むしゅくもの
大映(京都撮影所)
配給:大映
製作年:1964年
公開日:1964年8月8日 併映「悪名太鼓」
監督:三隅研次
企画:財前定生
脚本:星川清司
音楽:池野成
撮影:牧浦地志
録音:大谷巌
照明:古谷賢次
美術:内藤昭
編集:菅沼完二
装置:山本佐一郎
擬斗:宮内昌平
音響効果:倉嶋暢
助監督:西沢鋭治
製作主任:今村喬
現像:東洋現像所
出演:市川雷蔵 滝瑛子 坪内ミキ子 藤巻潤 安部徹
シネマスコープ カラー 88分
父の形見である赤鞘のドスを脇に差した一本松は黒木弥一郎のせいで貧乏くじを引いた。かつて武士だった弥一郎は食わんがために賭場を荒らし、一本松はそれに巻き込まれたのだ。二人は禿山の頂上に追い詰められ、弥一郎は怖さに震えた。それを見た一本松は、こうなりゃ暴れる以外に道はねえなと覚悟を決めた。だが漁師の娘・はるのおかげで命拾いをした一本松たちは、借りた馬を返すために矢切村の伍平を捜して北陸路を旅した。やがて村境にたどり着いた二人は何もない海を見つめ続ける少年に気付いた。一本松が話し掛けると、少年は三州屋にさらわれた父親が帰ってくるのを待っているんだと言った。その少年の案内で伍平に馬を届けた一本松は、なおもついて来ようとする弥一郎に「大方、疫病神の生まれ変わりだろう。叩き斬るぞ」と脅して追い払った。一本松は寂れた宿場にやってきたが、一文無しではどうしようもなかった。その様子を見て近付いてきたお勢以は、人足問屋の三州屋波蔵に世話になるように言った。彼女は波蔵の妹だった。客人として迎えられた一本松の最初の仕事は人足狩りだった。三州屋は佐渡金山の人足を世話していたが、重労働ということもあり中々人が集まらなかった。そこで借金をしているものから連れて行こうとしたが、波蔵の動きを察知した住民たちが村から逃げ出そうとしたのだ。その中にいたはるの父・儀十の話で、波蔵が二年前から急に羽振りが良くなり金山にまで関わるようになったことを知った一本松は、はるへの恩義を優先して三州屋に盾突くことにした。波蔵はお勢以を船問屋・島屋十兵衛の妾として差し出したことで権力を手に入れたのだった。
宿場役人に追われる弥一郎と鉢合わせした一本松は「疫病神め、今度は何をやらかしたんだ?」と吐き捨てた。五年前に笹子峠で御用金護送役六人のうち五人が惨殺された。黒木半兵衛の死体が見つからなかったことから、半兵衛に御用金四千両略奪の嫌疑を掛けた、そしてその半兵衛の行方を知っているとみて、子息の弥一郎を捕らえようとしたのだった。父の無実を訴える弥一郎の姿を見た一本松の顔が怒りで歪んだ。一本松は弥一郎を取り囲む役人たちの中に飛び込むと混乱に乗じて彼を連れ出したのだった。一本松の父赤鞘の源七は渡世仲間の間でも売れての名だった。御用金が略奪された日と同じ日に行方がわからなくなり、半年後に笹子峠で骨が見つかった。男を磨くための旅に出て二年ぶりに故郷の信州熊平に戻った一本松はそのとき初めて父の死を知った。それからは形見の赤鞘のドスを身につけ旅から旅の長い日々を送ったのだった。弥一郎を連れ出した一本松は源七の仇を取るために半兵衛の居場所を聞き出そうとしたが、何処にいるかわからないの一点張りだった。もしそれが本当ならば父を捜し出して汚名を濯ぎたいと弥一郎が言ったため、一本松はひとまず剣を納めることにしたが、疑いが晴れたわけではなかった。三州屋波蔵が威勢づくようになったのは、二年程前に島屋十兵衛が来てからだった。それが半兵衛の仮の姿であれば説明がつくと一本松は考えていた。そこで彼は弥一郎と島屋へ行き、十兵衛の顔を確認することにした。
屋台的映画館
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