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地獄の警備員

  • posted at:2009-08-21
  • written by:砂月(すなつき)
じごくのけいびいん
日映エージェンシー=ディレクターズ・カンパニー
配給:アテネ・フランセ文化センター
製作年:1992年
公開日:1992年6月13日
監督:黒沢清
製作:中村俊安
企画:ディレクターズカンパニー
プロデューサー:宮坂進 生駒隆始
脚本:富岡邦彦 黒沢清
音楽プロデュース:岸野雄一
作曲:船越みどり
イメージソング:「THE GIRL FROM HEAVEN」Psycho Hysterics
撮影:根岸憲一
照明:須永裕之
録音:鈴木明彦
美術:清水剛
編集:神谷信武
助監督:佐々木浩久
出演:久野真紀子 松重豊 長谷川初範 由良宜子 大杉漣
アメリカンビスタ カラー 97分

急成長を遂げる総合商社・曙商事に絵画の売買を専門に行う12課が新設された。新入社員の成島秋子は元学芸員ということでスカウトされたのだが、12課に配属された5人の中で絵画に精通しているのは秋子だけ。久留米浩一課長と他の3人は絵画に関しては素人同然だった。いくら美しくても売れなければ意味がないという久留米は絵心がわからず、秋子が好きなオディロン・ルドンの作品を子供の絵だと馬鹿にした。資料室での作業を終え警備室に鍵を返しに来た秋子だったが、窓口には誰もいなかった。困っているところへやって来たのは古株の警備員・間宮だった。秋子は、間宮に鍵を渡すと一礼して仕事場に戻って行った。間宮が部屋に入ると、新人の富士丸が静かに机に向かい社員名簿に挟んであった秋子の写真をじっと見つめていた。

元力士の富士丸は三年前に兄弟子とその愛人を殺して警察に逮捕されたが、精神鑑定の結果、犯行当時は心神喪失状態だったことを理由に無罪となった。だが被害者の遺族は、計画的な犯行だったと異議を唱え再審査の申請をしたのだ。富士丸は既に社会復帰しており、警察側は再逮捕するか検討している状況だった。警備室には間宮と富士丸の他に競馬好きの白井が勤務している。有力筋からの情報を仕入れたという白井の話に乗せられた間宮は競馬にのめり込んだ。白井はそこに付け込み、月が変わる毎に1割5分の利息が増えるという条件で間宮に借金させ、今ではその額が900万円にまで膨れ上がっていた。翌日、白井は出社しなかった。間宮は控室にいる富士丸に注意事項を伝えたが、彼はいつものように無表情だった。控室を出ようとした間宮は、ロッカーから血が流れていることに気付き驚いた。扉を開けると中には無残に折り畳まれた白井の死体が詰め込まれていたのだ。優しく指導する間宮に恩義を感じた富士丸は、白井を排除したのだった。

秋子は人事部長である兵藤哲朗の推薦で入社した。カフェで休息していた秋子のテーブルにやってきた兵藤は、ニューヨークで行われるオークションにセザンヌの「ひびわれた家」が出品されるが、80億円で買うのは高いかと聞いた。秋子がためらいながら高くないと答えると、兵藤はありがとうと言って立ち上がった。12課では高価な絵に手をつけない方針だと秋子が説明すると、これは12課とは関係ない話だと兵藤は言った。80億の資金があれば久留米の方針が変わるのではないかと秋子が尋ねると、兵藤は彼には何も期待していないと言った。

オートロックであることを知らずに入った秋子は資料室に閉じ込められてしまった。警備室に電話したがいつまで経っても警備員は来なかったため、秋子がもう一度電話しようとしたしたそのとき、通常は使用しない古びたドアの方から大きな音がした。

屋台的映画館
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シベリア超特急

  • posted at:2009-08-16
  • written by:砂月(すなつき)
しべりあちょうとっきゅう
水野晴郎事務所
配給:ウイズダム
製作年:1996年
公開日:1996年3月2日
監督:MIKE MIZNO
製作:MIKE MIZNO
製作協力:ウイズダム エクセレントフィルム
プロデューサー:安藤庄平 西田和晃
プロデューサー補:占野茂
原作:MIKE MIZNO
脚本:MIKE MIZNO
撮影:安藤庄平
美術:徳田博
衣装デザイン:コシノ・ジュンコ
英文ダイヤローグ/翻訳:戸田奈津子
監督補:霜村裕
キャスティングプロデューサー:田辺博之
アシスタントプロデューサー:占野茂
選曲:合田豊
録音:塚本達朗
照明:清水達巳
編集:荒川鎮雄
スクリプター:渋谷康子
助監督:山田敏久
ナレーター:油井昌由樹
出演:水野晴郎 かたせ梨乃 菊池孝典 西田和晃 アガタ・モレシャン
アメリカンビスタ カラー 84分

1941年、ヨーロッパ情勢を視察した山下奉文陸軍大将はブタペストからウィーン経由でベルリンへ入り、アドルフ・ヒトラーと会談した。事件は山下が帰国するために乗り込んだシベリア鉄道のイルクーツク-マンチューリ間で起きた。

シベリア超特急一等車には、山下奉文陸軍大将、佐伯陸軍大尉、青山一等書記官の3人の日本人を始め、契丹人女性・李蘭、ウイグル人女性・カノンバートル、オランダ人女優のグレタ・ペーターセン、ドイツ陸軍中佐・ユンゲルス、ソ連空軍大尉・ポロノスキー、ユダヤ系ポーランド人・ゴールドストーン、そして蒙古系ソ連人で車掌のマンドーラ・ジンの10人が乗り合わせていた。イルクーツクから一等は彼らが乗っている車両のみになり、前後の車両に通じる扉は施錠された。各部屋の鍵はそれぞれの乗客に渡されたが、車掌は乗客のプライバシーを考えて合鍵を持たなかった。

月夜を駆け抜ける列車の中で殺人事件が起きた。洗面所から戻った四号室のポロノスキーは、扉に手紙が挟まっていることに気付いた。手紙を読んだ彼は正装をして出かけた。客として部屋に招かれたポロノスキーは酒を飲みながら談笑していたが、急に気分が悪くなり窓を開けた。すると彼は何者かに足首を掴まれ窓の外へ放り出されてしまった。犯人以外はまだこの事件を知らなかった。

青山が廊下を歩いていたとき、一号室の扉が開いていた。ふと目をやると、部屋の中に見知らぬ女性がいた。着ている洋服は同じだったが、顔はどう見ても李蘭ではなかった。李蘭は青山が以前愛した女性と顔が似ていたため、見間違うはずがなかった。彼は車掌を呼び出し確認を求めたが、大勢の乗客の顔を一々覚えていられないと突き放された。青山は山下に相談を持ちかけたが、返ってきた答えは意外なものだった。「人間の第一印象は、必ずしも正しいとは限らない」。

佐伯は車両の異様な雰囲気を感じていた。山下に何かあってはと調査した結果、四号室と六号室からの応答がなかった。佐伯は青山にその話をすると、彼は山下がいる七号室から隣の六号室へ車両の外側を伝って移動した。六号室は内側から鍵がかかっていたがグレタの姿はなかった。ゴールドストーンがいる五号室からは佐伯が四号室へ移動したが、やはり内側から鍵がかかっていたもののポロノスキーの姿はなかった。この騒ぎに駆けつけた車掌は、室内に置かれていた書類を掴むと自分の部屋へ戻って行った。様子がおかしい車掌を問い詰めるために青山と佐伯は車掌室へ乗り込んだが、机に突っ伏す車掌の背中にはナイフが刺さっていた。

屋台的映画館

渋滞

  • posted at:2009-08-07
  • written by:砂月(すなつき)
じゅうたい
サントリー=三菱商事=ニュー・センチュリー・プロデューサーズ
配給:アルゴプロジェクト
製作年:1991年
公開日:1991年4月27日
監督:黒土三男
製作:岡田裕
プロデューサー:藤田義則 笹岡幸三郎
原作:黒土三男
脚本:黒土三男 佐藤峰世
撮影監督:高間賢治
音楽:ケニー・G
美術:丸山裕司
照明:吉角荘介
録音:林大輔
編集:川島章正
記録:白鳥あかね
助監督:大原盛雄
俳優担当:寺野伊佐雄
製作主任:小泉憲彦
製作担当:渡井敏久
アソシエイトプロデューサー:奥田誠治 三賀康隆
出演:萩原健一 黒木瞳 宝田絢子 湯澤真吾 岡田英次
アメリカンビスタ カラー 108分

秋葉原にある家電量販店「ナカウラ電気」の販売課長・藤林蔵は、浦安で妻・春恵、9歳の里美、7歳の大介と暮らしている。今年は販売成績が良かったことから、5日間の正月休みを貰うことが出来たのだ。久しぶりの長期休暇ということもあり、5年ぶりに林蔵の故郷である瀬戸内海の真鍋島に一家で帰省することにした。だがそこに必ず付いて来るのは金の問題だった。ボーナスの一部は既に車のローンと暮れの買い物で使っており、残りを交通費やお土産、お年玉など当てると使い果たしてしまうのだ。春江は心配するが、林蔵は自家用車で移動する手段を選んだ。予定を中止することも考えたが、父親に痴呆が始まっていることで今回はどうしても外せなかったのだ。多少は疲れるが、主な費用はガソリン代と高速道路代だけ。問題は渋滞だったが、朝早く出発しさえすれば問題ないのだ。「大丈夫だ」。林蔵は自分に言い聞かせるように言った。

12月30日早朝、家族を乗せた車は快適に進んでいた。ところが高速道路に乗った途端、渋滞に巻き込まれた。表示板には「新木場-浦安間、渋滞4km」の文字。焦っても仕方がないと高を括ったが、その先の表示板には「渋滞110km」と書かれていた。時間が経てば腹が減る。ストレスが溜まる。トイレに行きたくなる。日は暮れたが車はまだ沼津だった。痺れを切らした林蔵は高速を降りて旅館に宿泊することにした。温泉につかっておいしい料理をたらふく食べ、豪華な旅館で眠るのだ。そう決まると疲れは何処かへ飛んで行ってしまった。だが現実は甘くなかった。年末の旅館もホテルも当然のことながら満室。民宿でも断わられ、車中で一泊することになってしまった。

12月31日。いくらなんでももう混雑は治まっているだろう、そう思って出発した林蔵だったが道路はまたしても渋滞。地図を頼りに裏道を探し出そうとしたが、春恵が戸惑っているうちに交差点を通過してしまった。イライラが頂点に達した林蔵は春恵との間で口論を始めたが、そっちに気を取られて赤信号を見落としてしまった。

屋台的映画館

悲しくなるほど不実な夜空に

  • posted at:2009-07-30
  • written by:砂月(すなつき)
かなしくなるほどふじつなよぞらに
お茶の間クラシックス
配給:ビターズ・エンド=sleepin’
製作年:2001年
公開日:2001年12月8日
監督:宇治田隆史
脚本:宇治田隆史 向井康介 山本裕子
撮影:近藤龍人
音楽監督:松本章
音楽:赤犬+ZerosomeSound
美術:和氣俊之 柴田剛 西尾真生
録音:新井誠 藤野ミチル
照明:向井康介
編集:宇治田隆史
制作協力:PLANET+1
出演:葉月螢 澤田俊輔 古河潤一 小澤義明 前田博通
アメリカンビスタ カラー 63分

職場で大ゲンカをしたあげく退職させられた父・松男。働く気など更々なく仲間と遊び回っている弟・秀和。二人は一家三人暮らしの大黒柱となった加藤龍子の財布を当てにしている。ある日、松男はふらりと入ったレンタルビデオ店で気になるタイトルを見つけた。それは桃月カオリ主演の「奴隷市場4」というアダルト作品で、迷わず借りて帰ったのだが再生して驚いた。どう見ても出演している女優が龍子なのだ。松男は彼女が帰ってくるなりビデオを見せ、どういうことだと問い質した。そしてお前は最低だと殴りつけると出て行けと怒鳴りつけた。

小さなアパートで男二人暮らしとなったが、金が頼れるのは龍子しかいなかった。そこで松男は彼女の居場所を知っている秀和に取りに行かせ、ついでに近況を報告させた。それからしばらくして龍子から電話が掛かり、秀和が待ち合わせ場所に着いても特に用事がない様子だった。そこでホームシックに罹ったのではないかと考えた彼は家に連れて帰ろうとしたのだが、龍子は頑なに拒み続けた。何故なら彼女の収入源はアダルトビデオの出演であり、仮に帰ったとしても再び松男と衝突することは目に見えているからだ。仕事を辞めるとなると次の職を探すのに時間が掛かるのだ。家族間のいざこざはいずれ時が解決すると考えていた秀和は「くだらない」と口にしたが、ビデオ出演がくだらないという意味で受け取った龍子は落胆した。そしてSMやスカトロでもしなければ家計が成り立たないことを説明し、「あんたにそんなことを言われたくない。あんたら私のウンコで食べてるんじゃないのよ」と本音を漏らした。それでも秀和は龍子を連れて帰ろうとしたのだが、彼女は腕を振り払って去って行った。

屋台的映画館

憧れのハワイ航路

  • posted at:2009-07-23
  • written by:砂月(すなつき)
あこがれのはわいこうろ
新東宝
配給:新東宝
製作年:1950年
公開日:1950年4月1日 併映「妻と女記者」4月2日より
監督:斎藤寅次郎
製作:伊藤基彦
原作:サトウハチロー
脚本:八住利雄
撮影:友成達雄
音楽:上原げんと
主題歌:「憧れのハワイ航路」岡晴夫
・・・:「憧れのブルーハワイ」岡晴夫
・・・:「思い出の丘」岡晴夫
美術:加藤雅俊
録音:沼田春雄
照明:秋山清幸
編集:神島婦美子
助監督:松林和尚
合成撮影:天羽四郎
製作主任:鈴木義久
出演:岡晴夫 美空ひばり 花菱アチャコ 古川緑波 清川玉枝
スタンダード モノクロ 78分

小料理屋・宇喜代の二階には、夜間中学の英語教師・岡田秋夫と画家の山口五郎が下宿していた。山口は東京都建設課が募集する公会堂新設設計図案の懸賞に掛かり切りになっていたが、岡田がギターを奏でて歌い始めると彼は決まって音を立てずに階段を下りてきた。岡田は二人の父親のこと思いながら歌うのだ。

ハワイで生まれた岡田は父親と幸せに暮らしていたが、中等教育を受けるために日本へやってきた。しかし戦争が始まり、戦災で彼の世話をしていた叔父と叔母を亡くした。さらに父親の消息もわからなくなり、彼は一人ぼっちになった。そんな時、岡田に手を差し伸べたのは音楽教師の春元だった。岡田は春元を父親のように慕い、その影響で音楽に携わるようになった。その話を山口から聞いた宇喜代の女将・みきは、自分の身の上を岡田に話した。夫に先立たれたみきは姑からいじめられる毎日を送っていたが、溜まらず二人の子供を残したまま家を飛び出した。その後、松吉と結婚したが、今になって子供の事が頭から離れなくなり後悔ばかりしていた。

支配人に無断で商売しキャバレー・パシフィックを追い出された花売り娘・君子は、縄張りを荒らしたという理由でチンピラから追いかけられていたが、ちょうどそこを通りかかった岡田に助けを求めた。暴力が苦手な岡田は、学校で貰ったばかりの月給を支払って解決することにした。下宿に君子を連れ帰った岡田は、みきに事情を説明して店内で花を売る許可を貰った。しかし客は誰一人買おうとはしなかった。そこで君子が歌を歌うと花はあっと言う間に完売した。うれしさのあまり君子はお礼を言うと急いで店を飛び出して行った。常連客が床に落ちていたハンカチを拾い上げると、そこには「6年A組 川村君子」と書いてあった。その名前を見たみきは顔色を変えた。

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