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金環蝕

  • posted at:2013-10-15
  • written by:砂月(すなつき)
きんかんしょく
大映映画
配給:東宝
製作年:1975年
公開日:1975年9月6日
監督:山本薩夫
製作:徳間康快 伊藤武郎
企画:武田敦
原作:石川達三
脚本:田坂啓
音楽:佐藤勝
撮影:小林節雄
美術:間野重雄 今井高司
録音:信岡長治
照明:渡辺長治
編集:鍋島惇
助監督:後藤俊夫
製作主任:遠藤雅也
配役担当:宮古とく子
アシスタントプロデューサー:高橋正名
出演:仲代達矢 宇野重吉 三国連太郎 西村晃 高橋悦史
スタンダード カラー 155分

昭和三十九年五月十二日、第十四回民政党臨時大会において総裁選挙が行われた。党内最大の派閥を背景にした酒井和明と現総理大臣の寺田政臣との一騎打ちとなったこの選挙は、党を二分した。開票の結果、総数487票のうち248票を集めた寺田が辛勝し再選を果たしたが、記者たちの間では寺田が17億円、酒井が20億円を使ったという噂が流れていた。二十九日に内閣の一部を改造した第三次寺田内閣は三十日に宮中で認証式を終えた。副総理として入閣したのは、寺田の総裁当選に決定的な力となった広野大悟だった。数日後、星野康雄官房長官の秘書・西尾貞一郎が石原商事を訪れた。金融王と呼ばれる社長の石原参吉に返済期限を一年として極秘裏に二億円を用立てて欲しいと願い出たのだった。石原は利息や担保など具体的な話をしようとしたが、西尾は詳細な条件を知らされておらず、答えることが出来なかったため断わった。その日の朝刊には官房長官就任のニュースが一面で扱われており、仮に金を貸したとしてもそれがまともに使われるはずがないと石原は考えていた。彼は社員の荒井と脇田を呼ぶと星野の身辺調査を命じた。石原は荒井たちだけでなく、料亭・春友で下足番を務める小坂老人にも調査を頼み、得られた情報は石原の妾である赤坂芸者の荻乃を通じて受け取ることになっていた。二つの情報を照らし合わせた結果、日時と場所は離れているが、いずれも電力開発株式会社と青山組の幹部が同席していることがわかった。「福竜川ダムか」と石原は呟いた。

電力開発は、北海道から九州の主な川筋に巨大なダムと発電所を建設し、そこで作られたエネルギーを民間会社に売ることによって成り立っている。この資本の95%は政府の出資で、年間400億円の補助金が通産省の予算から支出されている。この国民の血税で成り立っている電力開発総裁の椅子を財部賢三は九月の任期満了を以って明け渡すつもりでいた。その最後の仕事として、懸案となっている九州・福竜川ダムの問題を片付けておこうと考えていた財部は、お膳立てを自分の手でやりたいと役員会で熱く語った。だが資料や見積書など関係する書類が一切用意されておらず、残り三ヶ月の任期ではとても無理だと理事たちから批判された。そんな中、副総裁の若松圭吉は無理であろうとなかろうと総裁はこの事業を悲願として我々に協力を求めているのだから案を業者に提示すべきだと言った。指名願の出ている業者は11社でその中から5社を指名するが、財部は計画通り頼むと担当の中村理事に言った。

石原邸に集まった荒井と脇田は、星野官房長官が二日前の晩に行われた中沢証券主催の赤坂の料亭での宴会に出たあと、ハイヤーで葉山にある別荘に真っ直ぐ乗りつけたという情報を公開した。星野が別荘を手に入れたのが前年の暮れ。時価4000万円と評価されるその別荘の名義は山瀬ミツという66歳の女だった。脇田が横須賀の法務局で調べたところ、昨年までの持ち主は日東電工の原本社長で贈与税はミツの名前で納められていた。日東電工の親会社は竹田建設であることから、石原はミツと星野との関係と星野が誰と会うために別荘へ行ったかを調べるように命じた。「きっと何か出てくるぞ」。石原はにやりとわらった。

屋台的映画館
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斬る(1962年)

  • posted at:2013-03-11
  • written by:砂月(すなつき)
きる
大映(京都撮影所)
配給:大映
製作年:1962年
公開日:1962年7月1日 併映「黒の試走車
監督:三隅研次
企画:宮田豊
原作:柴田錬三郎
脚本:新藤兼人
撮影:本多省三
音楽:斉藤一郎
照明:加藤博也
録音:大角正夫
美術:内藤昭
編集:菅沼寛二
装置:梶谷和男
擬斗:宮内昌平
音響効果:倉島暢
助監督:辻光明
製作主任:橋本正嗣
現像:東洋現像所
出演:市川雷蔵 藤村志保 渚まゆみ 万里昌代 成田純一郎
シネマスコープ カラー 71分

小諸藩士の高倉信吾は、ただなんとなく旅に出たくなり養父の信右衛門に願い出た。信右衛門は藩主・牧野遠江守康哉に伺いを立てると、悲しい運命を背負っているのだから労ってやろうと三年間の条件をつけて許した。信吾の身を案じ、帰りを誰よりも心待ちにしていたのは義妹の芳尾だった。やがて三年が経ち、遠江守のもとへ参じた信吾は、何をして何を見てきたという問いにただ野や山を見てきたと答えた。すると遠江守は、いいことをしたなとにこやかに言った。小諸藩の師範が武道奨励のために水戸講道館の筆頭で新道無念流の使い手である庄司嘉兵衛を招き、試合が行われることになった。嘉兵衛には酒乱の博徒を斬り捨てた罪で一時流浪していたという噂があった。そのような者に皆が打ち据えられたときは、藩の面目が丸つぶれになることも考えられた。危惧は現実となり、御忍びで来ていた遠江守は師範に信吾を出してみよと命じた。小諸藩で一番剣術に縁遠い者が指名されたことで、藩士たちは皆下を向いた。信吾は「三絃の構え」という異様な構えを見せると嘉兵衛は打ち込むことが出来なかった。切っ先が喉元を捉えていたからだ。師範が試合が止めると、迫力に圧されて動けなかった嘉兵衛は敗北を認めた。

信吾が嘉兵衛に勝って以来、池辺義一郎のやっかみが以前とは比べ物にならない程酷くなった。高倉家の隣に住む義一郎は小さい頃から信吾のことを見ていたが、腕前は子息の義十郎の方が上だと信じていた。ところが義十郎の手に負えなかった相手を信吾が倒したことで彼の誇りは脆くも崩れ去った。遠江守に寵愛される信吾の姿に我慢ならなくなった義一郎は、藩士たちに奴は付議密通か筋素性を語れぬ暗い過去を持った貰い児だと吹聴して回ったのだ。その話を偶然聞いた信吾は心を痛めた。ある日、信吾が胸につかえた質問を養父にすると、義十郎が芳尾を嫁に欲しいと言って来たのだが断わったため、それを根に持ってのことだろうと信右衛門は答えた。そして誰が何と言おうとお前はわしの子だと強く言った。遠江守に注意を受けた義一郎は、信右衛門の告げ口のせいで出世の道が断たれたと考えていた。そこで彼は義十郎をつれて高倉家に向かい、芳尾を斬殺したのだった。
 
義一郎に斬られた信右衛門は信吾に出生の秘密を伝えると息絶えた。信吾の母は飯田藩士山口弾二郎の娘・藤子だった。若山という妾が飯田公を虜にしていることを憂いた城代家老・安富主計は、江戸屋敷の侍女として仕える藤子に命じて討たせたのだった。藤子は処刑のために国許へ送られることになったが、飯田公の奥方は彼女の一命を助けたいと安富に相談した。一計を案じた安富は、長岡藩から使者として来ていた多田草司に駕籠を奪って懐妊させて欲しいと願い出た。子供を産ませれば情に絡んで処刑を免れることが出来るのではないかと考えたからだ。一年も経てば飯田公の心は和らぐ。多田はその役目を引き受け、一年後に安富は幸せの暮らしていた二人を捕らえたのだった。だが飯田公の気持ちは溶けなかった。処刑されることになった藤子の討ち手を命じても皆が命を賭して断わった。そんな中、多田が自ら名乗りをあげ役目を買って出たのだった。 怒りに燃える信吾は池部親子を待ち伏せ、恨みを晴らした。その話を聞いた遠江守は、追ってはならんと家臣に命じた。

屋台的映画館

喜劇 一発大必勝

  • posted at:2012-10-06
  • written by:砂月(すなつき)
きげきいっぱつだいひっしょう
松竹
配給:松竹
製作年:1969年
公開日:1969年3月15日
監督:山田洋次
製作:島津清 上村力
原作:藤原審爾
脚本:森崎東 山田洋次
撮影:高羽哲夫
美術:梅田千代夫
音楽:佐藤勝
照明:戸井田康国
録音:小尾幸魚
調音:松本隆司
編集:石井巌
監督助手:大嶺俊順
装置:小島勝男
進行:萩原辰雄
製作主任:吉岡博史
現像:東京現像所
協力:名古屋観光自動車株式会社 知多乗合株式会社
出演: ハナ肇 倍賞千恵子 谷啓 佐山俊二 田武謙三
シネマスコープ カラー 92分

荒木つる代は市内を巡回する路線バスに新人ガイドの指導員として乗り込んでいた。ある日、彼女の父・定吉が同じ長屋に住む杉野源三郎、石川誠、野田松吉の三人とともにカラーテレビの箱を抱えてそのバスに乗って来た。つる代は必死に止めたが、定吉たちは強引に乗り込んでしまったのだ。箱を物珍しそうに見る乗客が何インチかと尋ねると、定吉は確か60インチだったかなと答えた。やがてバスは停留所の焼き場前に到着し、四人は箱をバスから降ろそうとしたが、路肩に足を取られた松吉が滑り落ちてしまった。すると箱も一緒に転がり、中から人の足が飛び出した。

乱暴者のウマは長屋の住民にとって厄介な存在だったが、フグの毒にあたって突然死んだ。身寄りのないウマを不憫に思った日永市保健所の職員・左門泰照は棺桶代を寄付したのだが、四人はうれしさのあまりその金を使って祝杯を挙げたのだ。そこへやってきたのは、顔中にヒゲを蓄えたウマの友人だった。事情を知ったヒゲ男は「お前ら、ウマを殺しやがったな」と凄んだ。彼は一生懸命言い訳する四人をうるさい黙れと一喝し、骨壷の骨をすり鉢で粉にし始めた。そしてそれに水と醤油を加え、ウマの仕返しだと言って男たちに無理やり飲ませたのだ。おかわりはいるか?というヒゲ男の言葉に恐れをなした四人は家を飛び出し、長屋はパニックに陥った。

翌日、嘔吐と下痢で苦しむ定吉たち四人の姿を見た左門はコレラを疑い、ボルネオ帰りで不潔の塊のヒゲ男が感染源だとして対策を考えていた。その頃、御大と呼ばれることを好んでいたヒゲ男は、長屋を出て行く気になっていた。その話を聞いた杉野たちが御大のもとへ行くと、彼はウマの持ち物を処分してその代金は適当に使って欲しいと言った。すると互助組合・白菊会の会長を務める杉野は、喜んでその代金を寄付金として会計に繰り入れると答えた。住民から冠婚葬祭や旅行の積立などのために会費を徴収していることを知った御大は、ウマのために御影石の墓を立ててやりたいと切り出した。そして俺が全額出してもいいんだが、それじゃあ長い間親戚付き合いしていたあんたらの気が済まねえよなあと猫なで声を出した。杉野たちがグズグズしていると、ウマ殺しの件を警察に垂れ込むぞと凄んだ。 御大の部屋にやってきた左門は医者のいうことを聞いて欲しいと頼んだが、彼は出て行くといって聞く耳を持たなかった。そこで左門は表から封鎖するという強硬手段に出たのだ。だが御大は家を破壊して外に出ると大暴れした。そして杉野から手切金の会費全額を受け取ると、骨がひとかけらもねえんだから墓は立てられねえわな言って出て行った。

一年後、白菊会では一泊二日の温泉旅行が行われることになった。バスは旅館に向けて出発したが、その途中の観光地で御大と遭遇してしまい、ガイドを務めるつる代はそれが悪名高い男だと知らずにバスに乗せてしまった。旅行は始終御大に振り回され、皆疲れ果ててしまった。そしてつる代もバスの中で眠り込んでしまい、大阪で降りるはずだった御大をまた長屋に連れて来てしまった。

屋台的映画館

逆襲大蛇丸

  • posted at:2012-05-02
  • written by:砂月(すなつき)

ぎゃくしゅうおろちまる
新東宝
配給:新東宝
製作年:1955年
公開日:1955年1月29日
監督:加藤泰
企画:安達英三郎
脚本:賀集院太郎
撮影:平野好美
音楽:高橋半
美術:鈴木孝俊
照明:佐藤快哉
録音:志木田隆一
編集:河合勝巳
助監督:豊田栄
特殊技術:新東宝特殊技術
製作主任:河崎新太郎
出演:大谷友右衛門 若山富三郎 田崎潤 嵯峨三智子 新倉美子
スタンダード モノクロ 71分

永禄七年秋、越後・柏崎城では鯨波将監照忠が夜な夜な悪夢にうなされていた。嵐が吹き荒れるその夜の悪夢はいつもの児雷也ではなく、亡霊となった尾形弘澄が照忠の命を取りに来るというものだった。うなされて目覚めた照忠は板をはめたように堅くなった肩を腰元に揉ませようとしたが、彼女の姿はいつの間にか蝦蟇に変っていた。驚いた照忠は配下の者を集めて大騒ぎしていたが、そこへ現れたのは大蝦蟇に乗った児雷也こと尾形周馬弘行だった。児雷也は、汝らの一命は我が掌中にあるも同然だと言った。照忠は、多賀谷家茂との合戦でともに戦った周馬の父・弘澄を主君・足利晴氏に讒訴し、追討令を受けて尾形家の領地である更科を奪ったのだ。児雷也は、殺さずに何処までも苦しめてやるのだと言い残すと高笑いしながら姿を消した。その頃、信濃・諏訪城では児雷也対策の評議が行われていた。家老の一人は、不動明王の利剣・朝霧丸があるから大丈夫だと言った。朝霧丸は妖術に立ち向かうとき不思議な力を発揮すると言い伝えられていたが、その一振りで敵う相手だとは到底考えられなかった。そこへ口を挟んだ遠山弓之助は、鎌倉管領家の足利義輝公に鯨波家追討の令状を申し出るべきだと主張した。家老たちは反対したが、尾形家再興への誠意を見せなければ周馬の怒りは収まらないだろうと弓之助は言った。

婚儀を控えた周馬の妹・深雪は針木峠にある尾形家の残党の隠れ家へ行き、兄にこのことを話したが、周馬はそんな話は信じられないし、たとえそれが本当だとしても諏訪の計略に違いないと言って聞く耳を持たなかった。弓之助の熱意に心を動かされ、管領家は追討令書を出した。鎌倉を出立した一行は心晴れやかに諏訪への道中を楽しんでいたが、吊橋に差し掛かったところで突然の雷光が彼らを襲った。そして吊橋は大蛇に姿を変わると弓之助たちは振り落とされ、谷底へ転落して行った。大蛇の正体は、大蛇丸こと剣ヶ岳の大蛇太郎だった。大蛇丸の手下たちは気絶した弓之助のもとへ駆け寄り、懐から追討令書を探し出した。そして用のなくなった一行を次々と川へ放り込んだのだった。蝦蟇に姿を変えた周馬は深雪への恩義を返すために弓乃助を助けた。彼が管領家から追討令書を受けてきたことを知った周馬は血相を変えて見せろと迫ったが、山賊に盗られたことがわかると酷く落胆した。

鯨波家に出向いた諏訪家の家老で弓之助の父・多聞之助は、照忠の子息と明科姫との婚礼を破談にしようと持ちかけたが、そこへ追討令書を持ったもう一人の多聞之助が現れた。正体を明かした大蛇丸は、照忠に多聞之助の計画をすべて話したのだ。照忠は裏切られた諏訪家に復讐しようと画策していたが、そのためには大蛇丸の力がどうしても必要だった。そこで大蛇丸は力を貸すための条件を出した。彼は明科姫と名刀・朝霧丸、そして日本全国にある山の支配権を要求した。頭を悩ます照忠だったが、野望を達成させるには致し方なかった。照忠は盗賊一味に朝霧丸を盗み出す依頼をすると、諏訪家に夜討を掛けた。

屋台的映画館

キサラギ

  • posted at:2011-10-14
  • written by:砂月(すなつき)
きさらぎ
「キサラギ」フィルムパートナーズ(ミコット・エンド・バサラ=東芝エンタテインメント=テレビ東京=キングレコード=読売広告社=東映チャンネル=東映ビデオ=YAHOO! JAPAN=PARCO)
配給:ショウゲート
製作年:2007年
公開日:2007年6月16日
監督:佐藤祐市
エグゼクティブプロデューサー:三宅澄二
Co.エグゼクティブプロデューサー:加藤鉄也
プロデューサー:野間清恵 望月泰江 井口喜一
共同プロデューサー:宮下史之
原作:古沢良太
脚本:古沢良太
原案協力:48BLUES
企画:野間清恵
撮影:川村明弘
音楽:佐藤直紀
音楽プロデューサー:平川智司
主題歌:「キサラギ」ライムライト
挿入歌:「ラブレターはそのままで」如月ミキ
技術プロデューサー:佐々木宣明
美術プロデューサー:杉川廣明
録音:島田隆雄
照明:阿部慶治
映像:高梨創
編集:田口拓也
VFXスーパーバイザー:野崎宏二
ラインプロデューサー:鈴木勇
キャスティング:杉野剛
助監督:本間利幸
出演:小栗旬 ユースケ・サンタマリア 小出恵介 塚地武雅 香川照之
アメリカンビスタ カラー 108分

永遠の清純派グラビアアイドル・如月ミキが自殺してから早一年が経っていた。1周忌追悼会は「ミキちゃんを応援する掲示板」へ書き込んだ一熱狂的ファンの提案がきっかけとなって実現化した。

2月4日、ファンサイトの管理人で追悼会の幹事を担当した家元は、まだ見ぬ掲示板の住民たちを心待ちにしながら準備に取り掛かった。会場となったその部屋は、家元が大家と交渉し快く貸してくれたビルの最上階(天国の如月ミキに一番近い場所で)だった。そこへ最初にやってきたのは、お菓子作りが趣味の安男だった。ところが彼は腕によりをかけた自慢のアップルパイを時間潰しに使ったコンビニに忘れてきたことに気付き、取りに戻った。次に現れたのは、「如月ミキを愛する気持ちは誰にも負けないつもりなんで、ヨロシク」と七回も連投したスネークだった。家元はミキへのアツさを感じていたが、それはスネークが単にパソコン操作を誤っただけだった。三番目に現れたのは、男らしい文章を書くオダ・ユージだった。理想のハンドルネームが思い浮かばず、たまたまテレビに出ていた俳優の名前を安易な気持ちで書き込んでしまったことを後悔していた。追悼会は彼の提案で始まった。オダ・ユージは家元のラフな格好を指摘した。家元は気楽なパーティを予定していたが、喪服を着たオダ・ユージの真意は違っていた。亡くなった人に対する真摯な気持ちがあるのならば、それに相応しい服装があるはずだと主張するとスネークもそれに同調した。迫力に気圧された家元は、服を着替えるために出て行った。

家元が戻ると部屋は異様な雰囲気になっていた。安男が服装のことでスネークに説教され、部屋の奥には見知らぬ中年男が立っていた。オダ・ユージたちが大家だと思い込んでいた男を家元は一度も見たことも無かった。男は言った。「いちご娘です」。参加者五人が揃い、追悼会は穏やかに始まったように見えた。ところが今度は安男が異議を唱えた。一人だけトレンディな格好をしていることに抵抗を感じていたのだ。彼は建物の近所にある洋服の青山で喪服を買う、喪服でなければ盛り上がれないんだと叫びながら出て行った。そんな安男を気にも留めず、家元のミキちゃんコレクションが公開された。デビュー前のグラビアや直筆の手紙、そしてイベントの写真に一同は盛り上がった。しかしそれは次第に涙へと変わっていった。一年前の2月4日にミキは自殺を図った。オダ・ユージはそのニュースを知ったときからミキの死に疑問を持っていた。新聞に載ったその原因は仕事上での悩みということになっていたが、自殺する間際まで見せていた笑顔を考えると納得できなかった。そこで彼はある仮定を口にした。「自殺じゃないとしたら・・・」。

屋台的映画館

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