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盲獣

  • posted at:2005-03-14
  • written by:砂月(すなつき)
もうじゅう
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1969年
公開日:1969年1月25日 併映「秘録おんな寺」
監督:増村保造
企画:仲野和正
原作:江戸川乱歩
脚本:白坂依志夫
撮影:小林節雄
音楽:林光
録音:須田武雄
照明:渡辺長治
美術:間野重雄
編集:中静達治
助監督:佐々木行夫
製作主任:薮本和男
写真提供:ノーベル書房
現像:東京現像所
出演:船越英二 緑魔子 千石規子
アメリカンビスタ カラー 84分

無名のファッションモデル・島アキは、野心的な写真家・山名の芸術的な意欲に共鳴し進んで仕事を受けた。その写真の個展はかなりの評判を呼んだ。ある朝、山名と次の仕事を打ち合わせるために個展の会場へ足を運んだアキは、そこで奇妙な光景を目撃した。時間が早かったため客はたった一人しかいなかったが、男は壁の写真など見向きもせず、会場の中央に飾った彫刻を両手で撫で回していたのだった。その彫刻は山名の友人がアキをモデルにして作ったものだったが、彼女はまるで自分の体を触られているような感覚に陥った。背筋の凍る思いをしたアキは急いで会場から逃げ出したのだった。数日後、早朝からの仕事でくたくたになったアキは、部屋にマッサージ師を呼んだ。だが来たのはいつもとは違う男だった。アキのことを良く知るその男が彼女の体を揉み始めると、あのときの感覚が甦ってきた。その指は確か、あの彫刻を撫でていた指とそっくりだった。石膏の肌では満足出来ないで生身の体を探りに来たのか、そう思うともうだめだった。アキは金を支払って早く追い返そうとしてバッグの中をかき回した。それを察した男はポケットからビニール袋を取り出し、クロロホルムを染み込ませたガーゼを彼女の顔に押し当てたのだった。アキは抵抗を続けたが、しだいに意識が遠退いていった。

アキは闇の中で目覚めたが、辺りを見回しても何も見えなかった。困惑していると、やっと気が付きましたねと言う声が室内に響いた。男がライトで照らすと部屋の全貌が明らかになった。そこは彼が彫刻のアトリエとして使っている倉庫で、壁には目や口など人間のパーツの造形物が一面に並んでいたのだ。生まれつき目が見えない蘇父道夫は、世の中に溢れる素晴らしいものを想像することしか出来ない自分に憤り、両親を恨んだ。だがいくら恨んでもどうにもならないことに気付いた道夫は、音、匂い、味、触覚の中から楽しみを得ようとした。音は吹きすぎる風のようで物足りず、犬のように鋭くない匂いも駄目だった。食べ物はむやみに腹が膨れるばかり。そう考えると触覚だけが残されたたった一つの楽しみだとわかった。それ以来、彼は手に触れるものを手当たり次第に撫でた。温かくてやわらかい、生きものの手触りが一番楽しかったが、犬も猫も女の体には遠く及ばなかった。マッサージ師になったのは金のためではなく、女の客の体に触りたかったからだった。その頃、死んだ父親が遺した畑が高速道路に引っ掛かり、莫大な資金を得た。それを使って倉庫を手に入れ彫刻を始めたのだった。過去に触った女の体から気に入った部分を選び出して彫刻にした。いつでも撫でて楽しめるように。アトリエを作るのに6年掛かったが、完成した時はうれしくて毎日閉じ篭っていた。だがこのアトリエで満足出来なくなった頃、アキの噂を聞いた。個展に出掛けて自分の手で調べ、彼女が頼むマッサージ屋に入って本当の体に触ったが、評判通りだった。まともに頼んでも来てくれる筈がないと考えた道夫は、母・しのの協力を得てアキを誘拐したのだった。盲目でなければわからない触角の芸術を作りたいと道夫は意気込みを語ったが、アキは頑なに拒んだ。

屋台的映画館
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砂月(すなつき)
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ブログ主はインドア派大分トリニータサポーター

 

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