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亡国のイージス

  • posted at:2008-05-28
  • written by:砂月(すなつき)
ぼうこくのいーじす
AEGIS ASSOCIATES(日本ヘラルド映画=松竹=電通=バンダイビジュアル=ジェネオン エンタテインメント=IMAGICA=TOKYO FM=産経新聞社=デスティニー)
配給:日本ヘラルド映画=松竹
製作年:2005年
公開日:2005年7月30日
監督:阪本順治
製作:坂上直行 久松猛朗 千野毅彦 住田良能
企画:小滝祥平 遠谷信幸
エグゼクティブプロデューサー:伊達寛 川城和実 長瀬文男 北川淳一 佐倉寛二郎
プロデューサー:古川一博 河野聡 伊東森人 内藤和也 椎井友紀子
アソシエイトプロデューサー:森谷晁育 加藤悦弘 井川浩哉 鈴木尚 山本淳子
原作:福井晴敏
脚本:長谷川康夫 飯田健三郎
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
音楽プロデューサー:高橋良一
撮影:笠松則通
美術:原田満生
録音監督:橋本文雄
照明:石田健司
整音:クリス・デイヴィッド テリー・ロッドマン
録音:阿部茂
編集:ウィリアム・アンダーソン
スクリプター:今村治子
助監督:中川裕介
俳優担当:豊山有紀
プロダクションマネージャー:小林誠一郎
製作担当:秋枝正幸
出演:真田広之 中井貴一 寺尾聰 佐藤浩市 勝地涼
シネマスコープ カラー 127分

太平洋での訓練航海を行う海上自衛隊イージス護衛艦・いそかぜには海上訓練指導隊(FTG)の隊員が14人乗り込み、荷物が置かれた倉庫には見張りが立つ程の態勢が取られていた。その様子に皆不安を感じていたが、仙石恒史先任伍長はそれだけ厳しく審査するんだろうとさして気にも止めなかった。だが事件の予兆は魚雷訓練中に発生した。切れるはずのない魚雷を繋いだロープが切れ、その下にいた菊政克美二等海士が下敷きになって即死したのだ。事故が発生したにも関わらず、いそかぜは東京湾に向かうことになった。杉浦丈司三等海佐から重要な訓練だから変更は出来ないと言われ、その判断に納得行かなかったのは仙石だった。入港して遺体を引き渡すことを優先するのが当然だと考えていた仙石は、宮津弘隆副艦長と話をつけようとした。小競り合いをする二人のもとに現れた宮津は、事実を知ることはその重さを我々と共有することだが覚悟はあるかと静かに言った。すると仙石は、専任伍長として船で起こっている全てを知る義務があると答えた。

宮津の代理として山崎謙二二等海尉が現状を仙石に説明した。今回乗船した集団はFTGではなく、防衛庁情報局(DAIS)という非公開情報組織だった。いそかぜには特殊工作員が潜入しているという情報が既に入っていたため、彼らは身分を偽って乗り込んだのだった。工作員はアメリカ軍が開発し嘉手納基地からの移送中に奪われたGUSOH(グソー)と呼ばれる神経ガスを持ち込んでいた。1リットルで東京が潰滅する程の威力を持つ化学兵器を持ち込んだのは、仙石が親しくしていた如月行一等海士だった。首謀者は某国対日工作の指導教官だったホ・ヨンファで、少年時代に拘束された如月は彼によって工作員としての教育を受けたのだ。現在、ヨンファたちは潜水艇で接近し、如月の行動開始とともにいそかぜを占拠する計画を立てていた。GUSOHの奪還とヨンファの拘束を同時に行うためには、寄港せず待つしか方法がなかったのだ。話を聞き終えた仙石は、わからないと言った。任務はどうあれ菊政を放っておくことは出来ないのだ。すると宮津は、彼の死は事故ではないと言った。宮津の隣にいた溝口哲也三等海佐は、一人の防衛大生が殺されていると言いながらアタッシェケースから論文を取り出した。その論文のタイトルは「亡国の楯(イージス)」だった。その思想に興味を持ったヨンファは防衛大生に近付こうとしたが溝口たちの動きを察知し、事故に見せかけて殺害すると姿を消したのだった。仙石は衣笠秀明艦長がこのことを知っているのかと宮津に聞いたが、彼は口を噤んだ。艦長は既に殺されていたのだ。

如月はいそかぜの艦内を爆破し10分以内に機関を停止して総員が離艦しなければ船を沈めるという声明を出した。扉に爆薬が仕掛けられたことで艦内を自由に移動することが出来なくなっていたが、如月を説得することに自信を持っていた仙石は点検のために増設されたハッチを使って内部に侵入した。如月の前に丸腰で立った仙石は、宮津や溝口から聞いたことを彼に話し、おとなしく投降せよと説得を始めた。ところが如月は、溝口が首謀者のヨンファであり、宮津やDAISは工作員の仲間だと言った。彼こそが宮津たちの叛乱を阻止するために派遣されたDAISの二曹だった。GUSOHが搭載されたミサイルの照準は、東京首都圏内に設定されていた。

屋台的映画館
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おどるだいそうさせんざむーびーつーれいんぼーぶりっじをふうさせよ
フジテレビジョン=INP
配給:東宝
製作年:2003年
公開日:2003年7月19日
監督:本広克行
製作:村上光一
企画:宮内正喜 永田芳男
エグゼクティブプロデューサー:亀山千広
プロデューサー:臼井裕詞 堀部徹 安藤親広 石原隆 高井一郎
脚本:君塚良一
音楽:松本晃彦
主題歌:織田裕二 「Love Somebody[CINEMA Version Ⅱ]」
撮影:藤石修
照明:加瀬弘行
録音:芦原邦雄
美術製作:河井實之助
美術監督:梅田正則
美術デザイナー:青木陽次
編集:田口拓也
キャスティングプロデューサー:東海林秀文
ラインプロデューサー:羽田文彦 村上公一
監督補:長瀬邦弘
助監督:河合勇人
制作担当:松岡利光 曳地克之
出演:織田裕二 柳葉敏郎 深津絵里 水野美紀 ユースケ・サンタマリア
シネマスコープ カラー 138分

警視庁副総監誘拐事件から5年が経った2003年。かつては空き地が広がっていた台場も再開発で一大観光名所に姿を変えた。その一角にある湾岸署は観光案内や交通整理など多忙を極めていた。そんな中、港湾地区では客船・ふじ丸がテロリストに乗っ取られた。という想定で警視庁の公開訓練が行われ、犯人役には湾岸署の署員が抜擢された。今回の訓練は実弾を使用しないこと以外、本番と同条件で行われることになっていたが、SAT(Special Assault Team=警視庁特殊部隊)中隊長・草壁の高圧的な言動に、恩田すみれ巡査部長は頭に来ていた。そして和久平八郎指導員の「思いっきり抵抗してやりゃあいいじゃねえか」という言葉に触発された青島俊作巡査部長は、SAT攻略作戦を決行した。内に突入したSATの隊員たちは青島の作戦にはまり、次々と捕獲されて行った。その一方で草壁はテロリストグループの巣窟に乗り込み閃光音響手榴弾を使用した。閃光と煙幕、そして音響が室内を覆い犯人たちを制圧した。ところが煙の中から青島が現れ、草壁のこめかみに銃を突きつけたのだった。今回の訓練は犯人側が勝利で終了した。この結果に立腹した副総監は、湾岸署の全署員に対して減俸を言い渡したのだった。

青島は体の奥から燃えたぎるような事件に飢えていた。ある朝、婦女暴行事件があったことを聞いてやってきた青島は、被害者の女子高生から事情を聞いた。犯人は彼女を後から押し倒し、首筋に噛み付いたのだ。そこには吸血鬼の牙が刺さったような痕が残っていた。その後、犯人は何もせずに逃げて行ったが、同様の事件が多発していたのだ。これは自分の事件ではないと感じた青島はその場を離れた。すると今度はすみれが力を貸して欲しいと彼を引っ張って行った。盗犯係では連続スリ事件を扱っていたが、その犯人グループは絵に描いたようなアットホームな家族だというのだ。これも自分の事件ではないと感じた青島は、走って出掛けた暴力犯係について行った。湾岸署管内で発生した殺人事件、それは蜘蛛の巣のように張り巡らされた赤いロープに遺体が縛られるという猟奇的な事件だった。

湾岸署に特別合同捜査本部が設置された。特捜本部長には初の女性キャリア・沖田仁美警視正が任命され室井慎次警視正は彼女のサポートに回ることになった。室井は刑事課の入り口に立っていた青島を沖田に紹介した。すると彼女は、「事件は現場で起きているんじゃないのよ。事件は会議室で起きているの。勘違いしないで」と言った。

屋台的映画館

GO

  • posted at:2008-05-15
  • written by:砂月(すなつき)
ごー
「GO」製作委員会(東映=STARMAX=テレビ東京=東映ビデオ=TOKYO FM)
配給:東映
製作年:2001年
公開日:2001年10月20日
監督:行定勲
製作:佐藤雅夫 黒澤満
企画:遠藤茂行
プロデューサー:天野和人 國松達也 出目宏
「GO」製作委員会 製作委員:金民基 木綿克己 青山悌三
「GO」製作委員会 プロデューサー:趙裕哲 古川一博 趙裕燦
原作:金城一紀
脚本:宮藤官九郎
音楽:めいなCo.
音楽プロデューサー:津島玄一
主題歌:「幸せのありか -theme of GO-」The Kaleidoscope
撮影:柳島克己
照明:高屋齋
美術:和田洋
録音:柴山申広
編集:今井剛
スクリプター:工藤みずほ
装飾:大庭信正
擬斗:二家本辰巳
俳優担当:河合啓一
助監督:中村隆彦
製作担当:望月政雄 岩下真司
宣伝プロデューサー:桝林宏明
出演:窪塚洋介 柴咲コウ 山崎努 大竹しのぶ 山本太郎
アメリカンビスタ カラー 122分

高校三年生の杉原はコリアンジャパニーズだったが、日本で生まれ育ったことから本人は他の日本人となんら変わりないと思っている。だが周囲の人たちは皆、彼を「在日」と嘲った。そんなとき、キレた。

三年前、中学生だった杉原は「スーパー・グレート・チキン・レース」を行うことになった。その肝試しとは地下鉄の駅のホームから飛び降りて電車の前を走るというものだった。近づく列車の前に飛び出した杉原は、見届け人である二人目の成功者のタワケ先輩と、同級生のウォンスの前を駆け抜けて行ったのだ。朝鮮民族学校史上三人目の成功者となった杉原が興奮状態が抑えられないまま地上へ出ると、道路ではウォンスが原チャリを吹かして待っていた。三人乗りの原チャリは公道を疾走していたが、すぐさまパトカーに見つかってしまった。空き地に追い詰められ、杉原とウォンスは警察に連行されたが、タワケは持ち前の俊足を生かして逃げてしまった。
警察に呼び出された杉原の父・秀吉は、つかつかと息子に近寄ると顔面にパンチを見舞った。さらに何度もパンチを浴びせると彼は血まみれになり、そんな二人の姿を見てうろたえた警官はすぐに解放した。部屋を出た秀吉は、「今回も家裁にいかなくて済んだろ」と杉原に言った。

秀吉は元ボクサーで、日本ランキング7位という実績を持っていた。その夜、テレビでハワイ特集を見ていた彼は、家族に「ハワイに行ってくる」と呟いた。そして旅行のために国籍を「朝鮮」から「韓国」に変更した。その後、杉原家の玄関にはハワイでの記念写真が飾られ、両親を「パパ」、「ママ」と呼ぶことが義務付けられた。ある日、秀吉は「広い世界を見ろ。そして自分で決めろ」と杉原に言った。「韓国籍」or「朝鮮籍」、選ぶ権利は自分あることに気付いた彼は、初めて人間として扱われた気がした。そして決めた。広い世界を見るために韓国人となり、タバコとケンカを辞めて日本の高校を受験することにした。その話を聞いた秀吉は、好きにしろと言った。

高校のバスケ部に入部した杉原だったが、対外試合で相手選手に侮辱され、キレた。この一件で彼はバスケ部をクビになったが、校内に名前が知れ渡ったことでチャレンジャーたちが次々と勝負を挑んで来た。殴るのは嫌だけど殴られるのはもっと嫌だと考えていた杉原は、マルコムXの「私は自衛のための暴力を暴力と呼ばない」という言葉に感銘を受け、革命を起こすことにしたのだ。初めての挑戦者は加藤で、広域暴力団の幹部の息子だった。家に招かれたときは肝を冷やしたが今では日本人唯一の友達となっていた。加藤の18歳を祝う誕生パーティーに招待された杉原は、クラブで踊り狂う人たちを尻目に携帯音楽プレーヤーで落語を聞きながら読書していた。すると少女が隣に座り、話しかけてきたのだ。彼女の不思議な魅力に杉原は心を奪われた。

屋台的映画館

ひみつの花園

  • posted at:2008-05-02
  • written by:砂月(すなつき)
ひみつのはなぞの
東宝=ぴあ
配給:東宝
製作年:1997年
公開日:1997年2月15日
監督:矢口史靖
製作:高井英幸 矢内廣
製作協力:林和男 森本英利 富山省吾 森知貴秀
プロデューサー:堀口慎 天野真弓 金澤清美
脚本:矢口史靖 鈴木卓爾
撮影:岸本正広
音楽:矢倉邦晃
主題歌:「春咲小紅」モダンチョキチョキズ
録音:池田昇
照明:蝶谷幸士
編集:米田美保
キャスティング:田中忠雄
助監督:田村孝蔵
企画:ぴあ ぴあフィルムフェスティバル
製作協力:東宝映画
出演:西田尚美 利重剛 加藤貴子 田中規子 角替和枝
アメリカンビスタ カラー 83分

悪い子ではなかったが良い子でもなかった小学生の鈴木咲子は、生まれつきの顔のせいで小さい頃からいじめられることが多かった。それが影響したのだろうか。彼女は手提げ金庫の中に貯めた小遣いを数えることに至福を感じるようになった。小難しい顔もそのときばかりは子供らしい表情に変わるのだった。その後、小遣いの行き先は金庫から郵便局の口座へと変化したが、今度は貯金通帳を同級生に見せて優越感に浸るようになった。それが人に嫌がられる癖であることに気付いたのは、高校生のときに体験した失恋がきっかけだった。喫茶店に誘われた咲子は「おごってくれるんなら、その分お金ちょうだい」と口走ったのだ。この経験の後から彼女は色恋沙汰に全く縁がなくなり、いつも誰かの周りにいるだけの目立たない女になった。

短大を卒業した咲子は趣味と実益を兼ねた銀行に就職した。毎日お金を数えられることに喜びを感じていたが、半年経ったある日、彼女はふと思った。いくら他人のお金を数えても自分のものになるわけではないことを。自分に向いていると思ったこの仕事もそう考え出すと虚しく思えてくるのだ。いっそ銀行強盗でも入って来ればいいのに。そう考えた午後3時過ぎ、本当に強盗がやってきたのだ。犯人たちは大金と人質の咲子を車のトランクに詰め込むと猛スピードで逃げた。やがて車は山道に差し掛かったが、彼らが選んだのは青木ヶ原樹海へ向かう一本道だった。道に迷ったことに気付き焦った運転手はハンドル操作を誤った。車は谷底へ転落して行った。
大破した車は爆発を起こし、大金が入った旅行用のスーツケースと咲子は湖に飛ばされた。スーツケースに必死にしがみついた彼女は、川を流されようが滝壷に落ちようが決して放そうとしなかった。だが中に溜まっていた空気が抜けて沈んでいくスーツケースを見ると、もうここまでかと観念した。河辺に打ち上げられた咲子はキャンプに来ていた家族に発見され、病院に保護された。一命を取り止めた彼女は家族が見守るベッドで目覚めると口を開いた。「労災、効くかなあ」。担当医の話で折れた骨が治るまでに三ヶ月、歩けるようになるにはさらに二ヶ月のリハビリが必要であることを知った。

奇跡的に助かった咲子は一躍、時の人となった。マスコミのタレント並の扱いに戸惑ったが、その一方で様々な人たちがお見舞いに来てくれることに悪い気はしなかった。だが、みんながチヤホヤしてくれたのは最初のひと月だけで、それ以降は取材もぱったりと止んだ。長い入院生活を送った上に退院してからも自宅でゴロゴロする毎日を続けたことですっかりサボり癖がついてしまい、職場に復帰しても仕事が手につかなくなっていた。そんなある日、行内に設置されたテレビでは銀行強盗のニュースが上半期の重大事件として報じられていた。それを見ていた咲子の頭の中に当時の記憶が甦ってきたのだ。5億円はあそこに沈んでいる。それを確信した彼女は生きる目標を見つけたのだった。

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白鳥麗子でございます!

  • posted at:2008-04-24
  • written by:砂月(すなつき)
しらとりれいこでございます
フジテレビ
配給:東映
製作年:1995年
公開日:1995年8月19日 併映「花より男子」
監督:小椋久雄
製作:村上光一 周防郁雄
企画:重村一 堀口壽一
エグゼクティブプロデューサー:松下千秋 中山和記
プロデューサー:小川晋一 石原隆 池田知樹 岩田祐二
ラインプロデューサー:稲田秀樹
原作:鈴木由美子
脚本:両沢和幸
主題歌:「サヨナラは今もこの胸に居ます」ZARD
挿入曲:「帰れソレントへ」新井直樹
技術製作:杉野有充
技術プロデューサー:堀田満之
美術プロデューサー:板村一彦
ハイビジョンバイザー:皆川慶助
照明アドバイザー:本間利明
映像アドバイザー:橋本和司
撮影:福田紳一郎
照明:澤田篤宏
録音:三井登
映像:戸田英男
美術デザイン:柳川和央
編集:田口拓也
音響効果:小西善行
記録:増田ゆみ
助監督:高丸雅隆
製作担当:堀井健一
企画協力:バーニングプロダクション
製作協力:共同テレビジョン
出演:松雪泰子 萩原聖人 小松千春 彦摩呂 河原さぶ
アメリカンビスタ カラー 72分

1977年春、気弱で内気な性格の白鳥麗子は幼稚園に行くといつも園児たちにいじめられていた。ある朝、いつものようにからかわれる麗子を庇ったのは、同じ園に通う秋本哲也だった。それが二人の運命的な出会いだった。「こいつがブス?なんで?カワイイじゃん」。その言葉で麗子は哲也のことを好きになり、彼のことを遠くから見守るようになった。哲也の言葉は麗子を内面から変えるきっかけとなったが、大富豪のお嬢様ということもあって異常なまでに気位が高くなってしまった。いつでも哲也のそばにいたい麗子は、両親の反対を押し切って同じ高校に進んだ。1991年秋、麗子はついに哲也から告白を受けた。だが思わず心にもないことを口走ってしまった。「あなたとわたしとじゃ、どうみても釣り合わないと思わなくって?」。それを聞いた哲也は潔く引き下がった。それからしばらく経った1993年冬、麗子は自らの決意で哲也との同棲生活を選んだのだった。

1995年夏、幾多の困難を乗り越えてきた二人の結婚式が盛大に開かれようとしていた。だが純白のドレスに身を包んだ麗子の心は沈んだままだった。彼女は哲也に重大な隠し事をしていた。数ヶ月前、哲也とともに登校した麗子は、友人の可愛京子が同じ大学の高田多根夫と婚約したという話を聞き、羨ましくて仕方がなかった。そこで結婚式場のパンフレットをさりげなく置いて哲也の気持ちを探ることにしたが、自分たちの力で生活出来るようになるまでは結婚しないときっぱり言ったため、麗子は同じ考えでよかったと強がるしかなかった。だが急遽それが撤回されることになった。麗子の父・正太郎が健康診断を受けたところガンが見つかり、医者からは余命半年と宣告されたのだ。「生きているうちにお前の花嫁姿を見たかった」。そうつぶやく父の願いを叶えるために麗子は哲也に事情を打ち明け、彼はそれならばと快く承諾した。

哲也は贅沢な結婚式など望んでいなかったが、一生に一度のことでもあるし最後のわがままを聞いて欲しいと正太郎に言われ受け入れることにした。世界の白鳥家との結婚を甘く見ていた哲也は、マスコミや日頃付き合いのない親戚が押しかけてくることを予想していなかった。騒動を楽しんでいる麗子に、哲也は何か勘違いしてはいないかと戒めた。二人は口論となり、熱くなった麗子は思わずこの結婚は父のためで哲也のためではないと口走ってしまった。ショックを受けた哲也は、麗子が自分のことを愛していないのではないかと思うようになった。正太郎の診察をした滝本医師は、看護師の手違いでレントゲン写真を取り違えたことを麗子に伝えた。麗子はメイドのうずまきと喜びを分かち合ったが、このままでは結婚式を行う理由がなくなることに気付き、事実を誰にも明かさずに結婚式を強行することにした。

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