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ドカベン(1977年 鈴木則文監督)

  • posted at:2014-05-10
  • written by:砂月(すなつき)
どかべん
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年4月29日 併映「恐竜怪鳥の伝説」「池沢さとしと世界のスーパーカー」
監督:鈴木則文
企画:太田浩児
原作:水島新司
脚本:掛札昌祐
撮影:出先哲也
録音:宗方弘好
照明:川崎保之丞
美術:藤田博
編集:田中修
助監督:森光正
記録:宮本衣子
擬斗:日尾孝司
柔道指導:池内憲二
スチール:加藤光男
進行主任:志村一治
装置:五十嵐靖治
装飾:住吉久良蔵
美粧:宮島孝子
美容:福原精吾
衣裳:石原啓二
演技事務:
現像:東映化学
音楽:菊池俊輔
主題歌:「がんばれドカベン」こおろぎ'73
・・・:「ああ青春よいつまでも」こおろぎ'73
協力:ナイル野球用品 株式会社鷺宮製作所 週刊少年チャンピオン
出演:橋本三智弘 永島敏行 高品正広 山本由香利 渡辺麻由美
シネマスコープ カラー 84分

私立明訓高校の校門付近では早朝から騒動が起きていた。まともに勝負しては太刀打ち出来ない運動部が一致団結して、2メートルはあろうかという大柄な男子生徒の岩鬼正美を叩きのめそうとしていたのだ。そんなことも知らずにそこへ駆け込んで来たのはずんぐりむっくりな転校生で、岩鬼とぶつかったにも関わらずビクともしなかった。転校生は、はずみで落とした鞄が岩鬼に踏んづけられているのを見て「あっ、弁当」と思わず漏らしてしまった。それを聞いた岩鬼は、自分がコケにされていると思い込み殴りかかった。だが転校生はひょいと交わすと、失礼しますと挨拶して立ち去った。転校生の名は山田太郎といい、岩鬼と同じクラスだった。昼休みの時間となり、山田が弁当を広げるのを見て岩鬼は驚愕した。30センチ四方はありそうな自分の弁当箱より一回り大きいのだ。何でも自分が一番でなければ気が済まない岩鬼は、帰りにグランドへ来いと怒鳴りつけた。

岩鬼が山田との決闘の場所に選んだのは、野球の練習場だった。部員たちが練習出来ずに困っているところへやってきたキャプテンでエースの長島徹は、岩鬼がピッチャーズプレートを下駄で踏んでいることに怒り、出て行けとぶん殴った。騒ぎを知って走ってきた山田は、脱いだ制服の上着でプレートを丁寧に拭き、決闘騒ぎを起こしたのは自分のせいだから許してくださいと頭を下げた。一方、怒りの収まらない岩鬼は拳で勝負をつけようとしたが、そばで見ていたソフトボール部キャプテンの朝日奈麗子は野球で勝負をつけるのがいいのではないかと提案した。そんな馬鹿馬鹿しい球遊びにつきあってられるかと呆れる岩鬼だったが、大好きな夏子が麗子に賛同したことであっさりと了承した。ルールは長島が岩鬼と山田に3球ずつ投げ1球でも打てた方か勝ち、というものだった。岩鬼、山田ともに空振りの三振だったが、長島は山田のスイングに異様さを感じていた。全ての球種をストレートで投げ込んだのだが、ボールは山田のスイング後にドロップのような変化をした。しかも彼は木のバットではなく、鉛入りのマスコットバットを使っていたのだ。後日、山田に不意打ちをかけてボールを投げた。そのときに見せた野球で培われたとしか思えない身体能力を見抜いた長島は、俺の球を受けてくれと言ってキャッチャーミットを渡した。現在の野球部には長島の変化球を捕ることが出来るキャッチャーがいないのだ。だが山田は野球は出来ないと断わった。

長島から野球部への勧誘を受けた山田だったが、彼はそれどころではなかった。明訓高校には弱小の柔道部があり、主将のわびすけから部の立て直しを先に頼まれていたのだ。山田は部員にならない代わりに、レスリング部からスカウトを受けた丹下を連れ戻すと約束したが、そのことを知った岩鬼が先回りしたことで話がややこしくなり、丹下は重傷を負った。責任を感じた山田は、まず他の運動部の物置と化している部室の片づけから始め、破れた畳を長屋に持ち帰った。山田の実家は畳屋で、畳職人の祖父と妹のサチ子との三人暮しだった。祖父譲りの技術で畳の修復を終えると柔道部に入部した。

屋台的映画館
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ドレミファ娘の血は騒ぐ

  • posted at:2014-03-24
  • written by:砂月(すなつき)
EPIC・ソニー=ディレクターズ・カンパニー
配給:ディレクターズ・カンパニー
製作年:1985年
公開日:1985年11月3日
監督:黒沢清
企画:丸山茂雄 宮坂進
プロデューサー:山本文夫
配給・宣伝・プロデューサー:荒井勝則
脚本:黒沢清 万田邦敏
撮影:瓜生敏彦
照明:片山竹雄
美術:星埜恵子
録音:銀座サウンド
特殊美術:昼間行雄
編集:菊池純一
音楽:東京タワーズ 沢口晴美
記録:高山秀子
メイク:浜田芳恵 志川あずさ
助監督:万田邦敏
製作担当:荒井勝則
監督助手:岡田周一 佐々木浩久 鎮西尚一
撮影助手:岡本順孝 佐竹力也
照明助手:及川一郎 矢木宏
美術助手:塩田明彦 暉峻創三
特殊機材:河村豊
スチール:野上哲夫
タイトル:ハセガワプロ
製作進行:庄司真由美 植野亮 寺野伊佐雄
製作デスク:山川とも子
宣伝:勝野宏
現像:東洋現像所
協力:多摩芸術大学 ぴあ 位相機械ユニット キー・グリップ 光映新社 東洋照明 日本照明 ペーパーメイル 三穂電機
出演:洞口依子 麻生うさぎ 加藤賢崇 岸野萌圓 伊丹十三
アメリカンビスタ カラー 80分

春、高校時代の先輩・西岡に思いを寄せる秋子は田舎から上京し、都内にある大学を訪ねた。校内で配布されていた「新入生のためのキャンパス地図」をもとに音楽サークル・ベラクルスの部室を探し当てた秋子は、再会に胸を躍らせ扉を開けた。吉岡は音楽活動をしていたこともあってここにいるに違いないと確信していたのだ。だが中に彼はおらず、部員が情事の真っ最中。慌てて飛び出した秋子が焦ったと呟くと、男子生徒が扉の向こうから声を掛けてきた。だが吉岡のことを尋ねても知らないの一点張り。そこで吉岡が専攻する心理学科の平山ゼミの場所を尋ねた。

平山ゼミへ向かう秋子に声を掛けてきたのは、情事の相手のエミだった。自分勝手な人が大嫌いだという秋子と彼女が恋焦がれる吉岡に興味を持ったエミは、おもしろがって心理学科までついて行くことにした。教室に入ったが、吉岡の姿はなし。ゼミ生に一人は最初の1、2回来ただけで姿を見せなくなったと言い、もう一人のゼミ生は音楽系のクラブに入ったものの顔を出さないと言った。別のゼミ生がライブハウスに出ていたのを見たと言うと、他のゼミ生はそれは嘘だと言った。戸惑う秋子が一体どっちなんですかと言うと、最初のゼミ生はその問いこそが心理学上の大問題なんだと言った。もう吉岡は来ないだろうと断言した平山教授の言葉に失望した秋子は帰ろうとしたが、エミに引き留められて彼女の寮に泊まることになった。だが彼女や同室の女の行動に異常さを感じ、飛び出して行った。一晩、野宿した秋子は、今日こそはいてくれますようにと吉岡との再会を願って再びベラクルスを訪ねた。そこで彼女が見たのは、エミと体を重ねる吉岡の姿だった。自分が思い描いていた理想像とは程遠い吉岡の姿に、秋子は怒り失望した。

平山は、ある局地的な恥ずかし体験をした人間が、そのときに発生したエネルギーを発散出来ずに一種の肉体的硬直現象を起こすという「局地的恥ずかし変異」の研究を行っていた。同様の研究は他でも行われていたが、未だにそのような現象を直接観測しえた者はいなかった。理論的にその存在を否定出来ない現象を証明するためには自身が被験者となるべきだが、いわゆる指数10の恥ずかしさを体験したことがなかったのだ。ならば若い娘をはずかしめ、はずかしめられたらどんなにいいだろう。

思い描いていたイメージとかけ離れた大学生活を目の当たりにした秋子の心は傷ついていた。荷物をまとめて構内から出て行こうとした秋子に声をかけたのは平山で、自著の「新自由心理学」を手渡し感想を聞かせて欲しいと言った。

屋台的映画館

トラック野郎 爆走一番星

  • posted at:2012-06-25
  • written by:砂月(すなつき)
とらっくやろうばくそういちばんぼし
東映
配給:東映
製作年:1975年
公開日:1975年12月27日 併映「けんか空手 極真無頼拳」
監督:鈴木則文
脚本:鈴木則文 澤井信一郎
企画:天尾完次 高村賢治
撮影:飯村雅彦
録音:井上賢三
照明:山口利雄
美術:桑名忠之
編集:鈴木宏始
助監督:澤井信一郎 馬場昭格
記録:山内康代
擬斗:日尾孝司
スチール:藤井善男
進行主任:志村一治
装置:畠山耕一
装飾:米沢一弘
美粧:井上守
美容:花沢久子
衣裳:内山三七子
演技事務:石原啓二
現像:東映化学
音楽:木下忠司
主題歌:「一番星ブルース」菅原文太 愛川欽也
挿入歌:「トラック・ドライビングブギ」ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
挿入歌:「残り火の恋」西来路ひろみ
企画協力:株式会社カントリー
協力:長崎・ニューホテル中央荘 長崎県真珠加工協同組合パールギャラリー ニットータイヤ デコレーション・トラックグループ哥麿会
出演:菅原文太 あべ静江 春川ますみ 加茂さくら 愛川欽也
アメリカンビスタ カラー 96分

派手な電飾で飾った二台のトラックが東京に戻ってきた。11トントラックの運転手・一番星こと星桃次郎を待ち受けていたのは、4トントラックの運転手・やもめのジョナサンこと松下金造の妻・君江だった。いつまで経っても身を固めようとしない桃次郎を気遣った君江は、見合い写真を知り合いに配っていい人を見つけてあげようと考えていた。一方、その話にまんざらではない桃次郎は男前を決め込んで写真撮影に臨んだ。星がチカチカッとするような生娘との出会いがあれば、特殊浴場通いをすっぱり止めて今にでも結婚したい。彼はそう心に決めていた。

トイレ休憩で播磨のドライブイン「おふくろ」に立ち寄った桃次郎と金造は、真っ先にトイレに駆け込んだ。だがあいにくの紙切れで、まだ用を足していない桃次郎が店に取りに行くことになった。女将の蝶子に早くしろと急かしていると、一人の女性がどうぞと紙を差し出した。その女性は高見沢瑛子という太宰治好きの女子大生で、「おふくろ」で下宿しながらウェイトレスのアルバイトをしていた。桃次郎はその人の顔を見るなり一目惚れ。鼻風邪をひいて微熱があると言ってその場をやり過ごしたが、我慢出来ずにドライブインから離れた場所で野糞した。ところがあの紙は鼻をかんで捨ててしまったため、またもや紙切れ。金造は仕方なく通行中の車輌に紙を分けてもらうことにしたが、停まったのは「おふくろ」に立ち寄る前に桃次郎が悪戯をしたバキュームカーだった。運転手の杉本千秋は、困っているときはお互い様とばかりに金造に手渡すと走り去り、金造は彼女の気風の良さに惚れ込んだ。

君江に柔順な金造は、全国各地を回っているときでも抜かりなく見合い写真を関係者に配っていた。ある日、博多の屋台でラーメンを食べているときに、桃次郎が紙をくれたあの女はどうだと突然切り出した。それを聞いた金造は驚き、彼の気持ちが本物であることを確認すると、この縁談を積極的にまとめることにした。「おふくろ」に到着すると、桃次郎の期待を背に金造は店内の入って行った。そして見合い写真を渡して出てくると、脈ありだぞと告げた。学ランの脇に太宰治全集を抱えた姿で座敷に上がり、緊張の面持ちで瑛子を待つ桃次郎。そして注文を取りにきた瑛子と噛み合わないながらも額に汗しながら話をした。瑛子がいなくなると金造はうまく行きそうだぞと桃次郎を勇気付けた。金造が手を振る先には千秋から注文を取る瑛子の姿が。二人が親しいと思い込んだ桃次郎は、千秋に仲を取り持ってもらおうと考えた。

屋台的映画館

東海道四谷怪談(1959年)

  • posted at:2012-06-04
  • written by:砂月(すなつき)
とうかいどうよつやかいだん
新東宝
配給:新東宝
製作年:1959年
公開日:1959年7月1日 併映「怪談鏡ケ淵」
監督:中川信夫
製作:大蔵貢
企画:小野沢寛
原作:鶴屋南北
脚本:大貫正義 石川義寛
撮影:西本正
照明:折茂重男
録音:道源勇二
美術:黒沢治安
音楽:渡辺宙明
編集:永田紳
助監督:石川義寛
製作主任:山本喜八郎
出演:天知茂 北沢典子 若杉嘉津子 江見俊太郎 中村竜三郎
シネマスコープ カラー 75分

大寒の明けたある夜、備前・岡山の屋敷町では四谷左門と彼の友・佐藤彦兵衛が家路を急いでいた。そこに現れたのは、左門の娘・岩との仲を引き裂かれた浪人の民谷伊右衛門だった。彼は岩との復縁を認めて欲しいと願い出たが、左門は身持ちの悪い者に娘はやれないと強く断わった。隣にいた彦兵衛も、待ち伏せをして無理難題を吹っかけるのは追い剥ぎも同然だと言った。馬鹿者呼ばわりされて我慢出来なくなった伊右衛門は二人を斬った。彼はそばにいた下僕の直助にまでも手を掛けようとするが、彼が発したいい考えがあるという言葉に心が揺れた。

直助は伊右衛門と口裏を合わせて、仇は顔の真ん中に大きな刀傷があったことからしても御金蔵破りをしくじった小沢宇三郎に間違いないと言った。御上に訴え出た左門たちへの逆恨みという話をでっち上げたのだ。それを聞いた岩は、本懐を遂げるまで妹の袖との縁談を待って欲しいと彦兵衛の子息である与茂七に頼み込んだ。すると与茂七も同意した。そして岩は伊右衛門にも協力を求めると、彼は「岩殿のためなら喜んで」と言った。一行は早速、江戸へ出立した。

岡山を旅立って半年後、与茂七たちは白糸の滝近くの茶屋で休んでいた。岩はそこから半里先にある曽我兄弟の墓に参るつもりでいたが、体調が思わしくなかったため与茂七と伊右衛門、そして直助が代わりを務めることになった。与茂七が音止めの滝の雄大さに感心していたそのとき、直助は背後から斬り付けると滝壷に突き落としたのだった。二人は茶屋の岩たちに、与茂七が突然現れた宇三郎に斬られ、必死の抵抗も空しく逃げられてしまったと伝えた。伊右衛門は岩を介抱し、直助は袖とともに宇三郎の後を追い掛けることになった。袖に想いをよせる直助は二人きりになる機会を窺っていたのだ。

伊右衛門と岩との間に子供が生まれ、二人の江戸での生活は順調そうに見えた。だが仕官の口はなく、伊右衛門は傘貼り、岩は仕立て物で家計を成り立たせなくてはならなかった。岩は仇の手掛かりが掴めないことと妹の消息がわからないことに焦りを感じていた。ある日、その不安が口に出てしまい、それを聞いた伊右衛門は腹を立てて家を出て行った。一方、袖も直助と所帯を持っていた。薬を売りながら仇と姉を捜す直助が要領を得ないことに袖は苛立ちを感じていた。
伊右衛門は、娘に酌をさせなければここを通さないという侍たちから伊藤喜兵衛と梅を救った。そのお礼としてもてなしを受けた伊右衛門だったが、喜兵衛が差し出した金子をいくら浪人暮らしとは言っても武士は武士であるから受け取れないと言って断わった。その様子を見ていた梅は、伊右衛門の誠実さに惹かれて行った。

屋台的映画館

ドリームメーカー

  • posted at:2010-12-18
  • written by:砂月(すなつき)
どりーむめーかー
ライジングプロダクション=東映=TBS
配給:東映
製作年:1999年
公開日:1999年10月23日
監督:菅原浩志
製作総指揮:平哲夫
製作:岡田裕介 児玉守弘 春日たかし
プロデュース:平野隆
プロデューサー:林みのる
脚本:菅原浩志 犬童一心 小林弘利
脚本協力:浪江裕史
企画:遠藤茂行 竹村幸男
撮影:林淳一郎
音楽:佐橋俊彦
音楽プロデューサー:土屋純一
照明:山川英明
録音:辻井一郎
美術:小澤秀高
編集:板垣恵一
助監督:野崎邦夫 小久保利己
スクリプター:松橋章子
製作担当:今村勝範
出演:辺土名一茶 上原多香子 袴田吉彦 梅宮辰夫 富司純子
アメリカンビスタ カラー 112分

バンド活動に明け暮れ、搭載したスピーカーから流れる大音量の音楽を聴きながら改造バイクをすっ飛ばすという毎日を送る杉浦マサトは高校生活最後の一年を悔いなく過ごそうと思っていた。だが4人組のハードロックバンドは何度ライブハウスのオーディションを受けても認められることがなく、その原因が自分のドラムにあるのではないかと考えていたマサトはひどく落ち込んでいた。そんな彼を家族は心配しながらも見て見ぬふりをしていた。ある日、いつものようにバイクを走らせていると大型バイクの集団に取り囲まれた。彼らはレッド・ヒートという伝説の暴走族で、コワモテの連中が近づいてきたことでマサトは震え上がった。ところが男たちは見た目と違ってとてもフレンドリーで、雑誌の特集ではレッド・ヒートの一員として載っていた。それを見たバンドメンバーでクラスメイトの小森敏和と森真一は憧れた。というよりも紅一点の小柳麗香に興味を持ったのだった。ある夜、マサトが仲間とともに走っていると取り締まりのパトカーに進行方向を阻まれた。レッド・ヒートのメンバーは観念しておとなしく停車したが、怖気づいたマサトはUターンして逃げ出したのだった。その結果、リーダの逆鱗に触れ破門されてしまった。彼が楽曲を編集したカセットテープを気に入っていた麗香は落ち込むマサトに近づき、もらってもいいよねと手を出した。言われるがままに手渡したが、内心とてもうれしかった。

杉浦家はマサトの他に、自動車修理工場を営み自分の気に入った仕上がりになるまでとことんこだわり続ける職人気質の父親の勝美、一家の金庫番で食事の栄養や教育には小うるさい母親の芳江、兄を見下している中学生で妹のあいの四人暮らし。ある日、マサトがバイクをいじっているとキャブレターを交換しなければならないことがわかった。そこで芳江に小遣いをせびったのだが、大学受験や将来の話を持ち出され何も言えなくなった。彼は夜中にこっそりと家を抜け出して駐輪場のバイクから盗み出すことにしたのだが、パトロール中の巡査に見つかり御用となった。警察から連絡を受けた勝美はそんなはずがないと信じて部屋に行ったが息子の姿はなく、居間に戻ると芳江が着替えをして出掛ける準備をしていた。芳江は子育ての責任を感じており、話を聞いた勝美は言葉を失った。翌早朝、マサトを引き取り警察署を出た芳江は、自分と勝美の分と言ってゲンコツを2発食らわせた。

雨の夜、マジックランタンという小さなレンタルレコード店に立ち寄ったマサトは、そこで自分が聴きたかったたくさんの貴重なレコードと出会った。彼はここで働きたいと思ったが、店長の重田はそんな余裕はないと言って断った。だがマサトが恐ろしい程の熱意を見せたことで折れ、渋々採用することにした。この店のレコードの一部は重田の姪・美希の亡き父親のコレクションで、彼女は傷がつくと反対する重田の意見を押し切って提供することにしたのだ。聞いてもらうために生まれてきたレコードたちが埃を被るのを可哀想だと感じていたのだった。居場所を見つけたマサトは、音楽の知識を生かして接客を始めた。店のために、そして美希のために。

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