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巨人の星(1969年)

  • posted at:2009-04-16
  • written by:砂月(すなつき)
きょじんのほし
東京ムービー
配給:東宝
製作年:1969年
公開日:1969年7月26日 併映「緯度0大作戦」
演出:長浜忠夫
原作:梶原一騎 川崎のぼる
脚本:松岡清治 佐脇徹 辻真先 斉藤次郎
作画監督:楠部大吉郎
美術デザイン:小山礼司
美術監督:影山勇
撮影監督:清水達正
撮影:三沢勝治
音楽:渡辺岳夫
録音監督:山崎あきら
録音:三浦千治
効果:片岡陽三
編集:井上和夫
進行:真田芳房
協力:読売テレビ 読売巨人軍
製作協力:Aプロダクション
音響:映音
連載:週刊少年マガジン
声の出演:古谷徹 加藤精三 白石冬美 八奈見乗児 井上真樹夫
スタンダード カラー 88分

戦火の傷癒えぬ東京に一人の男が帰って来た。男の名は星一徹。かつて史上最高の三塁手と謳われた彼は昭和17年の春にプロ野球の読売巨人軍に入団したが、一度も公式戦に出場することなく徴兵された。戦地で右肩を負傷したこともあって野球への情熱を失っていた一徹だったが、妻・春江や友人・川上哲治一塁手の励ましもあって再起を決意し、昭和22年の冬に巨人軍に戻って練習を開始した。だが肩の状態は昔とは比べ物にならないほど衰えていた。繰り返し襲ってくる不安や絶望と戦い、彼はある方法に光明を見出した。そして昭和23年春、開幕戦を間近に控えた紅白戦でそのときはやってきた。打球は平凡なサードゴロだったが、一塁を守る川上は到底間に合わないと感じていた。すると一徹は打者走者の方向へボールを投げた。走者が当たると思い速度を落としたと同時にボールが曲がり、川上のミットに収まった。判定はアウトだった。川上は単なる偶然だと思ったが、次の打者に対しても同じことが起こった。試合後、彼は一徹を呼び出すと巨人軍を去れと言った。困惑する一徹に、出征し戦死した沢村栄治投手が一度もビーンボールを投げなかったことを例に挙げ、幾多の先輩が築き上げた伝統、王者の栄光と名誉を汚すものは、たとえ天才であっても巨人軍にとどまることは出来ないと川上は言った。自分が編み出した「魔送球」が投手のビーンボールに当たることを知った一徹は潔く野球界を去った。

夜空に輝く星座。それを巨人の星と名付けた一徹は、息子の飛雄馬をそのど真ん中でひときわ輝く明星に育てる決意をしたが、その後押しとなったのが春江の死だった。一徹は野球では左利きが有利だという理由から右利きだった飛雄馬を左利きに矯正し、遊びといえば野球用具しか与えなかった。そのやりかたに否定的だと思われていた彼女こそが、自分が為しえなかった夢を子供に託そうと考えている一徹の最大の理解者だった。死の間際に初めてそれを知った一徹は、改めて飛雄馬を明星に育て上げることを誓った。

一徹によるスパルタ式の特訓は、少年期を過ごす飛雄馬にとってつらく厳しい毎日だった。ある日、一徹は奇妙な器具を飛雄馬に身に着けさせた。それは彼が開発した大リーグボール養成ギプスで、バネの力が伸ばそうとする腕を引き付けることで知らず知らずのうちに筋力が鍛えられるという画期的なものだった。何があっても外してはならぬという父の言葉に従う飛雄馬は、父と子の絆のために耐え忍び、豪速球投手への道を歩んで行った。

屋台的映画館
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あしたのジョー(1980年)

  • posted at:2009-04-07
  • written by:砂月(すなつき)
あしたのじょー
三協映画=富士映画=ヘラルドエンタープライズ
配給:富士映画=日本ヘラルド映画
製作年:1980年
公開日:1980年3月8日
監督:福田陽一郎
総指揮:梶原一騎
製作:河野泰彦
プロデューサー:増田久雄
チーフディレクター:出崎統
原作:高森朝雄 ちばてつや
脚本:福田陽一郎
音楽:鈴木邦彦
主題歌:「あしたのジョー~美しき狼たち~」おぼたけし
挿入歌:「K・O(ノック・アウト)」シミズヤスオ
作画監督:杉野昭夫 金山明博
撮影:熊谷愰史
美術:明石貞一
録音:瀬川徹夫
編集:白江隆夫
効果:帆苅幸雄
現像所:東映化学工業
録音スタジオ:アオイスタジオ
タイトル:日映美術
監修:ちばてつや
声の出演:あおい輝彦 藤岡重慶 岸部シロー 大木民夫 加藤精三
アメリカンビスタ カラー 153分

東京の下町にあるドヤ街をふらりとやってきた少年が歩いていると、正面からやってきた男たちのうちサングラスの男がどきなと言った。彼らはこの一帯を取り仕切る鬼姫会のヤクザで、住人の少女・サチが屋台からおでんと一緒に売り上げもかっぱらったと根拠のない言いがかりをつけ父親から金をむしり取ろうとしていたのだ。事情がわかると少年はパンチを繰り出し、男を手始めに仲間も次々と殴り倒した。恐る恐る近づいてきたサチが名前を尋ねると、名乗るほどじゃねえが矢吹丈だと答えた。

深酔いをして店を追い出された丹下段平は、通りすがりのジョーから酒代をせびり取ろうとした。頼むぜと段平が左肩に手を掛けると同時にジョーは軽い身のこなしで体を入れ替え、腹に左ひざを見舞った。彼が持つ天性のバネに惚れ込んだ段平は再びジョーににじり寄り、俺と一緒にボクシングをやる気はねえかと言った。だがジョーは単なる酔っ払いの戯言と相手にしなかった。その夜、野宿していたジョーは体にオーバーがかけられ、おでんが一皿置かれていることに気づいた。公園にいる段平をやっとのことで捜し出したジョーは、オーバーとおでんのお礼、そして俺はおせっかいが嫌いだから今度周りに現れたらただじゃ済まないぞと凄んだ。だがすぐに只事ではない気配を感じ早くずらかった方が良さそうだぞと忠告した。彼らの周りを鬼姫会の連中が取り囲んでいたからだ。こいつらは何をするかわからんぞと段平は身を案じたが、聞く耳を持たないジョーは相手を挑発すると片っ端から殴り倒したのだった。すると幹部の男が手下にドスを抜くよう命じたため、それだけはやめてくれと段平は土下座した。だがその姿を見てみっともないとジョーが言ったことから、段平は怖いもの知らずの彼に歩み寄り鉄拳を食らわせた。そして俺の目の黒いうちは指一本触れさせねえと気を失ったジョーの体に覆いかぶさると、やるんならこの俺を殺してからにしてもらおうかと言った。ヤクザたちは一斉に襲い掛かったが、段平はいくら蹴られてもジョーの体から離れようとはしなかった。「おめえは俺の明日なんだ!」。

住民の通報により二人は命を落とさずに済んだが、ジョーは一晩留置場に泊まった。彼は被害者だったが、相手に15人もの重傷者を出したことを警察側は重く見ていた。そこで彼に対して事情聴取を行ったのだが、まともな受け答えをしなかったために保護者である段平を呼び出したのだ。警察部長とともに警察署へ向かった段平だったが署内は大混乱。ジョーは大暴れして姿をくらました後だった。その後ジョーがドヤ街の子供たちと廃屋に立てこもっているという連絡が入り、段平が現場に到着したときには周囲を取り囲んだ機動隊が突撃する準備に入っていた。そこで彼は隊長の制止を振り切って廃屋に乗り込むと説得を行った。その方法は言葉ではなく拳で、段平にKOされたジョーは身柄を警察に引き渡された。少年鑑別所に送られたジョーはアル中の元ボクサーに負けたことを苦々しく思っていた。ある日、彼宛に一通のはがきが届いた。それは「あしたのために」から始まる段平からのものだったが、ジョーは差出人の名前を見るなり細かく引き裂いてしまった。

屋台的映画館

ウォーターボーイズ

  • posted at:2009-04-01
  • written by:砂月(すなつき)
うぉーたーぼーいず
フジテレビジョン=アルタミラピクチャーズ=東宝=電通
配給:東宝
製作年:2001年
公開日:2001年9月15日
監督:矢口史靖
製作:宮内正喜 平沼久典 塩原徹
エグゼクティブプロデューサー:桝井省志
企画:石丸省一郎 藤原正道 遠谷信幸
プロデューサー:宅間秋史 関口大輔 佐々木芳野
脚本:矢口史靖
音楽:松田岳二 冷水ひとみ
エンディングテーマ曲:「学園天国」フィンガー5
挿入曲:「伊勢佐木町ブルース」青江美奈
・・・:「DIAMOND HEAD」THE VENTURES
・・・:「あなたのとりこ IRRESISTIBLEMENT」SYLVIE VARTAN
・・・:「ONLY YOU」ザ・キングトーンズ
・・・:「愛のしるし」PUFFY
撮影監督:長田勇市
照明:長田達也
録音:郡弘道
美術:清水剛
編集:宮島竜治
装飾:鈴村高正
助監督:片島章三
製作担当:大西洋志
プロダクションアシスタント:小室巴都衣
「ウォーターボーイズ」アソシエイツ:斎春雄 村田祐一 千野毅彦 小形雄二
製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
出演:妻夫木聡 玉木宏 三浦哲郎 近藤公園 金子貴俊
アメリカンビスタ カラー 91分

唯野高校の水泳部は廃部寸前の状態だった。大会で好成績を収められなかったことが原因で人気は低下し部員は減少した。そして今では根性無しの3年生・鈴木智だけとなっていた。荒れ放題となったプールに新入部員は来るはずも無かった。7月のある日、美人の新任教師・佐久間恵が赴任してきた。大学時代、彼女はプールに関わるクラブに所属していた関係で水泳部の顧問に就任した。朝礼で水泳部への入部を呼びかけると、活気のなかったプールに部員がドッと押し寄せて来たのだ。バスケットボール部の佐藤勝正や空手部の池内亮三、体操部の阪本友也など既に引退して時間を持て余した連中がかわいい恵目当てに入部したのだった。だが中には体力をつけたい太田祐一やカナヅチを治したいという金沢孝志もいた。新入部員たちは恵に指導して欲しいと頼んだが、何故か彼女は浮かぬ顔だった。そして、私はこの学校では教えられないと言って泣き出したのだ。まさか自分が男子校に赴任するとは思わなかったというのが理由だった。智たちは、性別なんて関係ないから教えて欲しいと頼み込むと恵は最高の笑顔を見せた。

恵の夢はシンクロナイズドスイミングを生徒に教えることだったが、赴任先が男子校であることがわかり落ち込んでいたのだ。だが部員たちの熱意を受け、今までの考え方を改めることにした。足がつかないプールでなくても競技する選手が男であっても関係ないのだ。「一緒にシンクロやろう、ね!」。恵が熱心に思いを語る間に部員は次々と脱走した。その結果、逃げられなかった智、勝正、祐一、孝志、早乙女聖の5人が貧乏くじを引く羽目になったのだ。張り切ってプールにやってきた恵は、シンクロを文化祭で上演する申請をしポスターまで作ってきた。だが急に気分が悪くなって嘔吐したため病院で診察を受けた。すると妊娠8ヶ月であることがわかったのだ。彼女は産休を取ると旦那とともにさっさと実家へ帰ってしまった。嵐のような出来事に5人は立ち尽くすしかなかった。

文化祭の実行委員会が始まり、桜木女子高など唯野高の周辺にある女子高の生徒を呼ぶ込むための企画が話し合われた。恵が既にシンクロの申請をしていたが、智たちはプールをバスケット部が毎年釣り堀として使っていることと、水泳部の顧問がいなくなったことを理由にして申請を取り下げた。悟や勝正は今まで決めたことを成し遂げたことがなかった。周囲の陰口が耳に入ったことでやはり自分たちにはシンクロしかないと考え直した5人はプールに向かったが、そこはもう釣り堀となっていた。揉め事の間に割って入った業者の磯村が全ての魚を掬い出すことが出来れば明け渡してもいいと言うと、バスケ部の連中もその条件に賛同した。5人は磯村から渡されたタモ網で魚を掬うことになったが、そううまく行くはずがなかった。そこで日が暮れるのを待ち、人目がなくなった頃を見計らってプールの水を抜いた。その間に魚を捕まえて水を元に戻し、古くなった水道メーターをいじれば万事解決、のはずだった。だが警備員に見つかってしまった。翌日、智たちは顧問の杉田に呼び出され、こっ酷く叱られた。5人がシンクロを披露する話に興味を持った磯村は、料金が取れるだけの演目を一週間後までに完成させることが出来るのならば魚代を免除してもいいと言った。

翌日から智たちは練習を始めたが、何から取り掛かっていいのかわからなかった。そこで彼らはプールサイドを使って入門書に書いてある通りにやってみた。だが基本的な技は地上では出来ても水の中では勝手が違った。試行錯誤の日々が続いたがついに集大成を披露する日がやってきた。杉田と磯村の前で競技が始まったが、所詮付け焼刃。失敗の連続で言い争いになり最後には仲間割れした。それを見ていた杉田は雷を落とし、プールを使用禁止にした。魚代も全額弁償することになった。

屋台的映画館

すべてが狂ってる

  • posted at:2009-03-28
  • written by:砂月(すなつき)
すべてがくるってる
日活
配給:日活
製作年:1960年
公開日:1960年10月8日 併映「英雄候補生」
監督:鈴木清順
企画:浅田健三
原作:一条明
脚本:星川清司
撮影:萩原泉
音楽:三保敬太郎 前田憲夫
照明:三尾三郎
録音:福島信雅
美術:千葉一彦
編集:鈴木晄
助監督:藤浦敦
製作主任:栗橋正敏
技斗:高瀬将敏
出演:川地民夫 祢津良子 吉永小百合 中川姿子 芦田伸介
シネマスコープ モノクロ 71分

不良グループに属する高校生の杉田次郎は幼いときに父親を戦争で亡くし、母・昌代の細腕で大事に育てられた。強烈な陽射が照りつけるある日、仲間の誘いを断わって帰宅した次郎は、昌代が帰ってくるのをケーキを用意して待っていた。今日は母の誕生日なのだ。二人きりで過ごせることを楽しみにしていた次郎だったが、彼女の発したひと言で気持ちが変わった。こんな大事な日に南原圭吾が来るというのだ。 昌代は保険の勧誘の仕事をしていたが、その収入だけでは次郎を学校へ行かせることが出来ず10年前から南原の支援を受けていた。愛し合っているのに金を受け取る母のそんな一面が嫌いだった。そして三星重工業の重役である南原はもっと嫌いだった。ヤツは人殺しだ。父を殺した戦争で戦車を作っていたからだ。家を飛び出した次郎は清流荘から出て来たアベックを襲い金を巻き上げた。それは彼にとって初めての恐喝だった。次郎の手柄にグループは沸き立ち、彼は一躍ヒーローとなった。その夜、次郎は谷敏美を指名し、寝た。そして小銭を投げつけると、受け取れと言ってベッドに彼女の顔を押し付けたのだった。

昌代から次郎のことを聞いた南原は、自分たちが不純な関係ではないことを話すために次郎を捜した。彼はまず最初に、グループがたむろするバーを訪ねた。そこにいた女子大生の下条悦子は、逗子にある敏美の別荘に明日みんなで集まる約束をしているので、そこで会わせてあげると言った。悦子と話している南原の姿を見た次郎は、彼が母親だけでなく悦子にまで手を出したと誤解した。憤る次郎はそばに停まっていた車を盗むと国道で無謀な運転を繰り返した。そしてハンドル操作を誤り、不動産屋の前に停めてあったスクーターに接触した。神社の境内に呼び出された次郎は男たちに取り囲まれ袋叩きにされた。敏美は次郎に好きか嫌いか答えて欲しいと言った。だが次郎はそんな言葉なんかあてになるもんかと吐き捨てた。彼の頭の中には母を裏切った南原のことしかなかった。翌日、悦子が南原とともに逗子へ向かったことを敏美から聞いた次郎は後を追い掛けた。その頃、別荘では悦子が南原を誘惑していた。様子がおかしいことに気付いた南原が問い質すと、悦子は堕胎するための費用が今すぐ必要だと言った。

屋台的映画館

天河伝説殺人事件

  • posted at:2009-03-25
  • written by:砂月(すなつき)
てんかわでんせつさつじんじけん
「天河伝説殺人事件」製作委員会
配給:東映洋画
製作年:1991年
公開日:1991年3月16日
製作:角川春樹
監督:市川崑
プロデューサー:冨澤幸男 霜村裕
原作:内田康夫
シナリオ:久里子亭 日高真也 冠木新市
音楽:宮下富実夫 谷川賢作
音楽プロデューサー:石川光
撮影:五十畑幸勇
美術:村木忍
調音:大橋鉄矢
録音:斉藤禎一
照明:下村一夫
編集:長田千鶴子
助監督:永井正夫
製作担当:福島聡司
出演:榎木孝明 岸恵子 日下武史 岸田今日子 財前直見
アメリカンビスタ カラー 109分

東京・新宿の高層ビル前で一人の男が急死した。男の手には「五十鈴」という奈良県にある天河辨財天社に太古から伝わる神宝神代鈴として作られたお守りが握られていた。同じ頃、奈良県吉野郡天川村の山深い杉木立の中で若い二人の恋が密かに呼吸していた。一方、東京・田園調布の屋敷内では四人の男女が激しく対立していた。やはり同じ頃、旅の男が吉野郡の外れで思わぬ足止めを食っていた。男は道端で死んでいた鳩をかわいそうに思い拾い上げたのだが、そこを通り掛った中村巡査から密猟の疑いを掛けられたのだ。男の名は浅見光彦。ルポライターの浅見は、駐在所の前を通りかかった天河館という旅館の女将・長原敏子の証言のおかげで嫌疑が晴れたのだった。

田園調布の水上家の広間には一門が勢ぞろいしていた。十九世宗家和憲は12年前に急逝した和春の追善能の演目を発表した。分家筋の長老・高崎義則は「頼政」、孫の和鷹と秀美は「二人静」を舞うことになったが、どちらがシテの静御前とツレの菜摘女を演じるかは稽古の様子を見てから決めると言った。和憲は「道成寺」を自身が舞い、この追善能を最後に引退すると宣言すると皆驚いた。

日本国語学研究所の剣持譲介所長は、東京に戻った浅見に仕事を押し付けた。剣持は浅見の先輩に当たり、浅見家からの信頼が厚かった。高級官僚一家の中にあって一人旅雑誌に紀行文を投稿する浅見の身を案じた母・雪江に何とかして欲しいと頼まれたのだった。そこで剣持は、能の舞台になっている史跡巡りの本が出版されることを知ると執筆者として浅見を紹介したのだった。最初は渋っていた浅見だったが、吉野へ行けることがわかると急に目の色が変わった。

静御前を演じることは、その者が次の宗家と継ぐことだった。二人の母である菜津は秀美が静御前を舞うことを和憲と約束していたが、高崎は本来、能楽の宗家は男でなければならないという決まりがあるからそれは出来ないと言った。そこで菜津は道伝正一に近付き、秀美の婿となって二十世宗家を襲名すれば何の不都合もないと耳打ちした。そして彼女は、和鷹に水上家も流派も譲る気はないと言った。

新宿で急死したのは、織物を扱う会社の営業課長・川島孝司だった。司法解剖の結果、毒物による中毒死であることが判明したが、捜査の手掛かりとなるはずの五十鈴と川島との共通点が不明だった。そこで仙波警部補と倉田刑事は五十鈴の謎を究明するために天河神社を訪れた。神社を管理する福本幸吉は、お守りの中に五十人の神様が宿ることから五十鈴と呼ばれ、神社に深く関わる人にしか渡していないと言った。事件解決の糸口が見つかったと喜ぶ仙波だったが、鈴が一千個近くあることを知り落胆した。福本の娘・千代栄は和鷹と結婚するつもりでいたが、両親は反対していた。天河には薪能の夜に結ばれた男女は不幸せな運命を辿るという言い伝えがあったからだ。

追善能の打ち合わせをしていた朝、菜津が血相を変えて部屋に飛び込んできた。高崎が崖道から転落して死んだというのだ。前日、仙波は高崎と一緒にいる男を偶然目撃していた。その男とは、取材のために再び天川村を訪れていた浅見だった。

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