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細菌列島

  • posted at:2013-12-29
  • written by:砂月(すなつき)
さいきんれっとう
JRC.LLC(ジョリー・ロジャー=CINV)=MASATOMO DREAM
配給:ジョリー・ロジャー
製作年:2009年
公開日:2009年4月4日
監督:村上賢司
エグゼクティブプロデューサー:大橋孝史
プロデューサー:川島正規
企画:MASATOMO DREAM
アシスタントプロデューサー:上野境介 高波朋美
キャスティングプロデューサー:大竹理永
音楽プロデューサー:倉田真二
原作:司城志朗
脚本:継田淳
主題歌:「私のお口が世界を救う」原紗央莉
挿入歌:「前立腺体操」しょう
エンディングテーマ:「マンセーサンバ」Son Son
撮影:根岸憲一
録音:星一郎
整音:星一郎
美術:山田順啓
衣裳デザイン:MASATOMO
編集:遊佐和寿
助監督:内田直之
制作担当:高橋広正
出演:須藤謙太朗 三輪ひとみ 嶋大輔 前田健 原紗央莉
アメリカンビスタ カラー 82分

ペットショップ・わんにゃんワールドの前で着ぐるみに入ってわずかな生活費を稼ぐボロアパート暮らしの冴えない男(33歳・フリーター)。周りの人たちは知らなかったが、彼の月岡正一という名前は偽名であり、日本人ですらなかった。故郷は日本付近にある世界の鼻つまみ国家で、そこの最高権力者にして世界一の嫌われ者である将軍様の長男で後継者だった。7年前に御忍びで日本に遊びに来たときのこと。料亭ではしゃいでいたときにエビの殻を喉につまらせた。そのときに側近の鬼木がつれてきたのが水橋いづみという女医だった。美人だったことから正一は自分の女にしようと強引に迫ったのだが、左の頬に強烈なパンチを食らってしまった。生まれてのこの方一度も殴られたことのない彼にとってその経験は強烈で、心を入れ替えるとプレゼント攻勢でデートに誘った。だがそれが逆にいずみの心を逆撫でしたのだった。箱を抱えて現れたいずみはそれを正一に押し付けると、貧乏人は皆お金を積まれてなびくとは限らないと言い放った。そのとき突然音楽が鳴り、正一は「前立腺体操」を始めたのだった。それは正一の父親が前立腺炎だったときにこの体操で治したのだ。疲れとストレスに効くということで某国では国民に推奨していた。いずみは当初馬鹿にしていると感じていたものの、促されて一緒に踊るうちに溜め込んでいたストレスが解消して行くのが手に取るようにわかった。その出来事がきっかけで、二人は愛を育んで行った。いずみに恋をしたことで正一は祖国を捨て、地位を捨てて日本で生きていくことを誓った。しかし幸せな時間は長く続かなかった。将軍の大政奉還を目論むCIAが諜報員・ボンザノを差し向け、正一を暗殺しようとしたのだ。鬼木の手配でスイスに逃亡したが、危険を避けるためにいずみには知らせなかった。

いずみのことが忘れられない正一は、6年が経って再び日本に潜入した。しかし彼女が病院を辞めたことはわかったもののその後の足取りが掴めなかった。無名の市民として生きる覚悟を決めた正一は、着ぐるみのアルバイトで生計を立てることにしたのだ。ある日、ピザの配達員として現れたボンザノによって着ぐるみは射殺された。だが殺されたのは正一ではなく経理の山崎さんで、発熱で早退した彼の身代わりとなったのだった。その頃、正一は外来の診察を受けていたが、病室に貼っていたポスターでいずみが新潟実露病院にいることを知った。その後フラフラの体で帰宅していたが、途中で力尽き気を失ってしまった。その彼を介抱したのはヘルス嬢のイブだった。公安部第二課の室田は、正一のチンチンの付け根に丸いアザがあることを突き止めていた。そのチン丸こそ某国後継者の証しなのだ。そこで舌技催眠の特技を持つイブに確認を依頼したのだが、何故か掛からなかったのだった。身支度を整えた正一は慌てて部屋から飛び出すと新幹線で新潟に向かった。 その頃、新潟では奇病が流行り始めていた。新潟実露病院に運ばれた患者は悶え苦しみ、突然上体を起き上がらせると震えだした。そして「ふ、ふるしちょふ!」と叫ぶと同時に頭が破裂し、体液を飛び散らせながら患者は死んだ。遺体の顔は丸々と腫れ上がり、髪は天然パーマ風に逆立っていた。まるであの将軍様のように・・・。

屋台的映画館
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複雑な彼

  • posted at:2013-12-23
  • written by:砂月(すなつき)
ふくざつなかれ
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1966年
公開日:1966年6月22日 併映「殿方御用心」
監督:島耕二
企画:藤井浩明
原作:三島由紀夫
脚本:長谷川公之
撮影:上原明
音楽:大森盛太郎
主題歌:「さよならは云えない」西田佐知子
挿入歌:「秘密」西田佐知子
録音:須田武雄
照明:泉正蔵
美術:後藤岱二郎
特殊撮影:藤井和文
編集:鈴木東陽
服飾:河野美智子
助監督:進藤重行
製作主任:川村清
現像:東京現像所
出演:田宮二郎  高毬子 滝瑛子 佐野周二 中村伸郎
シネマスコープ カラー 87分

森田冴子は父・直人と渡米した際、NAL航空の機内でさわやかな応対をするパーサーに出会った。小意気なジョークで退屈する女性客のご機嫌をとるその青年の姿に、冴子は心をときめかせたのだった。サンフランシスコに到着後、彼女は元客室乗務員で友人の山本ルリ子にそのことを話した。するとルリ子は「ああ、井戸掘り君のことね」と言った。そのパーサー=宮城譲二は、ルリ子に生活に困ると井戸掘りをしたと自慢げに話した。だが複雑な過去について一切明かそうとはしなかったため、これまでにどれだけ悪いことをしてきたか想像もつきゃしないと警戒していた。ヨーロッパを旅していたときに、大日新聞の須賀健作に世話になったと譲二が話していたことから、ルリ子はついでのときに聞いてごらんなさいと言った。須賀は冴子の伯父にあたり、現在は東京で事業部長をしていた。

冴子は伯父を訪ねるなり譲二のことを切り出した。すると須賀はゆっくりと思い出しながら話し始めた。十年ほど前、譲二はウインブルドン大学に留学中だったが、悪戯が過ぎて退学になり伝を頼ってビッグベンの側にある支局にやってきた。カメラマンの助手を希望する譲二に好きなものは何かと須賀が尋ねると、彼は女の子だと答えた。それを聞いた須賀は、自分の心に嘘偽りのない譲二を採用することに決めたのだった。育ちはいいし英語がうまいことで会社としては重宝したのだが、須賀が取材旅行で留守にしている間にトラブルを起こしてしまった。コメット機を製造する工場で設備を盗み撮りしたことがばれて産業スパイ問題に発展しかけたのだ。須賀は誰に頼まれたのかと譲二を問い詰めたが、頑として口を割らなかったため、彼を謹慎処分とした上で独自に調査を開始した。その結果、実業家から頼まれたカメラマンの遣いっぱしりとして利用されたことがわかったのだ。心に癒しようのない傷を与えてしまったことを須賀は申し訳なく思っていたが、そんなことがあったにも関わらず連絡先を知らせてきた譲二に男気を感じていた。その夜、冴子は須賀の紹介で譲二と再会した。夕食後にダンスフロアで踊っているときに金髪の女性がつかつかと歩み寄るといきなり冴子にぶったのだ。その女性は譲二とひと月だけ関係を持ったアン・ホーダアで四年前に関係を清算していたが、偶然見かけた二人の姿に嫉妬したのだった。アンは夫に冷たくされていることを理由にあなたのことが忘れられないのと言い寄ってきたが、譲二はその無礼さに腹を立て、冴子に詫びようとした。だが既に姿はなく、ひとりでタクシーを拾った。

譲二が自宅に戻ると謎の男が待っていた。その男は以前、彼が窮地に陥ったときに救った恩人だった。決心はまだつかないのかという質問に、譲二は助けたのはあなたの一方的な意思だったのだからあなたのために働く気はないと断わった。すると男は、強制はしないから気持ちが変わったらいつでもくると言って部屋を出て行った。

屋台的映画館

ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ

  • posted at:2013-12-08
  • written by:砂月(すなつき)
らいあーげーむざふぁいなるすてーじ
フジテレビジョン=集英社=東宝=FNS27社
配給:東宝
製作年:2009年
公開日:2010年3月6日
監督:松山博昭
製作:亀山千広 鳥嶋和彦 島谷能成
製作統括:石原隆 和田行
プロデューサー:宮川朋之 瀬田裕幸 古郡真也
アソシエイトプロデューサー:志牟田徹 東康之
原作:甲斐谷忍
脚本:黒岩勉 岡田道尚
音楽:中田ヤスタカ
主題歌:「Stay with You」capsule
・・・:「Love or Lies」capsule
撮影:宮田伸
照明:森泉英男
録音:武進
美術:関口保幸
デザイン:坪田幸之
美術進行:平川泰光
編集:平川正治
CG:笹生宗慶
選曲:泉清二
監督補:長瀬国博
製作担当:白石治
製作プロダクション:FILM
出演:戸田恵梨香 松田翔太 田辺誠一 鈴木浩介 荒川良々
アメリカンビスタ カラー 133分

バカがつくほど正直な女子大生の神埼直は、自宅に届いた「LGT事務局」からの小包を不用意に開けてしまったために、欲望にまみれたプレイヤーたちが対戦相手を騙してマネーを奪い合う「ライアーゲーム」に自動的に登録されてしまった。不本意ながらの参戦に落ち込む彼女を救ったのは、冷静な判断力と大胆な行動力を兼ね備えている天才詐欺師の秋山深一だった。勝てば大金を手にし、負ければ巨額の負債を抱え込むことになるこの危険なゲームの数々を、直は秋山とともに勝ち抜いて行った。そしてセミファイナル後半戦。秋山率いる光の国が勝利を収めたが、敵対し敗北した葛城リョウの本心を知った直は、金塊を彼女に渡して欲しいと秋山に懇願したのだ。その結果、ファイナルステージへ進出する人数が制限されることになり、直は辞退を申し出たのだった。「ライアーゲーム」潰滅の思いを秋山に託して。

平穏な日々に戻った直のもとに一通の封書が届いた。それは「ライアーゲーム ファイナルステージ」の案内状だった。彼女の自宅を訪れたLGT事務局員の谷村光男は、棄権者が出たことで権利が回ってきたことを説明し、このままでは秋山が負けると告げた。狼狽する直に谷村は、人同士が信じ合わなければ勝ち目のない次のゲームで秋山を救えるのは君だけだと言った。「あいつが信じられる人間は君しかいないんだから」。

直がLGT事務局員のエリーに案内された「GARDEN OF EDEN」という部屋がファイナルステージの会場だった。そこで行われるのは、旧約聖書の創世記をベースにした「エデンの園ゲーム」だった。 一人しか入ることの出来ない部屋で三種類のりんごのうち一つを選び、11人のプレイヤー全員がそのりんごについたプレートに名前の焼印を押して投票箱に入れると1ゲームが終了。それが13回繰り返される。投票されたりんごは機械で自動的に集計され、投票数が多い方が勝ちとなる。仮に同じ名前のものが二つ投票された場合、最初のりんごが有効となる。また書面などの制約によって投票を強制することは禁じられている。一回の投票タイムは1時間だが、全員が投票を終えた段階で終了となる。制限時間内に投票室に入らなかったプレイヤーはマイナス1億円のペナルティーが科され、一度入ったプレイヤーは次のゲームまで入ることが出来ない。多数派のプレイヤーには賞金1億円が与えられ、少数派はマイナス1億円となる。また、全員がゴールドまたはシルバーにそろって投票した場合はマイナス1億円となる。ゴールドとシルバーはいわゆる禁断の果実で、11人が真実の赤りんごに初回から投票すれば全員が13億円を手にしてゲームを終えることが出来る。だが赤をそろえようとしたときに禁断の果実に手を出した者がいると、赤に投票したプレイヤーにマイナス1億円が科される。逆に禁断の果実に投票した者には、ゴールド、シルバーに関わらず1億円が与えられる。さらにそれが一人だけだった場合は、ボーナスとして2億円が与えられる。だが真実の赤りんごが一人だけだった場合は、名前を公表した上で特別ペナルティーとしてマイナス10億円となる。そして負債が5億円に達したプレイヤーは、その時点で失楽園(エデンの園からの追放)となる。だが誰かがその負債を肩代わりすればゲームの続行が可能となる。セミファイナルまでに獲得したマネーがベースとなり、ゲーム終了時点でプラスであればその額を賞金として確定。マイナスであれば負債として確定される。獲得マネーがトップのプレイヤーが優勝となり、賞金50億円が与えられる。不正行為やルール違反などによってゲームの続行が不能になった場合、賞金は没収。そしてプレイヤー全員にマイナス10億円のペナルティーが科されゲームは終了となる。また50億円の分配を前提にゲームが進められることを防ぐため、ゲーム終了後のプレイヤー間でのマネーの移動は禁止される。

直にとってこのゲームは楽勝だった。何故ならば、プレイヤー全員がお互いを信じて赤いりんごを投票し続ければいいからだ。直は皆の前に出ると、今回の敵はLGT事務局なのだから50億円に惑わされずに真実のりんごを投票しませんかと提案した。するとサカマキマイが同調し、タケダユキナも最後くらい事務局にひと泡吹かせてやりたいと言った。現時点での賞金獲得トップは12億円であり、逆転は無理だと考える者もいたことから、13億円を確実に稼ぐことが最良の策だという意見でまとまった。全員の投票が終わり、第1ゲームが締め切られた。投票の結果は、ゴールドが3、シルバーが4、真実の赤りんごが4だった。

屋台的映画館

しびれくらげ

  • posted at:2013-12-02
  • written by:砂月(すなつき)
しびれくらげ
大映(東京撮影所)
配給:ダイニチ映配
製作年:1970年
公開日:1970年10月3日 併映「一度は行きたい女風呂」
監督:増村保造
企画:関幸輔
脚本:石松愛弘 増村保造
撮影:小林節雄
録音:須田武雄
照明:渡辺長治
美術:後藤岱二郎
音楽:山内正
編集:中静達治
助監督:石井岩太郎
製作主任:林秀樹
現像:東京現像所
出演:渥美マリ 川津祐介 田村亮 玉川良一 草野大悟
シネマスコープ カラー 92分

大東繊維の若手敏腕セールスマン・山崎宏は、恋人で売り出し中のファッションモデル・みどりをファッションショーに抜擢したことで評価を得ていた。彼女が持つ美貌は評判を呼び、雑誌にグラビア写真が載るまでになったが、同時に問題も引き起こしていた。そのグラビアを見たニューヨーク大百貨店の仕入担当重役・ヘンダーソンが彼女に惚れ込み、寝てみたいと言い出したのだ。望みが叶えば60万ドル、日本円にして2億円の商品を買うという条件を提示されたため、大きな商談を成功させたい山崎は彼女にその話をしたのだった。それを聞いたみどりは耳を疑ったが、二人の幸福のためだと強引に説得された。数日後、ヘンダーソンに抱かれたみどりは嫌な思いをシャワーで洗い流して山崎の自宅を訪れた。そして二人の愛が不変であることを確かめ合った。営業担当重役の小野田は、商談の成功を大いに喜んだ。何故我々が口説き落とせなかった相手を承知させることが出来たのかと小野田が疑問を口にすると、山崎はヘンダーソンに一目惚れした女を抱かせたことを告白した。

みどりは父・庄介と二人で暮らしていた。庄介はサラリーマン時代にバーの女にのめり込み、会社の金を使い込んだことでクビになった。横領で訴えられた末に1年の刑務所暮らし。その間に妻は娘を他人に預けて若い男と駆け落ちした。それからは苦労をしながらみどりを男手一つで育てあげたが、女グセは相変わらずだった。今はストリップ小屋の楽屋番として働いていたが、手取りだけでは足らなかったためみどりから金をせびった。ある日、みどりのグラビアが載った週刊誌を楽屋で見つけた庄介は、以前から目をつけていたバーのママ・圭子にそれをちらつかせて自分は芸能関係の人間だと触れ込んだ。彼女を旅館に連れ込んだところ、そこに現れた笠井組の幹部・山野と舎弟の健次に密会の現場を押さえられたのだ。店での様子をカウンターで見ていた山野は金づるとなりそうだと考え、妻の圭子と結託して一芝居うったのだった。山野から落とし前の100万円を要求された庄介はみどりに泣きついた。だが冷たくあしらわれると今度は山崎を訪ねた。

庄介は期限までに100万円を用意したが、その出所が山崎だと知ったみどりはマンションに謝りに行った。ヤクザとの関係が面倒だから親父さんを捨ててくれと山崎が言うと、放り出したいがたとえ馬鹿な親であっても血が繋がっているのだから一生面倒をみてやらないといけないとみどりは答えた。すると自分の身の安全しか考えていない山崎は別れ話を切り出した。そして100万円はヘンダーソンと寝てもらったお礼だから返さなくていいと言ったのだ。出世のために利用されたことを知ったみどりは山崎のもとを去ったが、事情を知った庄介は再び山崎を訪ね、娘を傷ものにした慰謝料として500万円を要求した。

屋台的映画館

七人の弔

  • posted at:2013-11-24
  • written by:砂月(すなつき)
しちにんのとむらい
バンダイビジュアル=TOKYO FM=オフィス北野
配給:オフィス北野=東京テアトル
製作年:2004年
公開日:2005年8月13日
監督:ダンカン
プロデューサー:森昌行 吉田多喜男
アソシエイトプロデューサー:久保聡 古川一博 白石統一郎
ラインプロデューサー:小富慎二
脚本:ダンカン
音楽:松谷卓
撮影:村埜茂樹
照明:舘野秀樹
美術:稲村正人
録音:白取貢
編集:太田義則
スクリプター:森直子
製作担当:岩谷浩
助監督:松川嵩史
装飾:尾関龍生
衣裳:小川佳純
ヘアメイク:宮内三千代
製作主任:斉藤大和
キャスティング:吉川威史
出演:ダンカン 渡辺いっけい 高橋ひとみ いしのようこ 山崎一
アメリカンビスタ カラー 107分

ある夏休み。志葡野駅に降り立った七組の親子は、参加する2泊3日キャンプツアーのバスが到着するのを待っていた。彼らの反対の方向でクラクションが鳴り、バスの前には無表情の指導員・垣内仁が立っていた。「みなさんようこそ、こちらですよ」。走り出したバスの車内には異様な空気が漂い、堅い表情をした保護者たちはみな一様に口を閉ざしていた。やがてバスはキャンプ場に到着し、束縛から解放された子供たちは無邪気にはしゃぎ回った。川原でビーチボールを投げて遊んでいた中尾晴美は誤って足を滑らせて転んだ。すると日頃は虐待を繰り返す母・君代と愛人の住田昇が慌てて助けに来たのだ。いつもとは違う君代の態度に晴美は戸惑った。

前年に全国の児童相談所が受けた児童虐待の相談件数は2万7千件にものぼり、虐待死させてしまった件数は41件もあった。このキャンプに参加した保護者たちは、子供たちの命を奪うかわりにその子たちの臓器を売買をして自分たちの生活を向上させようと考えるものたちばかりだった。垣内は彼らを一室に集め、キャンプの主旨を説明した。そして話が終わるとトランクの中の札束を見せた。色めきたつ保護者たちに垣内は、口止め料を含めた参加費の500万円を前金で渡し、キャンプ終了時に子供の体調に問題がなければ4500万円を差し上げると言った。そして期限である1日目の夕食までに気が変わって帰ることがあっても他言しなければ参加料を差し上げるが、命が惜しければ脅すなどとは考えないようにと念を押した。児童相談所の介入についても手筈が整っていることを説明すると、保護者たちは安堵のため息を漏らした。キャンプ中に脱落する子供が出た場合、一人頭の金額が増えるのかという質問には、その可能性はあるが血生臭いことは勘弁願いますよと釘を刺した。その日の夕食は最初の検査だった。子供たちのカレーには微量の薬物が混入されているのだ。翌日には登山が控えており、体調不良が長引けば失格となる可能性が高くなるため、親たちは子供のことが心配でたまらなかった。我慢ならなくなった柳岡秀男はお代わりしようとする息子・三郎にそれ以上食べるなと怒鳴り、横山春樹は息子・一樹のカレーをがっついて食べた。

翌朝、西山翔子が熱を出したことを知った晴美は、河原潤平にこのキャンプは何処かおかしくないかと尋ねた。そのことは潤平も薄々感づいていた。昨夜、抜け出ようとした彼を父・功一が考え直して欲しいと土下座して止めようとしたのだ。功一は筋金入りのギャンブル狂で、元手を作るために潤平に盗みを働かせ、失敗すると暴行を加えた。不満をぶちまけたにも関わらずいつものように殴ってこない功一に、潤平は拳でお返ししたのだった。みんなが食事の支度をしていると、黒塗りの車がやってきた。それは教育委員会の視察という名目の「依頼主」だった。

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