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トラック野郎 望郷一番星

  • posted at:2014-06-02
  • written by:砂月(すなつき)
とらっくやろうぼうきょういちばんぼし
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1976年
公開日:1976年8月7日 併映「武闘拳 猛虎激殺!」
監督:鈴木則文
企画:天尾完次 高村賢治
脚本:野上龍雄 澤井信一郎
撮影:飯村雅彦
録音:井上賢三
照明:小林芳雄
美術:桑名忠之
編集:鈴木宏始
助監督:澤井信一郎 馬場昭格
記録:勝原繁子
擬斗:日尾孝司
スチール:遠藤努
進行主任:東一盛
装置:小早川一
装飾:酒井喬二
美粧:住吉久良蔵
美容:花沢久子
衣裳:福崎精吾
演技事務:山田光男
運転指導:梅沢英泰 小原隆夫
現像:東映化学
音楽:菊池俊輔
主題歌:「一番星ブルース」菅原文太 愛川欽也
挿入歌:「トラック音頭」菅原文太 愛川欽也
企画協力:(株)カントリー
協力:郵船フェリー 近海郵船(株) (株)ローヤル・ペップボーイオートセンター宇都宮店 ニットータイヤ 松川運輸(株) 阿寒・ホテル市川 デコレーション・トラックグループ哥麿会 稗田牧場 伊藤牧場
出演:菅原文太 愛川欽也 島田陽子 春川ますみ 土田早苗
アメリカンビスタ カラー 100分

九州からの積荷を自慢の愛車で北海道へ運ぶ一番星こと星桃次郎とやもめのジョナサンこと松下金造。二人はカーフェリーの出航までの時間を潰すために、川崎にある金造の自宅で昼食をとることにした。お土産のメロンに大喜びして飛びつく子供たちに金造が目を細めていると、長男の幸之助が下宿したいと言っていることを妻の君江が明かした。高校受験が来年に迫っているため、落ち着いて勉強をしたいというのだ。それもそのはず、松下家では八畳一間に妻と9人の子供たちが暮らしていた。ついでとばかりに君江がこんなのどうかしらと不動産の新聞広告を金造の前で広げると、彼はまじまじと眺め考え込んだ。

釧路へ向かうカーフェリーの中で、桃次郎は今にも海に飛び込もうとしている美女を助けた。3万円の入った財布を落としたという彼女に、桃次郎は礼はいらねえから取っとけよと同額を渡した。すると美女は命の洗濯をさせて欲しいと言った。その頃、金造はフェリーのラウンジでボーイのアルバイトをしていた。マイホーム購入という目標を立てたことで、少しの時間も惜しんで働くことに決めたのだ。その夜、桃次郎はラウンジで美女を今か今かと待っていたが、一向に現れる気配はなかった。それもそのはず、詐欺師の加山と組んだ美女に金を騙し取られていたのだ。そうとは知らない桃次郎は焦りから冷静さを失っていたが、そこへ現れた三上亜希子という女性に一目惚れした。それ以来、彼女のことが頭から離れなくなると、網走の市場に着いてからも亜希子がいる霞ヶ関に戻ろうと言い出す始末だった。涼しい北海道で稼ごうと言い出したのは桃次郎の方だったため、金造はなんとか思い止まらせて釧路の漁港へ向かった。そこでは大量のスケトウダラが陸揚げされており、これは荷がありそうだと二人は喜んだ。そのときダンプから下ろされた魚によって桃次郎たちは頭から埋もれてしまった。頭に来た彼らが運転手に悪態をつくと、運転席から降りてきたのは浜村涼子という男勝りの女性だった。この事件はたちまち漁港中に広がり皆震え上がった。その夜、稚内から帰って来たカムチャッカ丸こと大熊田太郎次郎左衛門が港食堂・はきだめの鶴に乗り込んできた。大熊田は涼子に心底惚れ込んでおり、彼女に関わった者は大ケガでは済まなくなるのだ。食事をしていた桃次郎たちはそれどころではなくなり、ケンカを買った。だがそこに水産会社の社長が現れたことで中断した。遅れて入港した漁船の鮮魚40トンを札幌での競りに間に合わせないと会社が倒産してしまうというのだ。礼金を弾むというが、誰も首を縦に振ろうとはしなかった。何故なら札幌まで8時間かかるにもかかわらず競りの開始まで6時間しかなかったのだ。黙って聞いていた桃次郎は、俺がやると言った。すると大熊田も話に乗った。勝負は20トンずつ荷を受け持ち、運賃は勝者のものになる。大熊田は、負けたらきれいさっぱり北海道から出て行けと桃次郎に言った。

屋台的映画館
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暴力教室

  • posted at:2014-05-25
  • written by:砂月(すなつき)
ぼうりょくきょうしつ
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1976年
公開日:1976年7月1日 併映「暴走の季節」
監督:岡本明久
企画:安斉昭夫 坂上順
脚本:神波史男 奥山貞行 岡本明久 福湯通夫
撮影:中島芳男
音楽:菊池俊輔
挿入歌:「恋のテディーボーイ」クールス
美術:中村修一郎
録音:長井修堂
照明:川崎保之丞
編集:田中修
記録:山内康代
助監督:福湯通夫
擬斗:日尾孝司
スチール:藤井善男
進行主任:松本可則
装置:安沢重治
装飾:田島俊英
美粧:入江荘二
美容:石川靖江
衣裳:河合敬一
演技事務:石原啓二
現像:東映化学
出演:松田優作 舘ひろし 南条弘二 山本由香利 安西マリア
アメリカンビスタ カラー 85分

名門校の私立愛徳学園高校は一流大学への高い進学率を誇っていた。文武両道を掲げるこの学園では生徒たちの行動を厳しく管理していたが、それに歯向かっていたのが落ちこぼれの不良グループだった。学園側はそのような生徒を3年C組に押し込み、他の生徒に悪影響を与えないように努めていた。だが数々の事件を起こすことで大量の退学者が出ることを恐れた石黒源之助理事長は、難波周太郎校長と協議した。その結果、溝口勝利を適任者であると判断し担任として迎えることになった。学園に赴任してきた溝口が自己紹介をし黒板に名前を書いていると、顔の横にナイフが突き刺さった。彼はそのナイフを抜くと「どうもありがとう」と呟いた。そして投げ返すとグループのリーダーである喜多条仁の机に命中した。それは溝口流の挨拶だった。

保健体育の教師である溝口は、最初の授業で郊外でのランニングを行った。喜多条たちは遠回りをしてサボったが、行動を見抜いていた溝口は校門で待ち構え、彼らにグランドを十周走るように命じた。その後も喜多条たちが騒ぎを起こすと決まって溝口は現れた。溝口への怒りをバイクで晴らして帰宅した喜多条だったが、いつもは何も言わない父親に説教をされた。溝口が家にやって来て、学校で起こったことを洗いざらい喋ったというのだ。父親に殴られた喜多条は、自室に篭るとナイフを手に取ると壁に貼られた家族写真に投げつけた。切っ先は父親の喉元を貫いていた。

授業中に数学教師の坂本昭三郎から注意を受けた喜多条たちは、授業が終わると憂さ晴らしにディスコへ向かった。そこには女友達が連れてきた理事長の娘・石黒ますみの姿があった。源之助は中学から大学まで一貫教育が出来る学園を作り上げようと考え移転計画を進めていたが、その際に4億円の利鞘が発生することになっていた。その話を自宅で偶然耳にしたますみは、父親のことが信じられなくなり非行に走ったのだ。グループの辻伸吾は彼女にシンナーを覚えさせ、処女を奪った。その様子を撮影した写真が石黒邸に送りつけられたことから、学園の名誉に傷がつくことを恐れた源之助は、溝口にネガを取り戻すように命じたのだった。喜多条たちがたむろする倉庫に現れた溝口は、単刀直入にネガを渡せと言った。生徒たちに殴られながらも無抵抗を貫く溝口だったが、そのうちの一発に思わず反応してしまった。立ち尽くす溝口に、喜多条はおもしろくなってきたなと言うとネガを渡した。翌日、校舎の屋上に溝口を呼び出した喜多条は、古い新聞を突きつけた。強烈なパンチを持つ溝口は将来を有望視されたボクサーだったが、大学対抗ボクシング選手権で相手選手が死んだことをきっかけにリングを去ったのだった。

屋台的映画館

しあわせの一番星

  • posted at:2014-05-21
  • written by:砂月(すなつき)
しあわせのいちばんぼし
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1974年
公開日:1974年3月30日 併映「涙のあとから微笑が」
監督:山根成之
製作:樋口清
脚本:石森史郎
撮影:川又昂
美術:森田郷平 横山豊
音楽:高田弘
録音:中村寛
調音:松本隆司
照明:小林松太郎
編集:富宅理一
監督助手:佐光曠
装置:横手輝雄
装飾:宮崎琢郎
衣裳:松竹衣裳
現像:東洋現像所
進行:柴田忠
製作主任:池田義徳
主題歌:「しあわせの一番星」浅田美代子
挿入歌:「赤い風船」浅田美代子
・・・:「愛の十字架」西城秀樹
・・・:「薔薇の鎖」西城秀樹
・・・:「お手やわらかに」夏木マリ
・・・:「霧雨の人」篠ヒロコ
衣裳協力:ヤナセ
出演:浅田美代子 篠ヒロコ ジャネット八田 左とん平 夏木マリ
アメリカンビスタ カラー 86分

中学を卒業したばかりの久慈美世子は、親元の山梨を離れて鎌倉市にある神山家のお手伝いさんとして働くことになった。長い列車の旅を終えた彼女が鎌倉駅を後にして目的地に向かっていると、「西城秀樹」と書かれた大きな看板に目が釘付けになった。そこは午後2時半から行われる「歌うワンマンショー」というテレビ番組の公開収録会場だったことから、秀樹の大ファンである美代子は迷わず列に並んだ。ステージを満喫した美代子が神山家を訪ねると、中では嵐が吹き荒れていた。主人の周造は他人を信じず金に執着するガンコ親父で、男手一つで育ててきた未婚の娘の夕子が妊娠したことが原因で親子ゲンカをしていたのだ。夕子の恋人は小さなおでん屋を経営する長谷川武という青年だったが、飲食業の経営は難しいことから娘を苦労させたくない親心で反対したのだ。今まで一度も口答えしたことがない夕子もさすがに耐えられずに家出をしたのだが、そんな一大事にやってきたのが美代子だった。

神山家の二階は、OLの明石沙織と横浜のクラブに勤めるジャネット三原が間借りしていた。美代子の仕事は、主に周造の身の回りの世話と彼女たちの食事の支度だった。この家には家電製品がないことから、掃除や洗濯は手作業で行わなければならなかった。新しい生活に慣れてきた頃、庭で洗濯をしているとクリーニング屋の店員がジャネットの衣服を届けにやってきた。美代子はその店員の顔に驚き、持っていた洗濯物をおもわず落としてしまった。憧れの秀樹そっくりなのだ。その東条英雄という青年と話しているうちに彼も出身地が山梨ということがわかり、お互いに打ち解けて行った。

ある日、周造は散歩の途中でスリに遭い、三万円入りの財布を掏られてしまった。思わぬショックで寝込んでしまったが、ふと競艇場に行くことを思いついた。だが来てみたものの要領がわからず、予想屋の言いなりになって大損した。頭に来た周造が予想屋に噛みついていると、見覚えのある顔が通り掛った。その男性は巡回中だった元部下の佐近哲平という警視庁三課の刑事だった。周造は懐かしさのあまりこれまでに起こったことを包み隠さず話したが、それを聞いた哲平は驚きを通り越してあきれた。スリ係を30年勤め上げた刑事長が掏られるなんて。警察に被害届を出すことは元刑事である周造のプライドが許さなかった。そこで思いついたのが競艇場だった。その昔、巡回中に哲平に騙されて舟券を買い1万円ばかり儲かったことが忘れられなかったのだ。話しているうちに彼が職務中にも関わらず今日も舟券を買っていることを知り怒鳴りつけた。だが他に頼りになる者がいなかったため、渋る哲平にレースの予想をお願いしたのだった。すると二人の前の席に美人が座り、哲平は一目惚れした。その女性はジャネットで、神山家に住んでいることを知ると予想を引き受ける代わりに紹介して欲しいと周造に頼み込んだ。夜はクラブの会計として働いている彼女だったが、昼はスリとしてこの場所を狩場としていた。

屋台的映画館

ドカベン(1977年 鈴木則文監督)

  • posted at:2014-05-10
  • written by:砂月(すなつき)
どかべん
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年4月29日 併映「恐竜怪鳥の伝説」「池沢さとしと世界のスーパーカー」
監督:鈴木則文
企画:太田浩児
原作:水島新司
脚本:掛札昌祐
撮影:出先哲也
録音:宗方弘好
照明:川崎保之丞
美術:藤田博
編集:田中修
助監督:森光正
記録:宮本衣子
擬斗:日尾孝司
柔道指導:池内憲二
スチール:加藤光男
進行主任:志村一治
装置:五十嵐靖治
装飾:住吉久良蔵
美粧:宮島孝子
美容:福原精吾
衣裳:石原啓二
演技事務:
現像:東映化学
音楽:菊池俊輔
主題歌:「がんばれドカベン」こおろぎ'73
・・・:「ああ青春よいつまでも」こおろぎ'73
協力:ナイル野球用品 株式会社鷺宮製作所 週刊少年チャンピオン
出演:橋本三智弘 永島敏行 高品正広 山本由香利 渡辺麻由美
シネマスコープ カラー 84分

私立明訓高校の校門付近では早朝から騒動が起きていた。まともに勝負しては太刀打ち出来ない運動部が一致団結して、2メートルはあろうかという大柄な男子生徒の岩鬼正美を叩きのめそうとしていたのだ。そんなことも知らずにそこへ駆け込んで来たのはずんぐりむっくりな転校生で、岩鬼とぶつかったにも関わらずビクともしなかった。転校生は、はずみで落とした鞄が岩鬼に踏んづけられているのを見て「あっ、弁当」と思わず漏らしてしまった。それを聞いた岩鬼は、自分がコケにされていると思い込み殴りかかった。だが転校生はひょいと交わすと、失礼しますと挨拶して立ち去った。転校生の名は山田太郎といい、岩鬼と同じクラスだった。昼休みの時間となり、山田が弁当を広げるのを見て岩鬼は驚愕した。30センチ四方はありそうな自分の弁当箱より一回り大きいのだ。何でも自分が一番でなければ気が済まない岩鬼は、帰りにグランドへ来いと怒鳴りつけた。

岩鬼が山田との決闘の場所に選んだのは、野球の練習場だった。部員たちが練習出来ずに困っているところへやってきたキャプテンでエースの長島徹は、岩鬼がピッチャーズプレートを下駄で踏んでいることに怒り、出て行けとぶん殴った。騒ぎを知って走ってきた山田は、脱いだ制服の上着でプレートを丁寧に拭き、決闘騒ぎを起こしたのは自分のせいだから許してくださいと頭を下げた。一方、怒りの収まらない岩鬼は拳で勝負をつけようとしたが、そばで見ていたソフトボール部キャプテンの朝日奈麗子は野球で勝負をつけるのがいいのではないかと提案した。そんな馬鹿馬鹿しい球遊びにつきあってられるかと呆れる岩鬼だったが、大好きな夏子が麗子に賛同したことであっさりと了承した。ルールは長島が岩鬼と山田に3球ずつ投げ1球でも打てた方か勝ち、というものだった。岩鬼、山田ともに空振りの三振だったが、長島は山田のスイングに異様さを感じていた。全ての球種をストレートで投げ込んだのだが、ボールは山田のスイング後にドロップのような変化をした。しかも彼は木のバットではなく、鉛入りのマスコットバットを使っていたのだ。後日、山田に不意打ちをかけてボールを投げた。そのときに見せた野球で培われたとしか思えない身体能力を見抜いた長島は、俺の球を受けてくれと言ってキャッチャーミットを渡した。現在の野球部には長島の変化球を捕ることが出来るキャッチャーがいないのだ。だが山田は野球は出来ないと断わった。

長島から野球部への勧誘を受けた山田だったが、彼はそれどころではなかった。明訓高校には弱小の柔道部があり、主将のわびすけから部の立て直しを先に頼まれていたのだ。山田は部員にならない代わりに、レスリング部からスカウトを受けた丹下を連れ戻すと約束したが、そのことを知った岩鬼が先回りしたことで話がややこしくなり、丹下は重傷を負った。責任を感じた山田は、まず他の運動部の物置と化している部室の片づけから始め、破れた畳を長屋に持ち帰った。山田の実家は畳屋で、畳職人の祖父と妹のサチ子との三人暮しだった。祖父譲りの技術で畳の修復を終えると柔道部に入部した。

屋台的映画館

犬神の悪霊

  • posted at:2014-05-05
  • written by:砂月(すなつき)
いぬがみのたたり
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年6月18日 併映「新女囚さそり 特殊房X」
監督:伊藤俊也
企画:天尾完次 安斉昭夫
脚本:伊藤俊也
撮影:仲沢半次郎
録音:小松忠之
照明:小林芳雄
美術:桑名忠之
音楽:菊池俊輔
編集:戸田健夫
助監督:馬場昭格
記録:山内康代
擬斗:日尾孝司
スチール:遠藤努
進行主任:松本可則
装置:井保国夫
装飾:米沢一弘
美粧:入江荘二
美容:石川靖江
衣裳:河合啓一
演技事務:石川通生
現像:東映化学
協力:室生赤目青山国定公園 青蓮寺レークホテル 三重県名張市 北品川総合病院
人形:吉徳大光
舞踏協力:田中泯 村上クラーク 八桑みどり 土屋大陸 前田正徳 徳田ガン 辻征宣 中岡一貴 鴨川てんし 赤穂善計
舞踏製作:早川洋子
出演:大和田伸也 山内恵美子 長谷川真砂美 泉じゅん 三谷昇
シネマスコープ カラー 103分

人里離れた久賀村。そこには大量のウラン鉱床が眠っていると噂されていた。その噂を立証するために、東日開発のウラン技師・加納竜次は仲間の安井と西岡とともに村へ入った。剣持剛造が所有する山の奥に進むにつれて計測器の針が跳ね上がったため、三人は宝物が埋まっている確証を得た。そのとき、西岡がジープの運転を誤って道路脇にある小さな祠を壊してしまった。何事もなかったかのように立ち去ろうとしたジープの前に犬が立ち塞がり咆え続けたが、西岡はどうせ逃げるだろうと考えてスピードを緩めなかった。犬の体は宙に舞った。

半年後の晩秋、加納は剛造の娘・麗子と村の神社で挙式した。三三九度の儀式で加納が杯を口に運ぼうとしたとき、少年が投げた石によって妨害された。少年は垂水勇という小学生で、西岡が撥ね殺した犬の飼い主だった。事件を知った姉のかおりは彼を激しく叱責したが、事情がわかると私もついていくから麗子に謝って欲しいと諭した。犬神憑きの家系として忌み嫌われている垂水家だったが、幼なじみの麗子だけはそんなことはお構いなしに仲良くした。だが同じ人を好きになってしまったため、麗子からの招待を受けたが断わったのだった。麗子と加納が東京へ出発する日、かおりは二人が乗る車を見送りに来たが、剛造はアクセルを踏む足を緩めようとはしなかった。

東京で行われた披露宴には、ウランが取り持つ縁で繋がった人々が出席した。西岡がスピーチをする番となり、あの日に起きたことを話し始めた。計測器の値が大きくなって大喜びしたこと。すぐに麓へ降りて本社に連絡をしたこと。そして、他に何かがあったことをぶつぶつ呟きだすと顔色が変わり、怯えて震えだした。その後、彼はビルの屋上から飛び降りて死んだ。西岡の通夜が行われた夜、今度は安井が野犬の群れに襲われて死んだ。麗子はきっと久賀村で何かあったに違いないと考え問い詰めると、加納をようやく重い口を開いた。話の一部始終を聞いた麗子は、原因が犬神のたたりだと感づいた。その夜、悪夢にうなされる夫の首に代々伝わるお守りを掛けると、かおりから届いた手紙に釘を打ち込んで私の大事な人には手を出させるものかと誓った。すると今度はかおりの様子がおかしくなり、心配になった加納は医学の力の信じて病院を転々とした。だが専門の医師でも彼女の病状を把握することが出来なかった。

翌年の春、加納は麗子を連れて久賀村の祈祷師を訪ねた。だが犬神の恨みは深く、彼女の体から離れようとはしなかった。東京へ帰りたいという願いも空しく、麗子は加納の腕の中で息を引き取った。疲れ果てた加納が山中をさまよっていると、小さな祠が目に止まった。それはあの祠と同じ場所に新たに設置されたものだった。加納は近くに落ちていた太い木の枝をを手に取ると思い切り振り下ろした。

屋台的映画館

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