されるキャラクター「アバター」がそこら中を歩き回っていた。ネットの世界で大暴れし今度こそ世界を征服してやるのじゃ~と総統が唾を飛ばしながら力説していた頃、現実世界では黒服の男がDX社を訪れていた。その男はMr.Aコーポレーションの社員で、DX社の株を80パーセント買い占めたことで経営権はこちらにあるのだからおとなしく手を引けとデラックスファイターに迫ったのだ。狼狽する彼はデラックスボンバーで追い返そうとしたが、その様子がマスコミにスクープされたことで名誉は完全に失墜。デラックスファイターは人々の前からひっそりと姿を消した。一方、ネット世界を満喫している総統たちの前に突如巨大な鳥が舞い降りた。それはMr.Aが開発したプログラム「ハゲタカ」で、フェンダーミラー将軍を倒した鷹の爪団を危険と判断すると攻撃を始めた。

屋台的映画館

十代 恵子の場合

  • posted at:2014-04-18
  • written by:砂月(すなつき)
じゅうだいけいこのばあい
東映セントラルフィルム
配給:東映
製作年:1979年
公開日:1979年2月24日 併映「喧嘩道」
監督:内藤誠
企画:黒澤満 向江寛城
脚本:内藤誠
撮影:鈴木史郎
照明:斉藤正治
音楽:杉田一夫
録音:宗方弘好
編集:田中修
助監督:大野裕司
記録:作間清子
美粧:小堺なな
擬斗:田畑善彦
進行主任:佐野日出夫
監督助手:一之倉二郎 平川太郎
撮影助手:上田孝 須賀隆
照明助手:水本俊一郎 野元敏郎
進行:西田洋介
現像:東映化学
協力:東映俳優センター
出演:森下愛子 風間杜夫 深見博 土門俊 水野哲
アメリカンビスタ カラー 80分

17歳の高野恵子は聖美学園女子高校の二年生。大学入試まで後400日余となった12月、彼女の心に波紋が生じていた。家庭では父母が何かにつけ口論し、恵子の部屋にまで怒鳴り声が届いた。それが影響してか、勉強は計画的に行っているものの成績が思うように上がらなかった。高望みをせずに文科系の女子大一本に絞ってみてはと担任に言われショックを受けた恵子は、いつものところではなく遠くの図書館に行ってみることにした。近くだと友達がいて勉強がはかどらないからだ。だがなんとなく雰囲気に馴染めなかった。集中出来ずによそ見をしているうちに目配せする男女が気になり、二人についてロビーに出た。男がナンパに成功し、二人で楽しそうに帰っていく姿を見た恵子は、自分にも誰かが声を掛けてくれるのではないかと期待して椅子に座っていた。だが近寄ってきた気配がすると怖くなって逃げた。そんな彼女を追い掛けてきたのは、ゴロウという高校生だった。暇だったら俺たちの溜まり場へきなよと言われ、特に断わる理由のなかった恵子はスナック・ジャンゴに入った。そこにいたゴロウの友達だというノンコ、ミチャコ、オリエの三人も女子高生で、彼女たちの話に耳を傾けているうちに、近々パーティーが行われることを知った。ゴロウはどうなっても知らないぞと止めたが、チケット販売を担当するバーテンダーの伸夫のことが気になった恵子はパーティー券を一枚引き受けることにした。だがチケットを預かったものの彼女の小遣いでは足りなかった。そこで隣町にある古本屋で部屋の本を処分することにした。店員の杉山次郎は恵子に一目惚れし、学生証を提示する規則に目をつぶって査定を行った。本の買取代金は2500円だったが、恵子が3000円必要であることがわかると足りない分を自分のポケットから出して渡した。

パーティー当日、恵子はジャンゴに顔を出したが、今までに経験したことがない雰囲気に身を堅くしていた。店内には大音量の音楽が流れ、客たちは皆狂ったように踊っていた。伸夫は恵子の様子に気づくと、グラスを一気に飲み干すように言った。そこに声を掛けてきたのはトミーというヤクザ者で、彼のいうとおりに踊るうちに恵子の心は少し打ち解けた。やがて店内が暗くなるとそこら中にセックスやドラッグに耽る者が現れた。酔いが回って恵子が寝込むと、頃合いを計って近づいてきたトミーと伸夫が彼女を犯そうとしたが、カウンターで飲んでいた鉄が見兼ねて止めに入った。トミーの兄貴分である鉄は、あいつらは酔っていたし悪気があったわけじゃないから勘弁してくれと言った。翌日、古本屋を訪れた恵子だったが、店にはオヤジだけで次郎の姿が見当たらなかった。万引きされたり高い値段で買い過ぎたりしたので怒鳴りつけると、この仕事は俺に向いていないと言って出て行き、トラックの運転手になったというのだ。「500円、どうしよう」。恵子はつぶやいた。

屋台的映画館

君よ憤怒の河を渉れ

  • posted at:2014-04-11
  • written by:砂月(すなつき)
永田プロダクション=大映映画
配給:松竹
製作年:1976年
公開日:1976年2月11日
監督:佐藤純彌
製作:永田雅一
製作協力:徳間康快
企画:宮古とく子 並河敏
原作:西村寿行
脚本:田坂啓 佐藤純彌
撮影:小林節雄
音楽:青山八郎
録音:大橋鉄矢
照明:高橋彪夫
美術:今井高司
製作担当:高山篤
製作主任:桜井勉
助監督:葛井克亮
編集:諏訪三千男
記録:原益子
宣伝:荒木啓二郎
スチール:柳沢英雄
技斗:高瀬将敏
監督助手:出倉寿行
撮影助手:竹沢信行
照明助手:生井典克
録音助手:金子義夫
美術助手:丸山裕司
小道具:森田穣
装飾:隠田茂治
撮影効果:諸星勇
製作進行:片岡詔一郎
特殊撮影班監督:崎山周
特殊撮影班撮影:金子友三 東通弘
特殊撮影班照明:大原正男
航空撮影:山本駿
別班撮影:秋野友宏 山本修右
航空撮影協力:坪井一郎 臼井国夫 飯野太蔵
現像:東京現像所
録音:アオイスタジオ
衣裳:第一衣裳
結髪:山田かつら店
協力:トリオ株式会社 東京ヒルトンホテル 日本中央競馬会 オンワード牧場 本桐牧場 浦河町
サウンドトラック盤:キングレコード
出演:高倉健 中野良子 原田芳雄 倍賞美津子 池辺良
シネマスコープ カラー 151分

10月10日午後3時、東京・新宿。雑踏の中で男を指差した女が声を荒げてこう言った。「あの男が犯人よ!」。電話を掛けていた東京地方検察庁検事・杜丘冬人は、警官に囲まれ連行された。女は西大久保に住む水沢恵子といい、10月3日の午前2時頃に杜丘が自宅に侵入し、現金20万円とダイヤの指輪を盗まれた上に強姦されたというのだ。住所と姓名を聞き出そうとする警官に、本庁の矢村警部にしか話す気はないと杜丘は黙秘した。警視庁新宿署に身柄を移された杜丘は捜査一課の矢村から取り調べを受けたが、アリバイを証明することは出来なかった。その後、3日の午前1時頃に起きた窃盗事件の面通しが行われ、被害者の寺田俊明がこの男にカメラなどを盗まれたと証言したことで杜丘は拘留された。翌日、矢村とともに東京地検に顔を出した杜丘は、検事正・伊藤守に自分は無実だと訴えた。だが伊藤は、たとえ無実であっても現職の検事が強盗、強姦の容疑者として逮捕されたことを恥だと考えていた。マスコミが騒ぎ出すことを恐れた彼は、一日も早く無実であることを証明するために杜丘同行で家宅捜索を行うことにしたのだが、リビングからは寺田が盗まれたというカメラが、書斎の水槽からは恵子が盗まれたという指輪が、そして寝室からは現金20万円が見つかったのだ。何者かの罠だとわかっていてもそれを証明出来ない杜丘は、吐き気がすると言って監視付きで洗面所に行った。そして監視役の刑事が一瞬目を離した隙にドアを閉めると窓から逃走したのだった。この失態にマスコミは直ぐ様飛び付き、その日の各夕刊には「凶悪検事、逃亡す」の見出しが支配した。その夜、杜丘は警戒配備が敷かれる中、自分が強盗に入ったという西大久保のアパートの管理人室を訪ねた。管理人の古谷は驚きもせずに杜丘の顔をまじまじと眺めると、あの女よりあんたの方が信用出来そうな気がすると言って中に招き入れた。杜丘が訳を尋ねると、恵子は夫婦喧嘩をして別居したいからと10月1日に越してきたものの、騒動の翌日である今日(11日)、いきなり出て行ったからだと言うのだ。古谷は、まだ警察やマスコミにも言っていない情報を杜丘に教えた。

10月13日午前11時、杜丘は能登半島にある能登金剛生神(うるかみ)にいた。古谷が恵子に悪いと思って伏せていた情報とは、彼女が抱えていた小包に書かれた住所だった。港町を歩く杜丘の目に飛び込んできたのは、写真館の店先に飾られた恵子の花嫁写真だった。店主の話でその花嫁が横路加代という名前で、昨日バス停で見かけたということを知った杜丘は加代の家を訪ねたが、彼女はすでに何者かに絞殺されていた。何か手掛かりはないかと目で探っていると、近くにあった小物入れの中から顔を出した婚礼写真が気になった。ページを開いてみると、加代の隣にいるのはカメラを盗まれたと証言した寺田だった。10月15日午前11時、杜丘は北海道日高を走る列車の中だった。寺田は本名を横路敬二といい、様似に実家があることを突き止めたのだ。乗り継ぎのバスを降りた杜丘は地元の人に教えてもらって横路邸を目指したが、既に警察が先回りをして張り込んでいた。

屋台的映画館

ドレミファ娘の血は騒ぐ

  • posted at:2014-03-24
  • written by:砂月(すなつき)
EPIC・ソニー=ディレクターズ・カンパニー
配給:ディレクターズ・カンパニー
製作年:1985年
公開日:1985年11月3日
監督:黒沢清
企画:丸山茂雄 宮坂進
プロデューサー:山本文夫
配給・宣伝・プロデューサー:荒井勝則
脚本:黒沢清 万田邦敏
撮影:瓜生敏彦
照明:片山竹雄
美術:星埜恵子
録音:銀座サウンド
特殊美術:昼間行雄
編集:菊池純一
音楽:東京タワーズ 沢口晴美
記録:高山秀子
メイク:浜田芳恵 志川あずさ
助監督:万田邦敏
製作担当:荒井勝則
監督助手:岡田周一 佐々木浩久 鎮西尚一
撮影助手:岡本順孝 佐竹力也
照明助手:及川一郎 矢木宏
美術助手:塩田明彦 暉峻創三
特殊機材:河村豊
スチール:野上哲夫
タイトル:ハセガワプロ
製作進行:庄司真由美 植野亮 寺野伊佐雄
製作デスク:山川とも子
宣伝:勝野宏
現像:東洋現像所
協力:多摩芸術大学 ぴあ 位相機械ユニット キー・グリップ 光映新社 東洋照明 日本照明 ペーパーメイル 三穂電機
出演:洞口依子 麻生うさぎ 加藤賢崇 岸野萌圓 伊丹十三
アメリカンビスタ カラー 80分

春、高校時代の先輩・西岡に思いを寄せる秋子は田舎から上京し、都内にある大学を訪ねた。校内で配布されていた「新入生のためのキャンパス地図」をもとに音楽サークル・ベラクルスの部室を探し当てた秋子は、再会に胸を躍らせ扉を開けた。吉岡は音楽活動をしていたこともあってここにいるに違いないと確信していたのだ。だが中に彼はおらず、部員が情事の真っ最中。慌てて飛び出した秋子が焦ったと呟くと、男子生徒が扉の向こうから声を掛けてきた。だが吉岡のことを尋ねても知らないの一点張り。そこで吉岡が専攻する心理学科の平山ゼミの場所を尋ねた。

平山ゼミへ向かう秋子に声を掛けてきたのは、情事の相手のエミだった。自分勝手な人が大嫌いだという秋子と彼女が恋焦がれる吉岡に興味を持ったエミは、おもしろがって心理学科までついて行くことにした。教室に入ったが、吉岡の姿はなし。ゼミ生に一人は最初の1、2回来ただけで姿を見せなくなったと言い、もう一人のゼミ生は音楽系のクラブに入ったものの顔を出さないと言った。別のゼミ生がライブハウスに出ていたのを見たと言うと、他のゼミ生はそれは嘘だと言った。戸惑う秋子が一体どっちなんですかと言うと、最初のゼミ生はその問いこそが心理学上の大問題なんだと言った。もう吉岡は来ないだろうと断言した平山教授の言葉に失望した秋子は帰ろうとしたが、エミに引き留められて彼女の寮に泊まることになった。だが彼女や同室の女の行動に異常さを感じ、飛び出して行った。一晩、野宿した秋子は、今日こそはいてくれますようにと吉岡との再会を願って再びベラクルスを訪ねた。そこで彼女が見たのは、エミと体を重ねる吉岡の姿だった。自分が思い描いていた理想像とは程遠い吉岡の姿に、秋子は怒り失望した。

平山は、ある局地的な恥ずかし体験をした人間が、そのときに発生したエネルギーを発散出来ずに一種の肉体的硬直現象を起こすという「局地的恥ずかし変異」の研究を行っていた。同様の研究は他でも行われていたが、未だにそのような現象を直接観測しえた者はいなかった。理論的にその存在を否定出来ない現象を証明するためには自身が被験者となるべきだが、いわゆる指数10の恥ずかしさを体験したことがなかったのだ。ならば若い娘をはずかしめ、はずかしめられたらどんなにいいだろう。

思い描いていたイメージとかけ離れた大学生活を目の当たりにした秋子の心は傷ついていた。荷物をまとめて構内から出て行こうとした秋子に声をかけたのは平山で、自著の「新自由心理学」を手渡し感想を聞かせて欲しいと言った。

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