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コント55号 俺は忍者の孫の孫

  • posted at:2013-07-27
  • written by:砂月(すなつき)
こんとごじゅうごごうおれはにんじゃのまごのまご
東宝
配給:東宝
製作年:1969年
公開日:1969年10月10日 併映「赤毛」
監督:福田純
製作:寺本忠弘 浅井良二
企画:針生宏
原作:山田風太郎
脚本:桜井康裕 伊達八郎
音楽:広瀬健太郎
撮影:逢沢譲
美術:育野重一
録音:牛窪秀夫
照明:下村一夫
整音:エコースタジオ
監督助手:中野恵之
編集:大橋富美子
合成:三瓶一徳
現像:東京現像所
製作担当者:村上久之
製作協力:株式会社エコー
出演:萩本欽一 坂上二郎 高橋紀子 柏木由紀子 重山規子
シネマスコープ カラー 81分

人だかりの公園では一人の男が今にも焼身自殺を図ろうとしていた。男の名は甲賀二郎。鈴鹿山麓忍者発祥の地・甲賀から上京してきた二郎は、腐敗政治に抗議するためには自らが犠牲にならなければならないと考えたのだ。それを聞きつけた消防士の伊賀欽一は二郎の言葉に感銘を受け、末期の一服はどうかとタバコを取り出したのだった。端から死ぬ気のない二郎は本当に殺されてはたまらないと逃げ出し、欽一は後を追い掛け回した。その結果、公園が大混乱に陥り、二人は軽犯罪法違反で逮捕された。留置場に入れられることになった欽一たちを救ったのは、太陽党幹事長・鷲塚剛太郎の娘・亜矢子だった。亜矢子は二人と面識はなかったが、純粋な気持ちに心を動かされたのだ。その優しさに惚れ込んだ二郎は亜矢子と結婚する決意を固めた。女と縁遠い二郎は甲賀の村で馬鹿にされっぱなしだった。くやしくてたまらない彼は一念発起し、東京で美人と結婚して見せると宣言して村を飛び出して来たのだった。そのためには有名にならなければならず、マスコミを利用した大掛かりなパフォーマンスを行ったのだった。焼身自殺が芝居だったことがわかり人間不信に陥った欽一は消防士を辞めた。

行きつけの中華料理屋に行った欽一は、テレビ番組に出演していた二郎の主張に賛同する珍さんにこれは自分を売り出すためのインチキだと説明した。だが珍さんは、あの男はきっと出世すると聞く耳を持たなかった。世の中の仕組みがそうなっていると言われ、世は末だ、絶望だ、死にたいと嘆く欽一に、珍さんの娘・ツナ子はかっこいいから死になさいよと言った。売り言葉に買い言葉、欽一は「よし俺は死んでやるよ」と宣言した。珍さんは死んで花実が咲くものかと止めたが、もう一歩も引く気はなかった。もう思い残すことはない。首を吊ろうと輪に頭を入れたまではよかったが、体重を支えられずに折れた梁が頭を直撃したのだ。「これじゃあゲバ棒自殺だ」。欽一が気を失ったとき、そばに伊賀白雲斎欽一が現れた。「そちに伊賀忍法相伝の書を授けちゃうよ」。そう言って渡された巻物には伊賀流の忍術が書かれていた。伊賀忍法は一子相伝で欽一は白雲斎の孫の孫、つまり正当な継承者だった。甲賀忍者の末孫・二郎に遅れを取ったことを嘆く白雲斎は、その忍法でなんとかしろと命じた。

忍法四十六・墨消しの術を会得して喜ぶ欽一は、二郎が情報番組・シルバーショウの司会者に抜擢されたことを知って歯噛みした。「決闘だ!」。欽一はテレビ局に乗り込み、勝負を申し込んだ。すると二郎もそれを了承し、生放送で全国の視聴者に勝負の行方を見届けてもらうことにしたのだ。勝負の方法は、まず欽一が一枚の千円札を真っ白にし、二郎がそれをもとに戻すというものだった。結果は五分五分だが番組の視聴率は60パーセントを超え、二郎の好感度はアップした。彼のイカサマ忍術に欽一は敗れたのだ。その頃、政界では近々抜き打ち解散があるという噂があり、二郎の人気に目をつけた日本平和党の総裁・相良以蔵は、我が党から選挙に出馬してもらいたいと自ら願い出たのだった。

屋台的映画館
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コント55号 人類の大弱点

  • posted at:2013-07-05
  • written by:砂月(すなつき)
こんとごじゅうごごうじんるいのだいじゃくてん
東宝
配給:東宝
製作年:1969年
公開日:1969年8月13日 併映「日本海大海戦」
監督:福田純
製作:寺本忠弘 安達英三朗
企画:浅井良二
原作:町田浩二
脚本:江古武郎 平戸延介
音楽:小野崎孝輔
撮影:宇野晋作
美術:育野重一
録音:小沼渡
照明:下村一夫
整音:エコースタジオ
監督助手:根本順善
編集:大橋冨美子
現像:東京現像所
製作担当者:村上久之
製作協力:株式会社エコー
出演:萩本欽一 坂上二郎 白川由美 岡田可愛 大辻伺郎
アメリカンビスタ カラー 77分

競輪を生き甲斐としている大垂欽一は、身包み質に入れて作った虎の子の二万円を何十倍にもしてやろうと夢を見たが、現実は甘くなかった。残金はわずか三十円。腹が減ったと嘆きながら秋葉原の電気街を歩いていると、女性客から店員と間違えられた。彼が着ていたジャンパーが前を通り掛った店のものとそっくりなのだ。客から金を騙し取れるかもしれない。そう考えた欽一は店員に化けることにした。すると早速カモがやってきた。その客はジューサーを買いに来た人が良さそうな中年男で、欽一に言われるがままに商品代の五千円を支払った。そしてレジに用意してあった商品を持ち出そうとしたが、支払いがまだだと止められた。払った払ってないの押し問答となったが、外にいる欽一の姿をみつけ男は箱を持ったまま店を飛び出した。大胆な行動に驚いた店員たちは万引きだと叫びながら追い掛け、ついに男を取り押さえたのだった。男の名は駒形二郎。隅田署の詐欺係を任命されたばかりの刑事だった。逃げ延びた欽一は知り合いの大門幸子と出会った。キョロキョロと落ち着かない欽一の様子にどうしたの尋ねると、彼は財布を掏られてここまで追い掛けて来たが逃げられてしまったと嘘をついた。掏られた一万二千円は集金してきた金で、会社に納めなければ公金横領になると泣き言を言うと、幸子は私が貸してあげると言った。欽一は亡くなった幸子の兄の親友だったこともあり、彼女は信頼し切っていたが、欽一は手に入れた一万七千円を競輪に使うつもりでいた。

万引きの疑いは晴れたが、詐欺係配属初日にカモにされた屈辱は晴れなかった。そこで二郎は再び現れるであろう秋葉原に狙いを定めパトロールを始めた。すると予想どおり競輪で有り金を摩った欽一が通り掛ったのだ。二郎は逮捕寸前まで追い込んだが、まんまとしてやられた。タバコを騙し取ることを思いついた欽一は、大日本福祉協会で贈答用のタバコが不足しているため直ちに千個欲しいと向かいのタバコ屋に駆け込んだ。タバコ屋は用意したタバコと小さな息子に運ばせたため、欽一は簡単に手に入るぞとほくそ笑んだ。だがその子供はしっかり者で、現金との引き換えでなければ渡さないというのだ。困った欽一が受け取りの判子を持っているかと尋ねると、子供はそんなもの持っていないと答えた。すると、役所のようなところでは絶対に必要だと説明して取りに帰らせたのだった。こうして欽一はまんまとタバコをせしめたのだが、待ち伏せていた二郎に逮捕された。子供が通り掛った二郎に通報したことで逮捕に至ったのだ。留置場に送られた欽一は四日間で十二件の犯行を行い、手に入れた七十万円を全て競輪につぎ込んだ。数日後、面通しが行われ欽一は被害者に対する謝罪を述べる一方で断続的に咳き込んだ。その結果、同情を買うことに成功しまたもや金をせしめたのだった。巧妙な言葉で弁護士までも抱き込んだ欽一は、前科一犯の刑期をまじめに勤めて六ヵ月で仮出所した。実社会での再スタートを切った彼の最初の仕事は洋服店でスーツを拝借することだった。新しいスーツに身を固めた欽一の行く先は幸子が勤める旭光産業だったが、彼女は既に退職した後だった。その夜、幸子が会社を辞めた理由を知った欽一が彼女のために次の計画を頭の中で巡らせていると、腕に手錠が掛かった。二郎の第六感で逮捕された欽一は、再び半年間の別荘暮らしとなった。

屋台的映画館

コント55号 世紀の大弱点

  • posted at:2013-06-13
  • written by:砂月(すなつき)
こんとごじゅうごごうせいきのだいじゃくてん
東宝
配給:東宝
製作年:1968年
公開日:1968年11月2日 併映「日本一の裏切り男」
監督:和田嘉訓
製作:安達英三朗
企画:浅井良二
脚本:松木ひろし
音楽:山本直純
主題歌:「そいつに一番弱いんだ」坂上二郎
撮影:中井朝一
美術:加藤雅俊
録音:吉沢昭一
照明:山口虎男
整音:小沼渡
監督助手:合月勇
編集:岩下広一
合成:三瓶一信
現像:東洋現像所
協力:ニッカウ井スキー株式会社
製作担当者:坂井靖史
製作協力:株式会社エコー
出演:萩本欽一 坂上二郎 三浦恭子 水垣洋子 真理アンヌ
シネマスコープ カラー 87分

週刊誌「ウイークポイント」の記者・矢島周作とカメラマンの北川洋太は、年がら年中遅刻ばかり。遅刻の理由も底をつき覚悟して出勤したところ、編集長の沢田から朝駆けとは感心だと褒められた。彼らの仕事は自称流行作家の竹村直彦から依頼した原稿を受け取ることだったが、締め切りがその日の午前中であるにも関わらず、未だに入手出来ていなかった。それを知った沢田は「直ちに出動だ!」と怒鳴りつけたのだった。売れっ子となる最後のチャンスだと考えた竹村は、今までの作品とは違う性愛小説に挑戦しようとしていた。だが試みとは裏腹に、筆の方は一向に進まなかった。困った矢島と北川は特訓と称したキャバレー、アルバイトサロン、ヌードスタジオ、泡風呂の梯子に竹村を強引に参加させた。三人が最後にやって来たのは矢島たちがいつも接待に使っている行きつけのクラブ・RIC-Uだった。ママのご機嫌をとって竹村に近付かせ、原稿のネタにさせようと考えた矢島だったが、竹村はいつの間にかホステスの君子と交渉を成立させて雲がくれしてしまった。二人は自宅の前で待つことにしたが帰ってくる様子はなく、夜が明けてしまった。

先日持ち込んだ原稿の感想を聞こうとウイークポイント社を訪れた赤石銅幹だったが、素人が書いた小説など端から読む気のない沢田はつき返したのだった。赤石が肩を落として歩いていると、怖くて怖くてたまらない女房の直子と出くわした。慌てる赤石は通り掛ったタクシーに乗り込み、直子もその後に来たタクシーを停めた。竹村の行方は一向にわからず、矢島と北川は公園でしょんぼりとしていた。北川は三年三ヶ月前まで街頭カメラマンをやっていたが、矢島の紹介で今の仕事にありついた。その仕事が絶望となった今、彼は再び街頭カメラマンとしてやっていくことに決めたのだ。そうと決まればと沿道のタクシーを停めようとしたところ、降りてきたややこしい二人の騒動に巻き込まれてしまった。矢島は足下に落ちていた封筒に気付き拾い上げると、中から作者名のない原稿が出て来た。思わぬところで手に入った原稿に、矢島は「山吹咲代」と署名した。「燃える雌芯」を一通り読み上げた沢田は興奮し、急遽この小説を載せることにした。すると評判が評判を呼び売り上げは倍増、読者からも熱狂的な支持を受けた。これに気を良くした沢田は次の作品を期待していたが、いないものはどうしようもなかった。写真だけでも何とかしなければと考えた矢島は、手っ取り早く有名になりたいと願う人物を口説いて山吹咲代に仕立てあげることにした。その人物とは北川の彼女でRIC-Uのホステスの須永糸美だった。糸美は二つ返事で了承したが、問題は作家本人の行方だった。封筒に書かれた住所を手掛かりにして居所を捜すと、古びたバスにたどり着いた。恐妻家の赤石は身を潜めて小説を書いていたが、住所が公になることを恐れていたため出版社に売り込むことが出来ないでいた。自分の作品が架空名で発表されたことを彼は心から喜び、これからも山吹咲代として執筆することを約束した。その後、山吹咲代は新人文学賞を受賞し、人気はさらに高まったが、それをつまらなく感じていたのは週刊ロマンの記者・小森麻子だった。

屋台的映画館

皇帝のいない八月

  • posted at:2013-05-30
  • written by:砂月(すなつき)
こうていのいないはちがつ
松竹
配給:松竹
製作年:1978年
公開日:1978年9月23日
監督:山本薩夫
製作:杉崎重美 宮古とく子 中川完治
原作:小林久三
脚本:山田信夫 渋谷正行 山本薩夫
撮影:坂本典隆
音楽:佐藤勝
美術:芳野尹孝
照明:八亀実
録音:田中俊夫
調音:松本隆司
効果:伊藤亮行
編集:杉原よ志
スチール:金田正
監督助手:福田幸平
装置:森勇
装飾:宮崎琢郎
衣裳:松竹衣裳
現像:東洋現像所
進行:早川喜康
製作主任:沼尾鈞 福山正幸
監督補:熊谷勲
撮影補:長沼六男
製作補:小倉洋一
ナレーター:鈴木智
協力:逗子マリーナ
出演:渡瀬恒彦 吉永小百合 高橋悦史 山本圭 山崎努
アメリカンビスタ カラー 140分

8月14日午前1時、盛岡市好摩で車の接触事故が発生した。国道4号線を巡回していたパトカーは現場に向かおうとしたが、車線をはみ出して走行するトラックに遭遇し追跡を行った。接近して車輌のナンバーを確認しようと試みたが、貨物を覆ったシートの隙間から覗いた銃口がパトカーを狙っていた。機関銃の乱射を受けたパトカーは蜂の巣になって炎上し、トラックは何事もなかったように東京方面へ走り去った。午前10時半。陸上自衛隊警務部長・江見為一郎は、亡き妻の墓参りのため来ていた鹿児島で内閣調査室室長・利倉保久からの第一報を聞いた。首相直属の情報機関である内閣調査室は、国の内外に亘って広く情報の網の目を張り巡らしており、その活動内容は極秘にされていた。仙台の警務課部隊が現場を立ち入り禁止にして検証を行った結果、機関銃の弾痕が発見された。政府は事件を隠すために、濃霧による事故として処理せよと命じたのだった。彼らがマークしていたA種特定退役者には複数の所在不明者がおり、その中にある人物が入っていることを知った江見は東京に直帰することを止め、福岡へ向かった。

防衛庁技術研究本部職員・松谷は利倉を招いて事故の説明を行った。パトカーは10メートル以内の至近距離で被弾したが、車輌には5.56ミリNATO弾による弾痕が残されていた。通常、自衛隊は7.62ミリ弱装弾を使用しているが、NATO弾は装備していなかったのだ。この情報は総理大臣・佐橋光永内と閣官房長官・黒須忠雄にも伝えられ、東京・首相官邸に呼び出された山村貞徳防衛庁長官は、5.56ミリ機関銃はアメリカがK国に武器援助したものであると説明した。佐橋は度重なる経済政策の失敗や強引なK国汚職隠しなどによって急速に支持率を失い、4ヵ月後に行われる総選挙では民政党分裂の危機が噂されていた。更なる頭痛の種を抱え込んだ佐橋は緊急閣僚会議を開くことにした。

江見が訪ねたのは、博多で暮らす彼の一人娘・杏子だった。杏子とは5年前に絶縁したが、その理由は藤崎顕正を愛したからだった。藤崎は退役後、運送業を営んでいたが、8月になると同業者の寄り合いで県外に出向くことが多くなっていた。そこで近況を把握すべく娘に接触したのだった。杏子が台所に立つ隙を見計らって江見はメモなどを探したが、手掛かりを見つけることは出来なかった。午後6時過ぎ、博多駅のみどりの窓口を訪れた雑誌レザー旬報の記者・石森宏明は、キャンセル待ちだった寝台特急さくら号のチケットを手に入れた。だが彼を待ち伏せていたのは特殊な革靴を履く二人の男たちだった。男たちはチケットを譲るように言ったが、石森は隙をみて逃げ出し午後6時59分発のさくら号に乗り込んだのだった。静かに走り出したさくら号の車内で石森は杏子と再会した。江見が去った後、矢島一曹から受け取った手紙で藤崎が東京に行くことを知った杏子は慌てて仕度をしたのだ。石森は五井物産の南米駐在員時代に右翼の起こしたクーデターに巻き込まれ、そのときに旅行中だった女子大生の杏子と出会った。市民を撃ち殺した武器が自分の売ったものであることを考えると苦しくてたまらず、愛を求めた石森は無事日本へ帰れたら結婚しようと約束した。だが待ち合わせ場所である銀座の喫茶店に杏子は現れなかった。その後、石森はあの日に何があったのかを江見から聞き出そうとしたが、勘当したから忘れてくれの一点張りで答えようとはしなかった。そして今日、同じ質問を杏子にしたが、彼女はやはり答えを口にしようとはしなかった。やがて列車が門司駅に到着すると、杏子は何も言わずにこの列車を降りて欲しいと懇願した。それと同じ頃、数人の乗客が車輌の下に潜り込んだ。

屋台的映画館

コント55号と水前寺清子の神様の恋人

  • posted at:2012-12-30
  • written by:砂月(すなつき)
こんとごじゅうごごうとすいぜんじきよこのかみさまのこいびと
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1968年
公開日:1968年12月28日 併映「喜劇 大安旅行」
監督:野村芳太郎
製作:升本喜年 杉崎重美 浅井良二
企画:浅井企画
脚本:山根優一郎 吉田剛 野村芳太郎
撮影:川又昂
美術:芳野尹孝
音楽:崎出伍一
主題歌:「神様の恋人」水前寺清子
挿入歌:「いっぽんどっこの唄」水前寺清子
・・・:「三百六十五歩のマーチ」水前寺清子
・・・:「ひとりでよいしょ」水前寺清子
・・・:「ゆさぶりどっこの唄」水前寺清子
・・・:「艶歌」水前寺清子
照明:三浦札
録音:栗田周十郎
調音:松本隆司
編集:浜村義康
タイトル画:水森亜土
監督助手:吉田剛
装置:川添善治
進行:池田義徳
製作主任:吉岡博史
現像:東京現像所
協力:熱海ニューフジヤホテル
出演: 萩本欽一 坂上二郎 伴淳三郎 益田喜頓 水前寺清子
アメリカンビスタ カラー 89分

幼なじみのタレ目の岡本金一郎とちっこい目の山上次郎太は焼け野原となった東京で育った。金一郎は弱きを助け強気を挫く清水次郎長のような親分になりたいという夢を持っていた。一方、次郎太は大きな家を建てることが夢だった。空襲で家を失ったためバラック小屋で不自由な生活を送っていたからだ。中学時代、金一郎たちは三人の不良に絡まれている女学生を助け出そうとした。だがその相手は校長の息子とPTAの会長の息子、そして市会議員の息子だったため、二人は怖気付いた。そこへやって来た教師の岩鉄先生こと岩野鉄平は、金一郎に正しいと信じたことは最後までやり通せと言った。この事件が発端となり、岩鉄先生は学校を辞めた。だが二人の心には先生の言葉がいつまでも残っていた。高校時代、二人はタバコ屋の看板娘・ソメちゃんに一目惚れした。だが彼女には既に心を決めた人がおり、しばらくしてお嫁に行った。その様子を陰から覗いていた金一郎と次郎太は大粒の涙を流した。もう生きて行けないと言う次郎太に、金一郎は「泣くやつがあるか。泣き虫や弱虫は神様の恋人にはなれないんだ」と悔しさを押し殺して言った。

10年後、金一郎は運送会社で働いていたが、仲間と些細なことでケンカになりダンプトラックを降ろされてしまった。途方に暮れる金一郎が降り立ったその地は、彼が憧れる清水次郎長が清水へ出る前にちょっと住んでいた大浜町だった。腹が減っては戦が出来ぬと金一郎は屋台に飛び込み、ラーメンを4杯も平らげた。だが言動で女将から無一文であることを見抜かれると、その場でセーターとジーンズを脱ぎ出しそれを渡して一目散に逃げ出した。寒空の下をシャツとパンツで走り回ったことで彼の体は冷え切った。そこで金一郎は銭湯に飛び込んだのだが、番台に座る看板娘を見て驚いた。タバコ屋のソメちゃんに瓜二つなのだ。彼女の名前は鶴田きよ、風呂屋の一人娘だった。寒くてたまらない金一郎は、友達が後で持ってくるからと嘘をつき湯銭を払わずに湯船に浸かったのだ。それから10時間経っても彼はその場から離れようとしなかったため、困った銭湯の主人・鶴田亀吉は常連の客に追い出しを頼んだ。その客は金一郎が食い逃げした女将・愛子の夫、次郎太だった。思わぬ再開に二人はとても喜んだ。

金一郎は次郎太に世話になる代わりにラーメン屋を手伝うことにした。その夜、大熊組のヤクザたちがラーメンを注文したが、ツケだと言って代金を払おうとしなかった。以前にも同じようなことがあったが、次郎太は怖くて断わることが出来なかったのだ。話を聞いた金一郎が大騒動を始めようとしたそのとき、仲裁に入ったのは大熊大五郎だった。表向きは大熊建設社長だが、この町を取り仕切る大熊組の親分なのだ。大五郎の大物っぷりに魅せられた金一郎は大熊組に押しかけ、長年の願いであるヤクザの一員となった。小料理屋・満月で板前として働くことになった金一郎は、客としてやって来る亀吉にきよのことばかり尋ねた。彼は番台に座るきよに初めて会ったとき一目惚れしたのだ。だがきよには農協に勤める恋人がいた。そんなことを知らない金一郎はせっせとラブレターを書き、毎日銭湯に通うのだった。

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