まんいんでんしゃ
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1957年
公開日:1957年3月27日
監督:市川崑
製作:永田秀雅
企画:土井逸雄
脚本:和田夏十 市川崑
音楽:宅孝二
撮影:村井博
録音:渡辺利一
照明:米山勇
美術:下河原友雄
装置:大塚武雄
装飾:雲居譲
小道具:神田一郎
背景:清水豊
園芸:高花重孝
工作:田村誠
電飾:横手三四郎
技髪:牧野正雄
結髪:岩掘郁代
衣裳:高岡佐知子
音響効果:花岡勝次郎
移動効果:大久保松雄
スチール:宮崎忠男
俳優事務:奥村裕彰
記録土屋テル子
照明助手:大原正男
美術助手:千田隆
進行係:大橋俊雄
特殊技術:的場徹
撮影助手:浅井宏彦
録音助手:奥村幸雄
助監督:増村保造
編集:中静達治
製作主任:熊田朝男
出演:川口浩 川崎敬三 船越英二 小野道子 笠智衆
スタンダード モノクロ 99分
平和大学の卒業式は、どしゃ降りの校庭だった。本来は講堂でで執り行われる予定だったが、前日の火事で焼失したため急遽会場が変更されたのだ。大学総長は「昨今のごとき雨あり風あり嵐ある社会に巣立って行く諸君にとって、本日ほどふさわしい祝典はまたとないであろう」などとうまいことを長々としゃべっていたが、卒業生の一人である茂呂井民雄は虫歯が疼くのを我慢しながら式典が終わるのを待った。社員講習の日、大日本駱駝麦酒株式会社への就職が決まっている民雄は、午後5時までに講習先である東京本社へ向かわなければならないため、そそくさと荷物をまとめて下宿を後にした。日本には我々が希望を持って座れるような席は何処にも空いてない。その満員電車に乗るためには訳もなく張り切らなくてはだめなように世の中は出来ていると彼は考えていた。いざスーツを着て社会に出てみると、学生時代にはわからなかった世の中の喧騒が見えるようになり、そのおかげで忘れていた虫歯がまた疼き出した。仕方なく歯科に駆け込んだが、待合室は大勢の患者たちで溢れ返っていた。歯の治療を終えた民雄が時間までにやらなければならないこと、それはガールフレンドとの清算だった。百貨店や映画館を回り、嫌いになったわけじゃないが学生時代の生活感情を捨て新しい生活を始めたいと説明すると彼女らは快諾した。民雄がバスを待っていると、一緒に卒業した壱岐留奈がやってきた。岩手県・一関の高校に教師として赴任することになっている彼女も民雄のガールフレンドだった。民雄が新しい生活に出発するわけだから今までの関係を水に流した方がいいと思うと切り出すと、私もそう思うわと留奈は答えた。二人は「さよなら」と言うと軽くキスをして別れた。
4日間に亘る講習が始まり、全国から10人の若者が集まった。だが一般採用されたのは民雄ともうひとりだけで、他の7人はみな縁故関係者だった。退屈な講習が終了し、民雄は尼ヶ崎工場への赴任が決まった。サラリーマンとしての第一日目、満員電車でもみくちゃにされながら通勤した民雄は、午前8時の始業を知らせるサイレンとともに仕事に取り掛かった。机の前には注文伝票がいっぱいに入った篭が置かれていたが、彼はその処理をあっという間に終わらせた。くつろいでいる民雄に気づいた工場長は、何故仕事をしないのかと尋ねた。民雄はもう終わらせたと答えたが、一日の仕事は決まっているのだからそれを規則正しく午後5時までやることが大切だと工場長は説明した。そうでないと会社の合理的運営がスムーズに行かなくなるというのが理由だった。翌日から民雄は工場長の指示通りに仕事をこなすことにした。彼が最初に始めたことは、勤務時間を有効に使うための計算だった。200枚ある伝票を1枚当たり2分4秒で処理すればいいことがわかった。民雄は業務に取り掛かったが、工場の騒音にまたしても虫歯が疼き始めた。
屋台的映画館
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