忍者ブログ

凶弾

  • posted at:2014-02-16
  • written by:砂月(すなつき)
きょうだん
松竹映像=富士映画
配給:富士映画
製作年:1982年
公開日:1982年9月15日
監督:村川透
製作:升本喜年 増田久雄
企画:奥山和由
原作:福田洋
脚本:石森史郎 北村彰 押川国秋
音楽:羽田健太郎
音楽監督:鈴木清司
主題歌:「LAST GOOD-BYE」山本達彦
撮影:坂本典隆
撮影助手:満井坦彦 池谷秀行 篠崎昭雄
オプチカル:石川智弘
美術:横山豊
美術助手:成沢守
録音:島田満
録音助手:近藤勲 林義昭 鈴木考史
調音:小尾幸魚
照明:八亀実
照明助手:高岩進 飯島興一 藤田繁夫 加藤実 福岡昭男
編集:池田禅
編集助手:中西正義 松浦和也
装置:石渡敬之助 田村武男 前田勝巳
装飾:町田武 奥村松太郎
衣裳:松竹衣裳 相澤登記雄
メーク:大庭礼子
スチール:金田正
記録:宮下こずゑ
監督助手:南部英夫 内田秀哉 飛河三義 羽二生茂樹
擬斗:國井正廣
カー・スタント:スリーチェイス
特殊機械:NK特機
車輌:トランスポート(有)
現像:東京現像所
宣伝プロデューサー:下川東彦
進行:田沢連二
製作主任:早川喜康
製作協力:(株)プルミエ・インターナショナル
出演:石原良純 古尾谷雅人 秋吉久美子 勝野洋 高樹澪
アメリカンビスタ カラー 112分

大学生の荒木英夫は少年院時代の仲間の沼田昭彦、内山正一と再会を果たした。正一の車で向かった先は北アルプスで、目的は英夫が手に入れた父親の形見であるベルギー製のライフル銃を試射することだった。気心の知れた三人は、白樺の木を標的にするなどして思い存分野山を駆け回った。その帰り、車中で昭彦が銀行強盗でもやるかと口にした。それを聞いた正一は乗り気だったが、英夫の顔色を察した昭彦は冗談だとすぐさま打ち消した。英夫の提案で石和温泉に行くことになり、高揚した正一は車を飛ばした。辺りが暗くなった頃、雨の中をずぶ濡れになって歩く裸足の女に昭彦が気づいた。駅なら何処でもいいという女を乗せた車は松本市の国道をひたすら走っていたが、前をノロノロと走るトラックを追い越したところを取り締まっていたパトカーに見つかった。追い越し違反、飲酒、スピード違反、そして車輌の窃盗容疑が掛けられた正一は、硬派な警官に引きずり出され若い警官に警察署へ連行された。車内からライフル銃が出てきたことで若者たちの言動に不審を抱いた硬派な警官は、英夫に制裁を加えた。それを見た昭彦は彼を守ろうとして揉み合いになり、警官が手放したライフル銃を掴むと銃床で何度も殴りつけたのだった。体を張って止めた英夫は昭彦を車に押し込むと、思い切りアクセルを踏んだ。

長野県警はパトカー28台と78人の警官を投入して幹線道路の検問など警備を強化したが、英夫たちの足取りは掴めていなかった。そのころ、署内では正一が刑事たちから執拗な取り調べを受けていたが、彼は決して余計なことをしゃべろうとはしなかった。「仲間を売るなんて絶対嫌だ!」。少年院で出会った三人は、両親がいないという境遇が似ていたことで絆が深まって行ったのだ。早朝、乗り捨てられた盗難車が県警に発見され、車内の指紋から英夫と昭彦の身元が割れた。少年院上がりということで、宮下捜査官は奴らは何を仕出かすかわからないと福本刑事部長に報告した。それを聞いた福本は、先入観で未成年者の犯罪を見誤ってはならないと釘を刺した。その頃、緑色の軽ワゴン車に乗り換えた英夫たちは交通量の少ない道路を選んで信濃坂駅を目指していた。駅に着くと、女は誰にも言わないからと手を振って去って行った。そこに巡回中のパトカーが現れたため、何事もないように車を発進させた。しばらく農道を走っていたが、英夫は考え事をしているうちに車を脱輪させてしまった。昭彦の力を借りて抜け出そうと試みていたところを警官に見つかり、二人は車を諦め走って逃げた。

正一の取り調べを行っていた刑事の中に、英夫と関わりの深い人物がいた。岩井刑事部長は松本北署時代に英夫が起こした事件を担当していたのだ。五歳のときに交通事故で両親を失った英夫は、姉・知子と寄り添うように生きてきた。それから十数年後、知子は年上の男と付き合っていたが、妊娠したことがわかると暴力を振るい始めた。暴力に耐え切れず堕胎すると、それを知った男は英夫の前で「近親相姦だったんじゃないのか」と言った。その言葉で頭に血が上った英夫は金属バットで男を撲殺したのだ。英夫と面会した岩井は妙な印象を受けた。殺人を犯した人物が澄んだ目をしていたからだ。それ以来、事件を起こした少年たちの心情をわかろうと努力していた。

保護司である森下周造の寺にたどり着いた英夫と昭彦は、一緒に警察に行って自分たちの言い分を伝えて欲しいと頭を下げた。だが既に寺の周囲は警察に包囲されていたのだ。森下に裏切られたと誤解した英夫は、警官に発砲すると昭彦と裏山に逃げ込んだ。

屋台的映画館
PR

転がれ!たま子

  • posted at:2014-02-05
  • written by:砂月(すなつき)
ころがれたまこ
近代映画協会=シネカノン=衛星劇場=S・D・P=ハピネット・ピクチャーズ
配給:シネカノン
製作年:2005年
公開日:2006年2月4日
監督:新藤風
製作:新藤次郎 李鳳宇 石川富康 細野義朗 川島晴男
プロデューサー:新藤次郎 里中哲夫 長谷川安弘
脚本:しんどうぎんこ
音楽:磯田健一郎
撮影:佐々木原保志
照明:祷宮信
録音:白取貢
美術:中澤克巳
小道具:相田敏春
編集:渡辺行夫
スクリプター:松橋章子
助監督:森宏治
製作担当:岩谷浩
出演:山田麻衣子 岸本加世子 竹中直人 松澤傑 広田レオナ
アメリカンビスタ カラー 103分

運河に囲まれた町に住む桜井たま子は、美容室たつまきを経営する母・タツコと、高校三年生の弟・大輔と暮らしている。たま子は幼いときにプールで溺れ、人一倍用心深い娘になった。そしてかくれんぼの最中に父・平吉が家を出て行くと、ますます用心深くなった。それ以来、彼女は何処に行くにも父親手製の鉄かぶとが手放せなり、周囲から「鉄かぶとのたま子」と呼ばれた。そんなたま子の大好物は、日進月歩堂のジイチャンが作る甘食で、美容室のレジから小銭をくすねて買いに行くのが日課になっていた。生まれたときから食べている甘食を自分の部屋のベッドに寝転んでかじりつく。そしてベッドの下に住んでいる居候のネコ・タマに少しばかりおすそ分けする。それが彼女にとって至福の時だった。だが24歳になったある日、タツコに「自分の甘食は自分で買え!」と言われ、たま子に恋焦がれる金福寺の和尚・トラキチの紹介で配送所のアルバイトを始めることになった。 アルバイトから帰る途中、乳母車を押した女性に出くわしたたま子は、苦手な「人」を避けるために細い路地に入った。すると今度は苦手な「犬」に咆えられ、さらに住宅街の奥へ奥へと入り込んで行った。するとバッタリ会った不思議な少年に「気をつけて。穴に落ちるよ」と警告を受けた。その言葉に驚いたたま子は身を堅くしたが、その先からやってくる自転車の男に気づき、思わず後ずさった。そして、道路にぽっかりとあいた穴に落ちた。

5メートルはある穴からたま子が這い上がったとき、世界が変わっていた。タツコとトラキチが年の差を超えて激しい恋に落ち、日進月歩堂がジイチャンの急病で休業していたのだ。ショックを受けたたま子は、平吉が経営する鳥越メカニックに立ち寄った。平吉はたま子の数少ない理解者で、家を出てからは自動車整備士として働き、時間が空くと鉄を使ったオブジェ作りに勤しむのだった。たま子は自由気ままな平吉のことが大好きで、何事かあると必ず工場を訪ねるのだ。彼女が四六時中、鉄かぶとを被っているのは、いつも平吉が自分のことを守ってくれているように感じていたからだった。その平吉も雑誌の取材を受けたことでアーティスト魂に火がつき、ペーター鳥越としてニューヨークに旅立とうとしていたのだ。 絶望に打ちひしがれて家に帰ると、大輔がテレビの画面をぼんやりと見つめていた。映っていたのはタツコの幼なじみでバスガイドのマーブルで、彼女を尊敬する大輔は観光バスに客として乗り込み、ビデオカメラでガイドの様子を撮影した映像を見ていたのだ。彼はたま子の方に顔を向けるとこう言った。「俺、バスガイドになることにした」。何が何だかわからなくなったたま子は部屋に戻ると、どうしようとタマに声を掛けた。だが返事はなく、タマが姿を消したことを知った。

タツコとトラキチの結婚式が行われた翌日、たま子は部屋に引きこもっていた。彼女の心には、式の直前にタツコから言われた「自立しなさい」という言葉が引っ掛かっていたのだ。「甘食が食べたい」。そう思わずつぶやくと、あの少年が側らに現れ、食べればいいじゃないかと言った。その言葉に勇気付けられたたま子は、運河に囲まれた半径500メートル足らずの小さな世界から抜け出して隣町へ甘食を買いに行くことに決めた。

屋台的映画館

配達されない三通の手紙

  • posted at:2014-02-01
  • written by:砂月(すなつき)
はいたつされないさんつうのてがみ
松竹
配給:松竹
製作年:1979年
公開日:1979年10月6日
監督:野村芳太郎
製作:野村芳太郎 織田明 田中康義
原作:エラリー・クイーン
脚本:新藤兼人
撮影:川又昂
美術:森田郷平
音楽:芥川也寸志
録音:山本忠彦
調音:松本隆司
照明:小林松太郎
編集:太田和夫
スチール:金田正
監督助手:大嶺俊順
装置:横手輝雄
装飾:磯崎昇
衣裳:松竹衣裳
スタイリスト:原由美子
現像:東洋現像所
進行:副田稔
製作主任:吉岡博史
出演:栗原小巻 片岡孝夫 神崎愛 蟇目良 松坂慶子
アメリカンビスタ カラー 131分

山口県萩市の名家・唐沢家にロバート・フジクラ、通称ボブと名乗る青年が訪ねてきた。彼は長門銀行頭取・唐沢光政の甥に当たり、日本文化の研究のためにアメリカからやってきたのだ。その夜は月に一度開かれる晩餐会で、ボブは皆から歓迎された。そこに遅れて現れたのは光政の次女・紀子だったが、気分が冴えずに自室へすぐ戻ってしまった。しばらく滞在することになったボブに与えられたのは、3年前に紀子と婚約者・藤村敏行の新居となるはずだった一軒家だった。二人の結婚が決まったことで光政はその家を建てたのだが、結婚式当日に藤村は突然失踪したのだ。この出来事で心に深い傷を負った紀子は、それ以来塞ぎ込むようになった。 ある日、姉・麗子からの電話で藤村が町に戻ってきたことを知った紀子は興奮してじっとしていられず、母・すみ江が止めるのも聞かずに家を飛び出した。魂のぬけたような生活をしていた紀子が自分を取り戻したことを妹の恵子は喜び、麗子が経営するスナックまで車で送って行った。恵子は地方検事の峰岸と婚約していたが、紀子のことが心配で結婚に踏み切れないでいた。 藤村と破談をした原因が自分にあると考えていた紀子は、彼と長い時間話し合った末に結婚することに決めた。だが父親から反対されることは目に見えていた。そこで紀子は藤村とともの帰宅すると、光政に反対ならばこの家を出て行くと言い放ったのだ。困った光政は、過去三年間に起こったことを全て水に流す変わりに、監視目的で藤村を銀行で働かせること、新居で暮らすことを結婚の条件にした。

結婚式当日、唐沢家にやってきたのは麗子だった。留守番をしていたボブは驚き、早く式場に行くようにと促したが、彼女は招待されていなかったのだ。7年前、萩に公演に来ていた新劇の役者と恋に落ちた麗子は駆け落ちし、光政から勘当された。結局1年ほどで捨てられ、今も独身を貫いていたのだった。ボブは麗子や恵子と関わるうちに、藤村や唐沢家にまつわる様々な事情を知ることになった。それからしばらく経ったある日、唐沢家を訪れたのは藤村の妹・智子だった。彼の両親は既に他界し血のつながりがあるものは智子しかいなかったが、何故か藤村は彼女を結婚式に呼ばなかったのだ。家族が増えたことを喜ぶ紀子と違い、藤村の表情は暗かった。 紀子たちが新婚旅行に行っている間に届いた荷物は、智子が使っている新居の二階の部屋に置かれたままになっていた。ボブと恵子が一階の奥の部屋へ荷物を運んでいたとき、紀子が誤って何冊かの本を落としてしまった。慌てて拾い上げようとした一冊の間から封をしていない封筒が覗いていたため、紀子は気になって中に入っていた三通の手紙を読んだ。恵子が荷物の置き場所を聞くために戻ってくると、紀子は青ざめて座っていた。

屋台的映画館

七人のおたく

  • posted at:2014-01-30
  • written by:砂月(すなつき)
しちにんのおたく
フジテレビ
配給:東映
製作年:1992年
公開日:1992年12月19日 併映「病は気から 病院へ行こう2」
監督:山田大樹
制作:村上光一
企画:堀口壽一 岡田裕介
プロデューサー:河井真也 茂庭喜徳
プロデューサー補:立川喜久
原作:一色伸幸
脚本:一色伸幸
音楽:山辺義大 﨑久保吉啓
主題歌:「JUST BEGUN」バブルガム・ブラザーズ
イメージソング:「恋した夜は」江口洋介
撮影:藤石修
照明:吉角荘介
美術:いしいいわお
録音:中村淳
編集:阿部浩英
俳優担当:前島良行
助監督:冨永憲治
制作担当:金澤清美 仲野俊隆
ラインプロデューサー:上原英和
制作協力:ライトヴィジョン
出演:南原清隆 内村光良 江口洋介 山口智子 益岡徹
アメリカンビスタ カラー 99分

人見知りで無線おたくの高校生・水上令子の休み時間の過ごし方は、学校に持ち込んだ受信機で無線を傍受することだった。ある日、「渋谷区松濤3-2-5」という住所を繰り返し伝える微弱な電波を傍受したことから、学校が終わるとその場所へ行ってみることにした。そこは廃墟になった家屋で、閉鎖された門をくぐると玄関から中に入ってみた。すると迷彩服に身を固めた男が突然現れ、驚いて逃げる彼女を追いかけてきたのだ。カモフラージュを外して正体を明かした男は、微かな電波をよくウォッチしたと令子を褒めた。そして真っ直ぐに見つめると「君が欲しい」と言った。それを聞いて戸惑う令子。相手が誤解したことに気付いた男は、そうじゃないと焦りながら否定した。

アイドルおたくの国城春夫は追っかけが度を越して自宅まで調べ上げるようになり、時には熱狂的なファンにその住所を売りつけて同人誌を制作するための資金を稼いでいた。使用する車はウォークスルーバンで、いつでもエアチェック出来る様にモニターや録画装置を装備し、張り込みが出来る様に生活環境を整え、尾行で巻かれないためにエンジンをチューンナップするなど自分で改造を行っていた。車に忍び込んでいた迷彩服の男は、驚く春夫に20万円あげようと言った。

実戦経験はないものの日々鍛錬を欠かさない格闘技おたくの近藤みのる。ヒーローおたくでもある彼が最も輝く場所はコミケ会場だった。アカレンジャーとして登場したみのるが敵を倒し、私のように強くなりたければこれを観よと「VIVA!格闘技」(税込み1980円)というビデオを差し出すが、1本も売れることはなかった。その様子を見ていた迷彩服の男は、みのるに近づくと「君の武道を正義に役立ててみる気はないか」と言った。

ゲームデザイン会社社長でMacおたくの田川孝は、大空を飛ぶ夢を実現するために本業そっちのけでフライトシミュレーターを作成し、3年目にしてようやく完成させた。そんな彼を時には温かく、時には冷たく見守っているのは、同じ会社に勤めている湯川りさだった。その夜、愛車のフェラーリでりさを自宅に送り届けた孝は、別れ際に昨日あったことを話した。それは秋葉原のジャンク屋で会った変な男から静岡の沖にある島へ行ってパソコンをいじって欲しいと声を掛けられたことだった。孝じゃなきゃ出来ないと泣きつかれたことで引き受けることにしたのだが、20万円という報酬額にりさは眉をひそめた。そんな彼女に孝は面白そうだろと笑い掛け、いい旅館を取ったから一緒に行かないか誘った。それを聞いて悪い気分がしないりさは旅行気分で参加することにした。

屋台的映画館

北陸代理戦争

  • posted at:2014-01-25
  • written by:砂月(すなつき)
ほくりくだいりせんそう
東映
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年2月26日 併映「ピラニア軍団 ダボシャツの天」
監督:深作欣二
企画:日下部五朗 橋本慶一 奈村協
脚本:高田宏治
撮影:中島徹
照明:増田悦章
録音:溝口正義
音楽:津島利章
編集:堀池幸三
美術:井川徳道
助監督:篠塚正秀
記録:田中美佐江
装置:温井弘司
装飾:山田久司
背景:西村三郎
方言指導:片山静治
協力:輪島市名舟町御陣乗太鼓保存会
擬斗:上野隆三
衣裳:岩逧保
美粧:伊藤実
結髪:白鳥里子
スチール:木村武司
演技事務:森村英次
進行主任:野口忠志
出演:松方弘樹 野川由美子 伊吹吾郎 高橋洋子 地井武男
シネマスコープ カラー 98分

昭和43年。福井に拠点を置く富安組の若頭・川田登は、組長の安浦富蔵と競艇場の権利を譲るという約束をしたにも関わらず一向に果たそうとしないことに業を煮やしていた。そこで寒風吹きすさぶ越前海岸の砂浜に安浦を頭だけ出した状態で埋め、ジープを走らせて強引に返事を引き出したのだった。怒りに打ち震える安浦だったが川田相手では到底勝目がないため、弟分の万谷にあいつを殺せと命じた。だが詳しい事情を聞かなければ話にならないと考えた万谷は、川田が三国町で居を構える和風バー・白波亭を訪ねた。そこは彼の恋人である仲井きくが切り盛りする店だった。川田から手渡された念書は競艇場に関わるゴタゴタで山田という男を斬った五年前に交わされたもので、出所後に権利を譲渡すると確かに書かれていた。同情する万谷は、お前の気持ちはわかるがヤクザは筋目を外してはいけないと諭した。日本最大の暴力団・大阪浅田組の斬り込み隊と言われる金井組が安浦の背後で動いていることを知っていた川田は、いつか自分が殺されると思っていた。万谷もそれに噛んでいるのでないかと冗談交じりにぶつけてみると、お前を必死にかばっているばかりか破門を止めているのもわしだという答えが返ってきた。それを聞いた川田は、「破門結構!」と叫んだ。万谷は杯を返すために福井へ行こうとする川田を押さえつけ、もう一度話し合ってお前の身を立つ様にすると約束した。

安浦が金井八郎組長に相談を持ちかけたことを知った万谷は、敦賀市にある金井組の支部に出向きこれは単なる「親子」ゲンカであることを説明してこの件から手を引いてもらおうとした。だが中部山陰方面から北陸にかけて勢力を伸ばし、いずれは北陸を支配下に入れようと狙っている金井組にとってこんなにうまい話はなかった。金井が殺し屋を50人呼び寄せて川田を抹殺しようとしているらしいという噂を聞いた万谷は手下とともに先回りして白波亭に行き、指をつめて詫びろと忠告した。しかし安浦がそんな甘い人間ではないことを知っている川田は、これが自分を騙まし討ちにする罠だと疑わなかった。仲間がぶっ放した猟銃の銃声を合図に万谷を人質に取ると外へ飛び出し、用意していた車に乗り込んで逃走した。安浦からの連絡で料亭に車で乗りつけた川田は金井と差しで話をつけようとした。いきり立つ川田に調停役を買って出たという金井は、お前を殺すのならこんな回りくどいやり方はしないと言った。そして落ち着いた声で、非はお前にあるのだから侘びを入れて手打ちにしたらどうだと提案した。すると川田は、これは身内の話だから手を引いて欲しいと頭を下げたのだ。この一件で一番頭にきていたのは、川田のことを親身になって考えていた万谷だった。翌日、万谷は川田を国道沿いのタイヨウという喫茶店に呼び出して襲撃した。その結果、川田は重傷を負い一週間の危篤状態が続いた末に死んだ。だが、きくの故郷・輪島に向かう葬儀社の車内には生きている川田の姿があった。

屋台的映画館

プロフィール

HN:
砂月(すなつき)
性別:
非公開
自己紹介:
ブログ主はインドア派大分トリニータサポーター

 

フリーエリア

 

P R